(この記事は、第78号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、お子様のピアノ発表会の様子です。
お子様を対象とした発表会が終わりました。発表会は毎年行っていますが、慣れるという事はなく、いつも本番が終わるまでそわそわと落ち着かない気分になります。
私自身がそのような心境ですので、ご家族の方は、もっとドキドキされていたと思います。今年も、発表会前に何人もの生徒さんのお母様から、
「うちの子、大丈夫でしょうか?」
「発表会に間に合うのでしょうか?(曲が仕上がるのでしょうか?)」
と質問を受けました。
当の本人は、意外と普段とあまり変わらない表情だったりするのですが。
今年は、発表会2ヶ月前に、思う様に進んでいない生徒さんが何人かいて結構ハラハラしていました。
さすがに1ヶ月前には頑張っていましたが、やはりこれまでの遅れを巻き返すところまではいかず、最後のレッスンの時も暗譜が未完成という状況でした。
連日の塾通いで、練習時間が思う様に取れない状況は十分に理解していましたが、ここまで来ますと「本番までは頑張ってね!」と激励するくらいしかできません。
そして、発表会当日となりました。
出番を控える楽屋では、生徒さんの年代によって雰囲気がとても違っていました。
幼稚園・保育園生や小学校低学年の生徒さん方は、見たこともない様な神妙な顔で楽屋の椅子に座っていました。
小学校高学年くらいになりますと、普段とあまり変わらない表情で現れる生徒さんも、ちらほら見受けられました。もちろん緊張している生徒さんもいます。
「うわ~、どうしよう。出だしの音なんだっけ? 忘れちゃった~」
と、ちょっと慌てている生徒さんもいました。
「今、楽譜を見て、もう一回覚えればいいのよ。でも、何カ月も練習していて、よく弾けていると思うから、いつもと同じように弾けば大丈夫よ」
と励ましていました。
私も経験があるのですが、出番前に「忘れそう」と思うと、本当に忘れてしまうものです。なるべく、そのように思わない様にして、そして言葉に出さないことが重要です。
中学・高校生くらいになりますと、割と普段と変わらない表情で現れますが、生徒さんによって出番前の過ごし方が違います。
「なんか~、暗譜、ぐしゃぐしゃになりそう」と、思わず心臓が止まりそうな事を言う生徒さんもいれば、普通に静かに椅子に座っている生徒さん、柔軟体操をして体をほぐしながら集中している生徒さんなど様々です。
私も、年代によって接し方を変えています。
幼稚園・保育園生や小学校低学年の生徒さん方には、
「ピアノの横の所に、黒いテープが張ってあるでしょ、わかる? あそこでお辞儀をしてね」
「まぁ、今日のドレス、とってもかわいらしいわ。お花が付いているのね。私もここにお花が付いているの。お揃いみたいね」
と、ステージマナーを話しつつ、リラックスできるようにしています。
小学校高学年くらいの生徒さん方には、
「ホールもピアノも、とっても響くから、上手に聴こえるわよ~」
「大丈夫、大丈夫。いつも通りに弾けばいいのよ」
「今回のピアノのペダルは、浅めだから、弾く前に必ず踏んで確かめてね」
「ピアノね、鍵盤が軽めだから、弾きやすいわよ」
と、トークで気持ちをほぐしたり、時には冗談を言って笑わせつつ、ピアノやぺダルについての情報をお話するようにしています。
中学・高校生の生徒さん方は、それぞれ独自の調整法があるので、必要最低限の事だけを話して、あえて一人にさせています。
そして全員に、アナウンス後「いってらっしゃい!」と背中をポンと押して送り出し、帰ってきた時には手でポーズを取りながら
「よかったわよー」「よく頑張ったわね、上出来だわ」
とねぎらいの言葉をかけています。
暗譜が心配だった生徒さんは、なんとか弾ききった生徒さんもいれば、最後のレッスンの時から、更に自分で仕上げてきた生徒さんもいて、みなさん無事に終えることが出来ました。
どのような状況でも、弾き終わって帰ってくる生徒さんの表情は柔らかく、笑みがこぼれている事も多いのです。
