オーケストラの日


2025年4月21日


(この記事は、2025年4月7日に配信しました第419号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、オーケストラの日についてのお話です。

桜が満開を迎えていますが、今年は雨続きで、なかなかゆっくり楽しめない気もしています。それでも、生徒さん方は桜の話をされており、美しく咲く桜を楽しまれているようです。

少し前ですが、「3月31日はオーケストラの日」という記事を見かけました。そのような日が制定されている事すら知りませんでしたが、公益社団法人日本オーケストラ連盟が、2007年に制定したのだそうです。

なぜ、3月31日なのかという疑問が湧きますよね。2月22日が、「にゃんにゃんにゃん」で「猫の日」というのは、ちょっとかわいらしい感じで巷でわりと浸透しているようですが、オーケストラの日は、「み(3)み(3)にいい(1)日」という事で3月31日なのだそうです。オーケストラの音を耳で楽しんでほしいという願いが込められていると同時に、この日は春休み期間なので、親子でゆっくりと音楽を楽しめるタイミングという事もあるようです。

また、クラシック音楽はどうしても敷居が高いとか難しそうなイメージがあるので、もっと多くの人にオーケストラの魅力を伝えたいという事で、記念日を制定して、初心者やお子様でも気軽に楽しめるイベントを開催し、イメージを変えるべく活動をされているのだそうです。記事には、この記念日がきっかけでオーケストラを聴きに行って感動したなどのエピソードも紹介されていました。

大勢の演奏者が指揮者に合わせて音楽を奏でる緊張感や迫力は、想像以上のインパクトがありますし、普段楽器を弾いたりして音楽に関わっている人でも、心を動かされるのではないでしょうか。ピアノやオルガン、声楽以外の楽器専攻の音大生は、大抵オーケストラの授業がありますから、ピアノ科だった私は、いいなあと羨ましく思ったものです。

記事では、敷居が高いとか難しそうなクラシック音楽ですが、意外と身近なところで耳にしているという雑学ネタを紹介していました。私もレッスンの時、生徒さん方に「この曲は〇〇のCMで流れている曲」という話をすることがありますし、生徒さんから「今練習している曲は、お家でお風呂を沸かしたときに、『お風呂が沸きました』というお知らせの時に流れている」と聞くこともあります。

オーケストラの演奏者のエピソードも紹介されていました。ヴァイオリン奏者の演奏中に、弓の毛が次々と切れてステージの床に散乱するとか、指揮者が指揮棒を振っている最中に、勢い余って客席に飛んでしまい笑いが起こるという、冗談かと思えることが実際に起こるそうです。その他にも、演奏者が演奏中にくしゃみをこらえきれず、とうとう大きなくしゃみをしてしまい、会場じゅうに響き渡り、観客席からも笑い声が起きてしまったり、コントラバス奏者が、強く弾きすぎて弦が切れてしまい、その音が大きく響いてしまい、演奏者本人も驚いたということもあったのだそうです。

演奏中に弦が切れてしまったエピソードは、「タングルウッドの奇跡」が有名です。世界的に有名なヴァイオリニストの五嶋みどりさんが、14歳の時にアメリカで開催されたタングルウッド音楽祭で、レナード・バーンスタイン指揮、ボストン交響楽団との共演中に起きたハプニングで、演奏中にヴァイオリンの弦が切れてしまい、とっさの判断で第1ヴァイオリン奏者の楽器を借りて演奏を続行します。それだけでも凄いのですが、これで終わらず、なんとまたしてもヴァイオリンの弦が切れるハプニングが起こったのです。演奏中に弦が切れることは稀に起こるのですが、2度も切れてしまうなんて、本当に珍しくビックリ仰天ですね。

五嶋みどりさんは、またしても演奏を中断することなく、第2ヴァイオリン奏者の楽器を借りて、何事もなかったかのように最後まで素晴らしい演奏をされたそうです。ちなみに、この時演奏していた曲は、指揮者であるレナード・バーンスタインが作曲した、「ヴァイオリンと弦楽オーケストラのためのセレナード」で、演奏後、観客からは、たくさんの歓声と拍手が沸き起こり、バーンスタインは両手を広げてみどりさんを抱きしめて何度も涙をぬぐっていたそうです。このエピソードは、勇気ある出来事として、アメリカの教科書にも掲載されたそうです。YouTubeにも、当時の演奏がアップされていますので、興味のある方はご覧ください。凄いとしか言葉が浮かびません。

