(この記事は、第290号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、年始のピアノ教室の様子です。
新しい年が始まり、早いもので、もう1ヵ月が過ぎました。
年明けのレッスンは、会社や学校の仕事始めや始業式と同じくらいの日に開始しました。
小さい生徒さん方は、年末のクリスマスからお正月とイベント続きで、とても楽しく過ごしたようです。
12月下旬のレッスンの時に、「お正月、ホテルに泊まりに行くんだ~」と楽しそうに話していた生徒さんもいました。ちょうどクリスマスの時期でしたが、サンタさんからの贈り物より嬉しいのかな?とさえ思えました。
「あら~、凄いわね。〇〇ちゃんのお家は、豪華なお正月になりそうね~」と返事をしますと、さらに笑みが浮かんでいました。
年が明けて初めてのレッスンの時に、この生徒さんは「ホテルに泊まりに行ったんだ」と話していました。やはり相当嬉しかったようです。
70代の生徒さんは、年末年始に2人のお子様のご家族が泊まりに来られて、総勢10数人が集まったそうです。
「お食事の準備や、泊まる準備など色々と大変ですね」とお話しを伺いつつ、「賑やかなお正月だったんですね」と話しますと、「まあ、そうなんですけれどね~」と、嬉しさや楽しさを感じつつも、ややお疲れ気味な様子でお答えになっていました。
80代の生徒さんになりますと、お孫さんが大学生くらいになっているようで、泊まりに来るとかはなく、普段と変わらずゆっくりとお正月を迎えたようです。
定年を機にピアノを始めた生徒さんは、お仲間との新年会でピアノを披露したそうです。たまたま会場にピアノが置いてあったそうで、ピアノを習い始めた話をしたら、その場の流れで弾くことになったのだそうです。
レッスンで仕上がった曲を弾いたのですが、かなり緊張してしまい、あっちこっち間違えて終わったと話していました。頭が真っ白になったそうです。「よく、みなさんが体験されることなんですよね」と話したのですが、その反応は私の予想と異なり、だからこそ本番で弾くことの大切さを感じたのだそうです。「今年は、発表会にも参加します」と、大変前向きなお話をされていました。
もう、こりごりだと思うのではなく、本番に向けてもっと練習に励むとか、本番を数多く体験する事の必要性を感じているのですから、凄いなあとすっかり感心してしまいました。
昨年受験生だった生徒さんは、今年は打って変わって、ゆっくりとお正月を過ごせたそうです。部活が少しあったそうですが、受験勉強に追われていた日々と比べますと、相当気分的には楽だったようです。
大学生の生徒さんは、就職活動と卒論に追われているさなかに、インフルエンザになってしまい、なかなか大変だったようです。しかし、見事に就職先が決まり、卒論もだいぶメドが立ったようで、一安心しているようでした。
予定よりも早く3月から勤め先の研修が始まるそうで、今の場所からは遠くて通えないので、慌てて引っ越し先を探して契約を済ませたそうです。卒業旅行の計画も立てているようですが、ヨーロッパなどの海外ではなく、日本のしかも割と近場の温泉旅館に泊まって、陶芸体験などを計画しているそうです。
昨年秋からずっと同じ曲を練習している生徒さんは、もうだいぶ前から弾けているのですが「なんか違うんですよね…」と、いつも曇った表情をされていました。
年明けのレッスンでも相変わらずの表情でしたが、先日、曲の出だしのアウフタクトの部分を、正確な速さで弾くようにお話をして、少し部分練習をしたところ、メロディーがすっきりと流れはじめました。「今は、とても気持ちよく弾けました」と少し笑顔で話されていましたので、いよいよこの曲の仕上げが近づいてきたのかなと思っています。
昨年入会したばかり幼稚園生の生徒さんは、今年初めて参加する発表会を、楽しみにしています。
「まだ、何も決まっていないけど、いつも年齢順に弾くようにしているから、1番に弾くかもしれないね。でも、〇〇ちゃんよりも、もっと小さい人がいたら、2番とかになるかもね」と話しますと、実感が湧き始めたようで、「そうなんだ」と嬉しそうに返事をしていました。
お母様のご実家からピアノを搬入したそうで、これからは、電子ピアノではなく本物のピアノで練習できることも、とても楽しみな様子でした。
別の幼稚園生の生徒さんは、右手と左手が交互にリズムを刻むような、ややこしい曲に挑戦中です。だいぶ流れるようになってきましたので、もう一息で仕上がるかなという状況で、レッスンの終わりに「難しい2段目の方が、ずいぶん上手に弾いていたよね」と話しますと、「そうなんだよね。こっちは難しいから、家で練習していたから簡単な方が弾けなくなっちゃった」と答えていました。
これは、年代問わず、わりとよくある話です。難しいところを練習していますと、弾ける部分がおろそかになりがちです。弾ける部分も油断せずに、全体のバランスを取って練習することが重要です。
来週には、新しい生徒さんのレッスンが始まります。来月には、出産を終えて復帰される生徒さんもいらっしゃる予定です。今年も、楽しくレッスンをしていきたいと思います。
(この記事は、第289号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、ヤマハのピアノ工場見学のお話です。
年末年始の休みの間に、ヤマハのピアノ工場を見学するテレビ番組が放送されました。この工場は、私も以前訪れたことがあり、懐かしい気持ちで見てみました。(以前訪れたときの記事)