ただ、発表会が全て終わった後、帰りがけに色々とお話を聴きますと、いろいろな思いが交錯しています。
「何ででしょうね。普段は弾けている所が、本番になると弾けないというのは・・・」
と、生徒さんのご家族からも質問を受けました。
「そうですよね。でも、これが本番の難しいところで、その解決法があったら、私の方が聴きたいくらいです(笑)。ただ、今回は初めて使用するホールで、残響もたいぶ長く、音が聞こえるのに時差があるのも、少し影響しているかもしれませんね」
とお答えしました。
満足いかなかった生徒さんには、
「では、来年挽回しましょ。来年は、何の曲を弾く?」
と悔しさを次に繋げるように促しました。
生徒さんの感想は様々ですが、自分だけの力で最後まで弾ききった事は素晴らしいことです。
この経験は、これからのレッスンや来年の発表会にも繋がることですし、またピアノ以外のところでも役立つと思います。
まずは、生徒さん方の頑張りに拍手を送りたいです。
(この記事は、第77号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、「音楽とグルメの切っても切れない関係」の第2弾です。第1弾を読んでいない方は、以下のブログで読むことができます。
今回登場する作曲家は、モーツァルトです。
クラシック音楽史には、天才と呼ばれる作曲家が何人もいて、私達から見ますと全員が天才と思うのですが、その天才の中の天才と言われているのがモーツァルトです。
音楽を専門に勉強する人にとっては、必須の作曲家です。音楽大学の入試では出てきませんが、それは、既に勉強している事を前提にしているからではないかとさえ思えます。
私が音大に通っていた頃、珍しく学校内の試験曲にモーツァルトの作品が出された事がありました。
単に弾くだけであれば、テクニック的には大して難しくないのですが、シンプルな音楽だからこそ、解釈や素晴らしさを表現する事がとても難しかったことを今でも鮮明に覚えています。
また、卒業試験でモーツァルトの作品を弾こうかと先生に相談した友人は、すぐに却下されたそうです。それだけ、モーツァルトの音楽を素敵に演奏することが難しいという事なのです。
そんなモーツァルトは、ご存じの方も多いと思いますが、短い生涯の約3分の1を演奏旅行に費やしました。7歳の時から、海外で活動をしていたのです。
当時は飛行機や特急電車もありませんから、何カ月もかけて馬車で旅をしていたのです。
現在のドイツやイタリア、イギリスなどに出かけていたのですが、演奏旅行へ行く時には、主にお父さんが同行していました。今で言う、「ステージ・パパ」ですね。
単にモーツァルトを貴族の前で演奏させて、次に繋がる仕事を貰うという役目だけではなく、モーツァルトの健康面にもとても気を配っていました。
そのため、アイドルのあらゆる面をサポートする「マネージャー」と言った方がピッタリかもしれません。
たくさん演奏旅行をしていたので出費も多く、倹約に努めていたので、食生活はわりと質素だったようです。それでも、国王や貴族の館で演奏を披露していましたので、晩餐会にも呼ばれ、当時のとても豪華な食事も堪能していました。
庶民の味と、国王の味を知っていたという事ですね。
モーツァルトの父レオポルトは、薬膳料理の本をとても参考にしていて、色々な病気の症状が出た時に食事療法を取り入れていたそうです。
家庭では、スープをよく食べていたそうで、薬草を入れたものや牛肉を使ったものなどを食べていました。形こそ変化していると思いますが、牛肉のスープは現在でもオーストリアではよく食べられているそうです。
モーツァルトの好物は、カフェで食べるいちごのシャーベットやチョコレート、ローストビーフ、チキン、レバーの肉団子、ワインやシャンパン、ビールなどで、晩年借金に苦しんでいた時には、友人にビールをねだる手紙を書いていた程です。