それから、記事の最後には、名曲にまつわるエピソードも紹介されていました。ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」は、誰もが知る出だしの「ソソソミー」が大変有名な曲ですが、このインパクトのある冒頭のフレーズは、「運命が扉をたたく音」を表現しています。単なる比喩ではなく、なんとベートーヴェン自身が、本当に自分の家のドアを叩く音をイメージして作曲されたのだそうです。

聴力を失い、精神的に追い詰められているベートーヴェンにとって、自宅のドアを叩く音が、迫りくる運命の圧迫感に聞こえたのかもしれません。このようなエピソードを知っていると、音楽の聴こえ方や楽しみ方も変わってくるかもしれませんね。モーツァルトやハイドンのエピソードも掲載されていて、なかなか楽しい記事でした。歴史上の天才作曲家の人間らしい面も知ることができて、ますます生の演奏が聴きたくなってきます。オーケストラの日は過ぎてしまいましたが、演奏を聴くきっかけになりそうです。

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(この記事は、2025年2月24日に配信しました第416号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、指揮者による音楽の違いについてのお話です。

長く音楽に携わていますと、ちょっとでも音楽が聞えてくると「何の曲だろう?」と気になり、耳を傾けて演奏に聞き入ってしまったり、演奏の仕方が気になってしまいます。生身の人間が演奏していないものについては、違和感を感じるので特に気になります。駅へ行きますと、電車の発車メロディーが流れますが、勝手に頭の中で音を聞き取り、楽譜に書き起こしてしまう事も多々あります。

また、アレンジされている曲が流れていると、「えっ、そこでここに飛んじゃう?」とか「ここ、カットしちゃうのね」など、いろいろ思う事もあります。そのため、よく受験生がBGMを流しながら勉強していますが、私の場合は、ついつい音楽の方に耳が吸い寄せられてしまうので、勉強が全然はかどりませんでした。

もっとしっかりと絶対音感が付いている方は、あらゆる音が、ドレミ…で聴こえるそうで、私以上に気が休まらないのではないかと思います。もちろん、音楽にフォーカスしないように、耳のスイッチを自分でオンオフすることができるようになってきますがね。

先日、『なぜ、クラシック音楽ファンは「誰が指揮するか」をやたら気にするのか』という記事を目にしたので、読んでみました。

ピアノ教室にいらしている生徒さん方は、音楽好きな方々なので、ご自宅でピアノの練習をするだけではなく、普段からいろいろと音楽との接点が多いように見受けられます。ピアノ以外の楽器やコーラスをされていたり、音楽系のテレビ番組を見ていたり、リサイタルやコンサートに足を運んだり、音楽系がテーマの映画を見たり本を読んだりされています。

その中で、交響楽団の会員になっている生徒さんは、この記事の通り、「この前行ったコンサートは、〇〇が指揮をしていて…」と、誰が指揮をするのかチェックして演奏会を選んでいるようです。

この記事の「交響曲は指揮者次第?」という項目では、クラシック音楽は、演奏家が異なると、全く違う様に聴こえることがままあると述べられています。これは、ピアノなど楽器を演奏している方は、直ぐにピンとくると思います。ピアノのレッスンにいらしている生徒さん方でも、新しく練習する曲を決めるときに、YouTube などでプロの演奏家の演奏を聴いて、「あ~素敵っ!これを弾いてみたい」と思い練習を始める方がいらっしゃいます。

練習を始めて最初の頃は、無我夢中で音を読んでピアノを弾きますが、ご自分が何の曲を弾いているのかよくわからないという方も少なくないようです。先日も、とても有名なピアノ曲を練習している生徒さんが、「まだまだ、音楽が聴けてこないです」とおっしゃっていました。ご自分が良いと思って選んだ曲を弾くわけですが、どうも同じ曲に聴こえない、まさに演奏者によって違ったように聴こえるという事ですね。

私自身も、先日生徒としてピアノのレッスンを受けた時に、先生が弾くフレーズが、つい先程自分が弾いたフレーズと全く異なっていて、先生の演奏の素晴らしさを感じつつ、自分の実力を思い知らされて複雑な思いをしました。

