(この記事は、第73号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、大人の生徒さんのお話です。
大人の生徒さんは、お子様のように、バイエル、ブルグミュラー25の練習曲、ソナチネアルバム、ソナタアルバムといった、一定の教材を使って進めていくよりも、それぞれの生徒さんのご希望に合わせて、曲や教材を進めていくことの方が多くなります。
そのため、大人用のテクニックの教材を進めている方もいれば、いろいろな作曲家の曲を弾いている方、お気に入りの作曲家の曲を数曲続けて弾いている方など、本当に様々です。
先日、新しく大人の生徒さんがいらっしゃいました。全くの初心者ではなく、これまでにピアノのレッスン経験がある方です。
バイエルとブルグミュラー25の練習曲を終了し、新しい教材を進めていたのですが、ご家庭の事情で1年ほどレッスンをお休みされていたそうです。そして、忙しさも一段落して、再開されることになりましたが、それまで習っていた先生とレッスンの日時が合わなかったようで、私がレッスンを担当させていただく事になりました。
大人の生徒さんに限った事ではありませんが、色々なご事情で休会される生徒さんは少なくありません。入院や、職場の異動、ご家族の介護などです。お子様ですと、受験が一番多い要因となっています。
大人の生徒さんは、いつでも休会でき、そして、いつでも再開することができるのですが、実際には、再開される生徒さんは、それほど多くありません。これは、レッスンを担当している立場から見ますと、とても残念なことです。
そのため尚の事、再開される生徒さんは、とてもピアノがお好きなんだなぁと思い、とても嬉しくなります。
この大人の生徒さんは、「必ず、またレッスンに行く」と思っていた様で、再開後の初レッスンでは、以前使用していたテクニックの教材の続きの曲を練習してきていました。
色々とアドヴァイスをしながら、このようなお話もしました。
「この教材は、以前もお使いでしたから、そのまま続けられると良いかと思います。
でもこれはテクニックの教材ですよね。
それだけでも良いのですが、(題名の付いた)曲も、何か弾きませんか?
何か、弾いてみたい曲はありますか?」
そうしますと、おもむろに1つの楽譜を取り出されたのです。
「何ヶ月かかってもいいので、この曲を弾きたいんです。」
「そうですか、ステキな曲ですよね。私も大好きなんです。この曲はどこで知ったのですか?」
「実は、以前息子が発表会で弾いていまして・・・。家で練習しているのを聴いて、良い曲だなあと思いまして」
「そうだったんですか。長い曲ですので、時間はかかると思いますが、とても思い入れのある曲の様ですので、是非弾いてみましょう」
そうお話をして、レッスンを終了しました。
以前、お子様が練習していたことがきっかけで、憧れの曲になるというパターンは初めてでしたので驚きました。でも、それだけお子様が頻繁に練習をしていたという事ですし、息子さんのピアノの練習をいつも聴いていたという事になります。
素敵なご家庭の様子を垣間見た気がしました。
憧れの曲が弾けるように、私も精一杯お手伝いしたいと思っています。
(この記事は、第72号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、今年入られた小学5年生の生徒さん(Aさん)のお話です。
Aさんは、今年の2月に入会されました。お子様の場合、1年のうちで一番多く入会される時期は春ですので、タイミングとして珍しいケースだと思います。
しかも、「子供のためのピアノ教育」でも書いていますが、ピアノを始める年齢としては珍しく、小学5年生の生徒さんなのです。
Aさんのお母様は、フルタイムでお仕事をされていて、お仕事帰りの夜の時間帯に、お子様と一緒に体験レッスンに来られました。
小学5年生という年齢や、冬に体験レッスンにいらっしゃることは、これまでに全くなかった訳ではありません。しかし、多くの場合は、以前からピアノを習っていて、引っ越しなどでピアノ教室を変えるパターンなのです。
Aさんも同じような経緯なのかと思っていましたが、これまでにピアノを習ったことがなく、全くの初心者だったのです。
お話を伺いますと、自宅にキーボードがあり、光る順に鍵盤を弾いていくと、曲が演奏できる機能が付いているそうです。そのキーボードをAさんが弾いているのを見て、「それだけ好きなら、ピアノを習わせてみようか」と思われたのだそうです。
また、Aさんに直接聞いてみますと、クラスの友達がピアノを弾いているのを見て、「いいなぁ」と憧れを持っていたそうで、それもきっかけとなったようです。
小学5年生の初心者というのは、なかなか珍しいケースなので、使用する教材を選びに楽譜屋さんに足を運んだのですが、思った以上に時間がかかりました。
お子様の初心者用の楽譜は、小学校入学前後の年齢を対象としているので、結構可愛らしい絵が描かれている楽譜が多いのです。
悩んだ末に楽譜を決めたのですが、多感な年頃でもあり、「こんな子供っぽい楽譜は嫌だ」と言われてしまうのではないかと心配しましたが、それなりに気に入ってもらえて、ほっとしました。
ピアノの楽譜と共にワークも渡したのですが、両方ともどんどん進んでいて、まだ数カ月しか経っていないのに、すでにピアノの楽譜もワークを3冊づつ終わらせています。
