(この記事は、2014年4月14日発行の第145号 メールマガジンに掲載されたものです)

お子様の才能とスズキ・メソードについて考える その1からの続きとなります。

スズキ・メソードの創始者である鈴木鎮一さんが書かれた本『愛に生きる 才能は生まれつきではない』(講談社現代新書)を通して、「才能」について書いています。

この本では、「能力や素質は生まれつきではない」ことが明確に書かれています。

昔から、「生まれながらの素質」などと言ったりしますが、生まれて間もない赤ちゃんにテストをして、素質の有無を測ることはできません。5、6歳やそれ以上経ってから、その人の能力を見て、勝手に遺伝と結びつけて「生まれつき」と思ってしまっているだけのようです。

しかし、その5、6年の間に、その人は「育てられた」のです。つまり、「才能は育てるもの」ということです。

「すべての文化的能力は内部から遺伝によって発生するのではなく、外の環境条件に順応して、内部に育つのである。」と書かれています。もし、遺伝としての優劣があるとしたら、それは「環境に順応する能力の感度と速度」くらいなのだそうです。

つまり、学習するスピードや要領の良さには、先天的なものがあっても、学んで習得できるという点に違いはありません。そして、それ以上に重要なことは、その生まれた子供がおかれる「環境」にあるというのです。

人は、生まれて2、3年という極めて短い期間のうちに、環境から全てを学びとり、その環境に適応するために能力の中核が作られます。つまり、「環境にないものは育たない」ということです。

これも、コン・ヴィヴァーチェの「子供のためのピアノ教育」という解説書の中で紹介していますが、ソニーを創った井深大さんの著書に『幼稚園では遅すぎる―人生は三歳までにつくられる!』 (サンマーク出版)という本があります。

この「幼稚園では遅すぎる」理由は、3歳までの環境が、能力に与える影響が大きいためです。

『愛に生きる – 才能は生まれつきではない』の本の中で、3歳の子供に音楽の素質があるかどうか、鑑定をお願いされる話が出てきますが、子供を鑑定するよりも、その親を鑑定した方が、その子の素質のおよその見当がつくと書かれています。

前号で紹介した『天才! 成功する人々の法則』(マルコム・グラッドウェル著、勝間和代訳、講談社)でも、同様な話がでてきます。

大きな樫の木が、優れた「どんぐり」から育ったのではなく、肥沃な大地と、まわりの木々に日射しを遮られず、ウサギに若木の皮をかじられなかった「環境」によって大きくなったのだという話です。優れていたのは、木の種子ではなく、木を育てた森ということです。

あらためて、子供に係る者の責任ついて考えさせられますね。

お子様の才能とスズキ・メソードについて考える その3 に続きます)

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インターネットで見つけたクラシック音楽関連の動画をご紹介する「今月の動画」。
今回は、モーツァルト風にアレンジされたミッキーマウス・マーチです。

以前、ショパン風ミッキーマウス・マーチをご紹介しましたが、ショパン風のアレンジとは、また違った魅力です。

豪華な変奏曲としても、聴けるかもしれませんね。

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(この記事は、2014年3月31日発行の第144号 メールマガジンに掲載されたものです)

以前、「たのしい音楽小話」のコーナーで、スズキ・メソードのコンサートをご紹介したことがあります。ブログでも、写真付きで掲載していますので、ご参照ください。(独自のヴァイオリン教育で有名な鈴木メソードのコンサート)

このスズキ・メソードの創始者である鈴木鎮一さんが書かれた本に、『愛に生きる – 才能は生まれつきではない』(講談社現代新書)があります。

愛に生きる 才能は生まれつきではない (講談社現代新書 86)

鈴木 鎮一
講談社

昭和41年(1966年)に出版されたものですが、現在でも読み継がれる名著で、お子様の才能について書かれています。

お子様の才能や素質については、ピアノ教育でもよく聞かれますし、ピアノ・コンシェルジェのコーナーでも、時々関連したご質問をいただきます。

「才能」は、ご本人だけでなく、親御さんやピアノを教える先生にとっても、漠然としていて捉えどころが難しい問題なのではないでしょうか。

そこで、何回かに分けて、この鈴木鎮一さんの『愛に生きる – 才能は生まれつきではない』の本を通して、「才能」について考えてみたいと思います。

コン・ヴィヴァーチェでは、「子供のためのピアノ教育」という解説書を販売していますが、この解説書の中では、『天才! 成功する人々の法則』(マルコム・グラッドウェル著、勝間和代訳、講談社) という本も紹介しています。

『天才!成功する人々の法則』(Outliers: The Story of Success) は、アメリカで 2008年に出版され、日本では 2009年に出版されていますが、様々なデータや実験、事例を元に、天才が作られる過程が書かれています。

そして、驚くことに、この本の結論は、1966年に出版された鈴木鎮一さんの『愛に生きる – 才能は生まれつきではない』に書かれている内容とほぼ同じです。

つまり、豊富なデータを検証してみても、鈴木鎮一さんの「才能」についての考えや認識は、かなり正しいと言えるのではないでしょうか。

しかし、鈴木鎮一さんは、明治生まれ(1898年)の方で、戦前、戦中、そして戦後を生きた方です。1998年1月に99歳で他界されました。

スズキ・メソードのベースとなる「母語教育法」は、この本が出版されるよりもかなり前の昭和6年(1931年)くらいから作られ、そして実践されてきました。

第2次世界大戦よりも前に、日本では天才をつくる「才能教育」が実践されてきたことは、多くの方にとって驚きではないでしょうか。

しかし、この「才能教育」は、何か特殊なものではありません。「母語教育法」の「母語」とは「母国語」のことです。

学校の成績が悪く、生まれつき頭がよくないと言われる子供でも、日本語を話すことはできているという事実をヒントにしています。

複雑な言語を自由に話せるようになるまでには、かなりの教育が必要となりますが、誰でもそれを習得する能力は持っているということです。

「算数ができないのは頭が悪いからではない。教育の方法がまちがっているのだ。才能がないのではなくて、育てられなかったのだ。」と書かれています。

教育者や親御さんにとっては、ドキッとする内容かもしれません。

お子様の才能とスズキ・メソードについて考える その2 に続きます)

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