オーケストラも、指揮者の存在が大きく、同じオーケストラでも指揮者次第で素晴らしかったり、そうでなかったりと、ものすごい差が生まれると書かれています。記事の中で、極端な例として、ブルックナーの「交響曲第8番」について述べられていました。ブルックナーの傑作なのですが、指揮者によって70分くらいで演奏されることもあれば、100分かけて演奏されることもあるそうなのです。演奏時間が30分も異なると、だいぶ曲の印象が変わりそうですね。

筆者の音楽評論家 許光俊さんがご自身の経験を語っていて、最初に買ったレコードがカラヤン指揮のもので、子供ながらに違和感を感じたそうですが、その後で買ったベームが指揮をした音楽は圧倒的にしっくりきたそうです。後に、カラヤンの指揮が、表面的とか機械的という批判があることを知って、「そうだ」と膝を打ったことが書かれていました。

ショパンコンクールが開催されていた時、生徒さん方に、「YouTube の公式チャンネルで、コンクールの演奏が聴けるので、ご興味があれば聴いてみて下さいね」とお話したところ、早速聴いた生徒さんが、「同じ曲でも、弾く人によって、とても違っていて驚いた」と感想を話されていました。

私も、ちょうどショパンの曲を練習していたこともあり、いつにも増して興味津々で聴いたのですが、とにかく速いテンポで弾く方がとても多く、ゆっくりのテンポの曲はとってもゆっくり弾いていることも多々あり、本当にこんなテンポで弾くのかと驚いて、ピアノの先生に聞いたものです。その先生は、「コンクールだから、速く弾いた方がやはり華やかさが出るし、テクニックもアピールできるし、印象に残るんじゃない?また、他の曲との対比などを考えてテンポ設定をしているかも」と話していました。

その時に、私が、「みなさん、とにかく速く弾いていてびっくりしましたが、〇〇さんの演奏は、私が思っているテンポで弾いていて、そうそう、これこれ!という感じで、すごく納得したのですが…」とお話したところ、「そうね、とてもきれいに弾いていてリサイタルだと良いのかも知れないけれど、コンクールの場だと、ちょっと地味に聴こえちゃうのよね」とも話していて、なるほどコンクールという他者との比較の場だと、いつもとは異なる演奏になるのかもしれないと思ったものです。

同じ演奏者でも、年月を経て何回も同じ曲を録音していることがありますが、昔の解釈と今の解釈が異なることもあり、おのずと演奏も変わってくるのでしょう。

「決定版 交響曲の名曲・名演奏」という本の中で、この記事の筆者である許さんが書いていますが、「だれだれ指揮のどこそこ管弦楽団との演奏」と記してはいても、何年の録音とかは、あえて記していないそうです。どの録音かが書いてあると印象がどうなるか、自分で考えながら自分の耳で音楽を聴くことが大事なんだそうです。

近年は、演奏会に足を運べなくても、いろいろな方法で身近に音楽を聴くことができるようになっていますので、私も、指揮者にもっと注目をしながら、やはりブルックナーの交響曲第8番を聴き比べてみたいと思います。

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(この記事は、2024年12月22日に配信しました第412号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、日本音楽コンクールのお話です。

先日、日本音楽コンクールのドキュメンタリー番組が放送されたので見てみました。日本で最も歴史のあるクラシック音楽コンクールの舞台裏を2ヵ月密着取材した番組です。

日本音楽コンクールは、昭和7年(1932年)に作曲家の山田耕作らが、日本のクラシック音楽のレベル向上と有望な新人音楽家を発掘するために始められました。今では音楽家の登竜門になっていて、ピアニストの反田恭平さんやヴァイオリニストの諏訪内晶子さんなど、たくさんの演奏家を輩出している権威あるコンクールです。

第93回目の今年は、ピアノ、ヴァイオリン、声楽、トランペット、クラリネット、作曲の6部門が開催されました。番組では、激戦の予選会の映像が流れていました。ピアノ部門では、最も多い216人の応募があり、そのうち45人が2次予選に進みました。1次予選で、5分の4が敗退するとは思った以上に厳しいですね。