特にワークの進み方がとても速いので、Aさんに聞いてみました。
「Aさんは、いつもたくさんワークをやってきてくれるでしょ? お家でどんなペースでやっているの? 時間のある時に、たくさんやっているのかな?」
「いえ、毎日2ページやるって決めて、やっています。それで、土曜日とか日曜日の学校のない時には、もっとやっています。」
「あらそう、毎日やっているのね。すごいわね~。毎日やるって大変でしょ、今日は疲れたからいいやってならないの?」
「はい、自分で毎日2ページやるって決めたし、ピアノも自分でやりたいって言って習っているので、そういうのはないです。」
文章で書くと少し硬い印象かも知れませんが、可愛らしい笑顔で、このように話していました。小学校低学年のお子様とは違って、また年齢以上に、とてもしっかりとした意思を持ってピアノを始めたことが、とてもよくわかった瞬間でした。
毎日コツコツと練習する事は、ピアノだけではなく、何かを習得する時には欠かせないものです。それを自分の意思で進められる人ほど、強いものはありません。
Aさんは、進みが速いだけではなく、分からないことは、どんどん質問をするので、レッスンもおのずと効率よく、内容の深いものになっていきます。
「ピアノが上手になりたい」という熱意も、とてもよく伝わってきますので、今後の成長が楽しみです。
お家では、まだキーボードで練習をしているそうですが、すでに楽器に対して物足りなさを感じていました。すぐに音が出てしまうので、弾いている感触があまりないところや、いつも一定の音量しか出せないので、音の強さが変えられないところが、とても不満のようです。こういう時こそ、生のピアノで練習をさせてあげたいなあと思っています。
(この記事は、第71号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、夏のピアノ発表会に向けた準備についてです。
毎年、3・4月は、夏の発表会に向けて一つの大きな山を迎えます。それは曲選びです。
レッスンの時には、生徒さんに、こんな風にお話をしています。
「今年の発表会、何を弾くのか考えてね。この曲を弾きたい! というのがあれば教えてほしいし、こんな感じの曲が弾きたいなぁ~って言うのでもいいよ。例えば、元気な曲がいいとか、去年は速い曲だったから、今年は少しゆったりしたロマンティックな曲がいいとかね。」
勿論、曲を紹介はしますが、なんとなくでも方向性が欲しいですし、たまにですが、「前に習っていたピアノの先生には、曲を指定されて、弾かされた」という事を言っていた生徒さんもいました。
曲を決めた状況が分かりませんので、おススメというニュアンスでお話をされたのかもしれませんが、少なくとも生徒さんは、そのように捉えられてしまったことになります。
そのような状況では、きっと生徒さん本人も、楽しく弾いていたとは思えませんし、観客の方にも、音楽の楽しさや良さが十分に伝わらないように思います。
そのため、小さな生徒さんでも、最終的には自分で決めたというスタンスを守ってほしいと思っています。
そのためにも、「この曲いいっ!」とか「この曲好き!」「この曲を弾きたいっ!」と言って貰える曲を紹介しなければなりませんので、実は、結構神経を使う事になります。
一人ひとりの生徒さんの持ち味や、技術、好みなどを把握しながら、3曲くらいは用意していきます。
この時期以外でも、日頃から楽譜屋さんで色々な楽譜を見て、面白そうな曲があると購入していますが、その時に「この曲は、○○ちゃんに合いそう」とか「この曲は、□□ちゃんが好きそう」と、パッと生徒さんの顔が思い浮かぶので、発表会の曲選びの時期には、それらの曲もご紹介するようにしています。
勘や、ひらめきの様に思うかもしれませんが、実際にはかなりの的中率なのです。
先日も数人の生徒さんに、こうして以前から見つけていた曲を、見本として弾いてみせたところ、弾き終わらないうちに「これいいっ!すっごく面白い」という反応で、「じゃあ、これにしましょう」と、あっと言う間に決まってしまった事もありました。
別の生徒さんは、同じように見本として弾いてみせたところ、「う~ん、どうしようかな… こっちの曲もいいし、あっちの曲もいいし…」と結構迷っていました。
3曲ご紹介したのですが、そのうち2曲が気に入った様なのです。それぞれの曲の良さや、難易度などをお話して、もう一回づつ弾いて、迷いに迷い、やっと選んでいました。
中学生くらいですと、自分で曲を探して、決めてくる生徒さんが殆どです。
ショパンが大好きという事で、ショパンの曲に決めた生徒さんや、お家の方が好きという曲を選んだ男子中学生の生徒さん、大好きなアイドルグループの曲を選んだ女子中学生など様々です。
このように一から自分で曲を決めた生徒さんの演奏は、とてもよく個性が出てくるので、昨年の発表会では、普段あまり音楽を聴かない方が、「それぞれ、みんなタイプが違って面白かった」と感想を話していた程です。
今年は、バッハ、ベートーヴェン、ショパンやリストなど、クラシックの有名な曲だけではなく、ジャニーズ事務所のアイドルグループの曲や、スタジオ・ジブリの映画音楽など、昨年よりもバラエティーに富んだ曲目が並びそうです。
レッスンを行う立場ではなく、聴衆の一人としても、今から発表会当日が楽しみです。
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