番組では、「ピアノ工場を楽しむ休日」と題して、司会者とギタリストの村治佳織さん、芸人の古坂大魔王さん(ピコ太郎)、ピアニストの藤田真央さんが、グランドピアノができるまでの工程を、工場長の案内で見学していました。
ヤマハのピアノ工場は、東京ドーム約5個分の敷地面積があり、約600人の従業員がピアノ制作に関わっています。
司会者が藤田さんに、「こちらのピアノ工場に、いらしたことはありますか?」と聞かれ、「同じ掛川市にある…、言っていいのかわからないのですが、河合楽器さんの方には…」と遠慮がちに答えると、他のゲスト2人が大爆笑していました。
工場に入って、まず最初に見学したのは、ピアノのカットモデル(断面模型)です。音の出る仕組みが、見えるようになっています。このようなものは何回も見ていますが、何度見ても面白い構造で、よく考えて作られていると感心してしまいます。
よく、小さいお子様がレッスンでグランドピアノを弾くと、中からハンマーがピコピコ飛び出て動く様子を興味深そうに見ているのですが、そのようなタイミングで、このカットモデルを見たら、もっともっとピアノに興味を持ち、楽しくピアノを弾くのではないのかと思います。
ピアノは、この音の出る仕組みを、88鍵全てに用意し、ピアノ1台で、約8000点の部品が使われているので、ピアノの制作は、時間と手間が大変かかる作業になります。
このカットモデルを使用して、藤田さんが、ドビュッシーの「小さな黒人」を弾いたのですが、少し弾くと鍵盤が足りなくなってしまい、また大爆笑となりましたが、古坂大魔王さんが、この演奏の様子を「ポップコーンが出来上がっている感じ」と話していて、とてもピッタリな表現だと感心してしまいました。
グランドピアノは複雑な形状をしているので、そのための部品を作るのも難しく、自社でその工作機械から作っているのだそうです。機械の技術と職人の技術、その両方を融合してピアノを制作しているという事ですね。
ボディー作りの工程では、工場中に木材の香りがしています。薄くて長い板を、機械で何枚も貼り合わせ、ミルフィーユのような層にして強度を高めます。この板を、グランドピアノの外枠のカーブしている部分に使用しますが、職人2人が機械を使用してピアノの型に巻き付けていき、あの独特のカーブを作っていきます。
そのままの形で放置して木をなじませ、外側の板(側板)が完成しますが、映像では、工場内にずらっと、この側板が並んでいて、なかなか圧巻の光景でした。
ちなみに、グランドピアノのあの独特のカーブは、ピアノの高音部の弦が短いためにできた形で、ゲストの人も、「初めて、ピアノのあの形の理由を知った」と感心していました。
一旦工場の建物の外に出ると、地面にはレールが敷かれていて、踏切まであります。工場の建物から建物へピアノを無人で移動させている様子が映し出されていました。生で見たら面白そうですね。
張弦の工程では、職人さんが1本ずつ手作業で、230本全ての弦を張っていきます。冬場でも、扇風機をつけて作業するほどの重労働になります。重労働で汗をかくと、ピアノの弦がサビてしまいかねないので、1人1台の扇風機がつけられているのだそうです。
この作業をしている職人さんと、藤田さんは同い年で、「同期じゃないですかー」と声をかけていました。作る人と弾く人、立場は違っても同じピアノに関わていることが嬉しいのでしょう。
藤田さんが、「どの位置の弦が好きですか」と質問していて、「中音域が好みで、弦の長さなど、ちょうど気持ちよく張れるから」と職人さんが答えていました。2人のやり取りを聞いていたゲストが、「マニアックだなあ。そんな意見、聞いたことないなあ」と面白そうに話していて、私も思わず笑ってしまいました。
鍵盤の調整の工程では、鍵盤の動きがスムーズになるように作業をしているところでした。
鍵盤は、分厚い大きな一枚板を、短冊状に切って作られていますが、鍵盤を固定する穴の大きさを、ほんの少し広げると鍵盤の動きがスムーズになります。しかし、広げ過ぎるとガタガタとした動きになってしまいます。木によって、硬さや木目が異なるので、機械で同じように開けた穴でも、誤差が生まれてしまうので、職人が手の感覚で調整するのだそうです。正に、匠の技ですね。
職人さんが感じる手の感覚というのは、そっと鍵盤を上げたときに柔らかく、下したときにすっと入るような感覚だそうで、演奏する人が弾きやすいように、柔らかめに調整しているそうです。
音色を作る工程では、整音という音色や響きのバランスを調整します。とても高いスキルが必要な作業で、1人前になるために10年以上かかるそうです。
フェルトを張ったばかりのハンマーは、硬いので、針でつついてほぐし、柔らかくして、豊かな音になるようにします。職人さんが、耳で聴いた音や鍵盤から指に伝わる感覚を頼りに、出荷できるレベルの音なのかをチェックしていました。
整音前と整音後の音を聴き比べるコーナーも放送されていましたが、聴き比べてみますと、やはり整音後の方が角が取れて、金属的な音色ではなく、弾力性のようなものも感じました。
最後に、出来立てのピアノを使って、藤田さんが、シューベルト=リスト作曲の「ウィーンの夜会」を演奏して番組は終わりました。
このようにピアノができる工程を見ますと、多くの職人さんが丹精込めてピアノを作っていることを再認識させられます。これからも、もっともっとピアノを大切に使おうと、改めて思いました。
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