2次予選では、ベートーヴェンのソナタが課題曲ですが、コンクールの参加者たちは、以下のような感想を話していました。「難しさを、とても感じる。指先で扱うものすべてが出てしまう、露呈してしまう作曲家だと思う」「不屈の精神が、めらめらと燃え上がっていて、でも優しい面や悲しい面がたくさんある」「ものすごくベートーヴェンの人生そのものが詰まっている。言葉以上の力を持つ音楽だと思う。」

番組では、1次予選、2次予選、3次予選、そして本選と、インタビューや本番での様子も流していました。そして、本選へは、4人が進みました。

モーツァルトのピアノ協奏曲第23番を選んだ山崎さんは、「本選まで待ち遠しいというか、すごく長く感じます。オーケストラと演奏することを、結構楽しみにしています。正直言うと、3次予選まででいっぱいいっぱいだったので、本選に行けたらもうご褒美で、ボーナスステージという感じです」とインタビューに答えていました。3度目の出場で、ようやくたどり着いた本選への切符だそうで、「本番は楽しむしかないですね。オーケストラと演奏できる機会なんてないので」と、少しはにかみながら話していました。

番組では、山崎さんが通っている東京芸術大学のレッスン室での練習の映像と、本選会の映像が少し流れていましたが、同じ個所を弾いていましたので、本選会の会場の音の響きがよく伝わってきましたし、終始穏やかな表情で演奏をしていて、演奏後のインタビューでは、「やはり楽しかったです。オーケストラと一緒に演奏する時って、いつも意識していないことに意識を向けるので、難しかったけれど、やりがいもあって、すごい楽しかったです」と感想を話していました。

同じくモーツァルトの協奏曲を選んだ荒川さんは、山崎さんの先輩で、3度目の挑戦だそうです。「そもそも、そんなにピアノを好きでやっていたことは、1回もないので、本当に1回もないので、コンクールに応募してから辛かったです。何かわからないプレッシャーがあって、体調を崩したり、練習しても気分の波があるし、それでも練習をしなきゃならなかったので」と話していてビックリしました。

親の勧めでピアノを始めて、続けてきたそうですが、音楽に没頭することにどこか疑問があり普通科の高校へ進学したそうです。それでも、ピアノを辞めたら何も無いなあと思ったそうで、ピアノをやっていくしかないと大学は音大へ進学したそうです。結構後ろ向きな感じですが、それで芸大に入るのですから、相当な実力の持ち主なのだと思いました。

本選会で弾くモーツァルトの第24番の協奏曲について、「もともと音は良いと昔から言われていて、その自分の特色が出せる曲だと思っています」と話していましたが、番組で流していた練習風景を見ますと、芯のある本当に良い音が出ていて納得という気がしました。「もちろん、美しい音だけで音楽は成り立っているわけではないと思います」とも話していて、曲の途中にあるカデンツァ(ソリストが即興的に演奏してよいという箇所)で、荒川さんは、持ち前の音の良さを最大限に活かすような自作のカデンツァを用意していました。通常は、即興的な箇所とはいえ、カデンツァも楽譜がいろいろとあり選んで弾くことが多く、オリジナルをしかもコンクールで弾くのは、かなり珍しいと思います。

「本選は、自分のために弾くというよりは、家族や先生に対して感謝の思いを持ちながら演奏したい。すごい大変なので時間はかかるし、いろいろとご迷惑をかけていると思うから、恩返しのつもりで弾きたいです」と話していて、意外に好青年だなとちょっと感心してしまいました。演奏後、「とりあえず終わったんで良かったです。会場に響いている音を聴くのが好きなので、耳を傾けながら割と楽しみながら弾けたと思います」と感想を話していました。

ショパンのピアノ協奏曲第1番を選んだ南さんは、「私は全然天才的な才能とか特別な才能を持っているわけじゃないと思っているので、その分努力で、周りと比べたりしないで地道に頑張ってきました」と笑顔で話していました。3度目の挑戦だそうです。地道に頑張ってきたというだけあって、高校時代からレッスンでのアドバイスやいろいろな気づきをノートにびっしりと書き込んでいて、とても驚きました。その中には、「最後まで聴けていない」「枠の中に収まりすぎている」「音楽が小さく、全て内面での表現になってしまった」など、なかなか手厳しいコメントも書かれていました。

