新しいクラシック


2025年5月20日


(この記事は、2025年5月5日に配信しました第421号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、新しいクラシックについてのお話です。

テレビ番組「題名のない音楽会」で、新世代のトップ奏者たちが、新たに生み出されているクラシックを紹介する企画をしていました。

ヴァイオリニストの辻彩奈さんとピアニストの阪田知樹さんが、ゲストとして登場していました。阪田さんは、2016年にフランツ・リスト国際ピアノコンクールで優勝されたピアニストです。作曲や編曲活動もされている影響で、現代のクラシック音楽にアンテナを張る様にしているとコメントされていました。辻さんは、2016年モントリオール国際音楽コンクールで優勝されたヴァイオリニストです。コンサートのアンコールでは、作曲家に曲を委嘱しているそうで、作曲家と一緒に音楽を作っていくのが演奏家の使命と考えているそうです。

番組では、最初に阪田さんが一押しする新しいクラシックを紹介していました。

フランシスコ・ミニョーネ作曲「ソナチネ第4番」です。ブラジルを代表する音楽家の一人で、オペラからピアノ曲まで幅広いジャンルで活躍をされたそうです。クラシックなのにブラジルの大衆音楽を取り入れているところが、一押しのポイントです。「ブラジルの人達の歌や踊りが目に浮かぶようなリズムが出てきたり、野生的なところも活気もある曲で、結構ポップス的で、明るくて聴いている方が楽しくなるような曲」だと阪田さんが解説をしていました。

「右手と左手が奏でる違うリズムの調和に注目」という解説の後に、阪田さんの演奏が始まりましたが、解説通り曲の冒頭部分から、左右でリズムが異なっていて、これはかなり難しそうな曲だと思いました。この番組では、いつも演奏と共に、テロップで演奏者自身の解説が紹介されるのですが、今回も「右手で刻むリズムが、そのまま左手に移ります」「先程のメロディーが、2オクターブ下がります。歌い手が、女性から男性に交代したようですね」等と解説されていました。

続いて、辻さんの一押しの新しいクラシックの紹介がありました。

アルフレッド・シュウニトケ作曲「古い様式による組曲よりパントマイム」です。生涯の目標を「芸術音楽と軽音楽の統一」と語り、60本以上の映画音楽を手掛けた作曲家なのだそうです。辻さん曰く、「古典の曲調の中に、不意打ちで斬新な音が出てきて、ピュアと不気味の共存が面白い」のだそうです。共演する阪田さんも、「古典的な雰囲気の中に、突然違和感のある響きを持ってくるのが、シュウニトケの得意のパターン」とコメントしていました。平穏な日常に突如事件が起こるような、ドッキリ感に注目なのだそうです。

演奏中の解説には、「一音だけ強調する指示が!いかにもシュウニトケらしいです」「突然、とても大きい音で不協和音が現れます!」とあり、いろいろなイメージを持って聴くことができる面白くて楽しい音楽でした。

阪田さん一押しのもう一つの曲は、ジェラルド・フィンジ作曲「エクローグ」です。フィンジは、音楽家として活動をしつつ園芸家としての顔も持つ、異色の作曲家としても知られています。阪田さんは、「ヒーリングミュージックのような、聴いていて癒される音楽の先駆けのような、心が浄化されるような美しい名曲です」と話していました。タイトルの『エクローグ』を『牧歌』と訳され、「田園生活をテーマにした古典的な対話形式の詩」「ピアノとストリングスが、まるで対話しているようです」と解説されていて、スケール感のある感動的な映画音楽のような作品でした。

司会の石丸さんも、「もし、宇宙に行くことができたら、宇宙で聴きたい曲!そのくらいの壮大さで、見晴らす限り何もないようなところでも、この曲が流れているだけで幸せになれる」と感想をお話しされていました。

辻さんの一押しの新しいクラシック2曲目は、スコット・ウィーラー作曲「アイソレーション・ラグ」です。声楽および劇音楽のジャンルで人気の高い作曲家で、現在はアメリカ・エマーソン大学で教鞭をとっています。都会的なジャズ感が、新しいのだそうです。メンデルスゾーンやブラームスのような古典曲のモチーフが、曲の中にちりばめられていて、ジャズっぽさのコントラストが新しいとのことです。メンデルスゾーン作曲のヴァイオリン協奏曲第1楽章や第3楽章、ブラームス作曲のヴァイオリン協奏曲第3楽章のフレーズが、曲の中にちらっと顔をのぞかせます。

実際に聞いてみますと、ちらっと、でも結構わかりやすく登場していて、お茶目でとてもユニークな感じがしました。

「新しいクラシック」というワード自体聞き慣れないもので、音楽のイメージも湧きにくい感じがしましたが、実際に聴いてみますと難しさはなく、どれも思ったよりも聴きやすい音楽だと思いました。また、とても幅広い音楽の世界を感じ、まだまだ、いろいろな可能性があるのではないかとも感じました。ゴールデンウィーク中に、新しいクラシックの音楽に、もっと足を踏み入れてみたいと思いました。

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