また、当時高価だったココアやコーヒー、それまで飲んだことのなかった炭酸水や、パンチというインドの温かい飲み物、スイカ、キジ料理、牡蠣なども食していました。
海外でそれまで見たことも無かった料理を色々と食べていたのですから、なかなかのグルメかもしれません。
しかし、一人で食事をすることがとても苦手だったようで、必ず誰かを誘ったりしていたそうです。ちょっと意外な一面という気もします。
ロッシーニのように、モーツァルトが料理をテーマにした音楽を作曲していたら、どんな楽しい音楽になっていたのだろうと、想像すると楽しくなりますね。
(この記事は、第77号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、お子様のピアノ発表会の練習の様子です。
お子様のピアノ発表会まで、あと数週間となりました。
1カ月前くらいから、レッスンの度に「本番までレッスンは、あと○回だからね」とか「本番まで、あと○○日よ」とお話をしています。
1カ月を切りますと、どんなにマイペースな生徒さんでもさすがに焦ってくるようで、「うわ~、ヤバイっ!」とか「え~っ、もうそんなに迫っているの」など、いろいろな反応が返ってきます。
よく弾ける生徒さんですら、ちょっと心配そうな顔をしてレッスンに来るくらいです。
また、口癖だと思いますが、生徒さんによっては「もう無理」などと言うこともあります。
しかし、そんな時には、「大丈夫。今日が本番じゃないから。まだ○○日もあるんだから。○○ちゃんは頑張っているから、気を付けて練習をすれば、ちゃんと本番に間に合うからね。」と励ましています。
毎年発表会を開催していますが、出演する生徒さん全員が揃って完璧に用意が出来ているところまでは、なかなか行かないものです。
今年も、少々心配な生徒さんがいました。お引越しの関係で、一時はレッスンをこのまま継続できるかどうかも分からず、そのため発表会参加の有無も決まらず、曲の準備が少し遅れてしまったのです。
結果的に、電車を乗り継いでピアノ教室に通い続けてくれることになり、こちらとしては、とても嬉しく、また一層の責任を感じていますが、発表会の準備が心配でした。
今回発表会で弾く曲は、これまで弾いてきた曲と違って、伴奏のパターンが数種類出てきます。「ドミソ」「ドミソ」と3回弾いて、次が「ソシレ」などの、よく目にする伴奏ではないのです。
和音の種類も、いつにも増して多く、譜読みの段階で早くも進み方がいま一つでした。
それでも、1カ月前には、両手でなんとか弾けるところまで進んできたのです。
「後は、暗譜さえ出来れば本番に間に合う」と思ったのですが、どのくらいの時間をかければ暗譜が出来るか、なかなか予測は難しいものです。
「○○ちゃん、とってもよく頑張っているわね。特に、ここ数週間は、劇的に伸びているわよ。あとは暗譜だけ頑張ろうね」と、先週お話をしました。
1週間後のレッスンでは、始めに1回通しで弾いてもらいましたが、だいぶ曲にも慣れて音楽の流れが自然になってきていました。
今回のレッスンは、暗譜の練習がテーマなので、お家で暗譜の練習をしてみたのか聞いてみました。すると、「ちょっと…」という反応です。
「では、とりあえず、今どのくらい暗譜が出来ているのか試しに弾いてみましょう。始めから弾いてみてね」とお話して、弾いて貰いますと…
最後まで暗譜で弾けたのです。
「ええ~~~っ!? ○○ちゃん、スゴイじゃない!! 全部暗譜で弾けているわよ。暗譜、バッチリよ。よく1週間で全部覚えたわね。スゴイわぁ」
「暗譜の練習が、まだ出来ていない」と思っていたので、本当に想定外で驚きました。
あんなに苦戦していたのに、あっという間に暗譜が出来ているのですから、お子様の頭の柔らかさには脱帽ですし、大きな可能性を感じずにはいられません。
本当に最後のまとめの時期なので、体調に注意しながら、本番で素晴らしい演奏が出来るように頑張ってほしいですし、励ましていきたいと思っています。
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