「音楽を作る上で、細かくいろいろな表現したいことがあったり、緻密に練り上げて研究してという作業は絶対に積みたくて、それを経て、最終的に考えていたことは全部開放して、大きな音楽として届けるという事に集中して、ピアノを弾きたいなあと思います」と、優しい笑顔で話していました。まさに、努力の人という感じですね。

本選で弾くショパンの協奏曲第1番について、「第2楽章が一番難しいけれど、やっぱりすごく好きで、ピュアで憧れとか懐かしさみたいなものもあるショパンの純粋な音楽が感じられて魅力を感じる」とも話していました。小さい頃は、気に入った音楽を耳で覚えて弾いたり、ピアノを身近に楽しんで弾いていたそうですが、高校から本格的にピアノを学び始めると、その楽しみを見失うこともあったそうです。「昔からずっと真面目で、その真面目さと素直さみたいなものが、少し壁になってしまって、先生の言ったことをその通りに弾くだけで、自分から出てくる音楽がなくなってしまって、真面目さが短所になってしまい、結構苦しい時期があった。けれど、そういう時に救ってくれたのも音楽だったので、やはり自分にとってなくてはならないものかなと思います」と話していました。

本選会の演奏では、その苦しい時期を経たからこそ滲み出てくる優しさみたいなものが現れていて、素敵な演奏だなあと思いました。演奏後には、「いろいろと溢れてしまったかなあというところもあったんですが、たくさんのお客様の前で弾くことができて、本当に幸せな時間でした」と溢れる笑顔で感想を話していました。

11年前に3位に入賞していて、今回再挑戦した竹田さんは、4歳でピアノを始めて、7歳でオーケストラとの初共演をした時には、一緒に音楽を作ってくれるというその喜びが忘れられなかったそうです。16歳の時に、全日本学生音楽コンクールで優勝したり、ポーランドに留学して研鑽を積んだり、ショパンコンクールに2回参加もしている方です。「コンクールが受けられなくなるような年齢になってきているので、迷ったけれど、いつまでも挑戦できるわけじゃないし、何年後かに思い返したときに、あの時やっぱり受けていればよかったなと思うんだったら、ちょっと怖いですけど飛び込んでみようと思って応募しました」と答えていました。また、「誰かに聴いてもらってこその音楽なので、コンクールに出ることによって、私の演奏をいろいろな方に聴いていただくというチャンスにもなる」という事もお話しされていて、常に前に進んでいくという姿勢に感心してしまいました。

本選への意気込みを聞かれた時には、「楽しいこと、悲しいこと、辛いことなど、いろいろな経験をピアノを通して行ってきたので、そういう経験というものを音に乗せられたらいいなあと思います」とインタビューに答えていました。本選会の舞台に笑顔で登場して、リストのピアノ協奏曲第2番を演奏していましたが、とても気迫のある大きなスケールの音楽で、テレビ越しではありますが、小柄な体格とのギャップにもとても驚きました。演奏後には客席からブラボーの掛け声もあり、演奏前と同じように笑顔でお辞儀をしていましたが、舞台袖に帰ってくると、感極まった表情で涙も流し、なかなかインタビューに答えられない様子でした。

本選会の審査結果の発表で、最初に岩谷賞(聴衆賞)が発表になり、竹田さんの名前が発表されると、「おぉ~~」という声があちこちから湧き上がっていました。他の部門の発表では、「きゃ~」という悲鳴にも似た嬉しさ全開の声が上がっていましたが、それとは違い、おそらくですが誰もが想像していた通りの納得の結果だったからだと思います。

審査結果は、1位に竹田さん、2位に荒川さん、3位に南さん、4位に山崎さんという発表でしたが、先程の「おぉ~~」という掛け声がバージョンアップした感じで、やはり結果にビックリではなく、思った通りの結果という意味での歓声なのではと思いました。

11年かけて、たどり着いた第1位という栄冠に、竹田さんはたくさんの拍手に涙と共にお辞儀で答えていました。「1位をいただいても、やっぱり変わりなく、音楽を聴いて下さる方々に、何か心に残せる演奏をこれからも表現できたらいいなあと思います」と、最後には笑顔で答えていました。

演奏だけではわからない、ここまでの道のりや、いろいろな心情を密着取材で見ることができて、とても興味深く見ることができました。これからの更なるご活躍を期待したいところです。

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