(この記事は、第161号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、音楽演奏とご家族の理解についてです。
ピアノのレッスンをしていて、残念に思う事の一つが生徒さんの退会です。
かなり長くピアノの講師をしていますが、いつも残念で悲しくなります。
このことは、ピアノの先生が集まると必ず話題の一つに挙がるので、みんなそのように感じていると思います。
ピアノを辞めるタイミングとして、お子様の生徒さんで一番多いのが受験です。
高校受験も多いのですが、最近では中学受験も珍しくなく、クラスの半分は中学受験すると答えた小学生の生徒さんもいました。
そうなると、小学校4年生くらいから塾に行き始め、小学校6年生で、「受験をするので、ピアノは辞めます・・・」となってしまう訳です。
塾によっては、「小学校4年生では遅いです。小学校3年生からスタートしないと」と話しているところもあるようです。
大人の生徒さんの場合、ご本人やご家族の体調不良が一番多く挙げられます。
特に高齢となりますと、当初の予定よりも長い入院となってしまったり、リハビリが思うように進まず時間がかかることもあります。
家族の体調が悪く、入退院を繰り返していることがきっかけとなり、ピアノを辞めてしまった方もおられました。
入院中はまだしも、退院後は連日病院通いで、つきっきりに近い状態となり、そうなると介護する方もくたくたに疲れてしまい、レッスンどころか自宅での練習も難しいようです。
「実は、今度入院することになりまして・・・」、「主人の体調が悪く・・・」などのお話を前々から聞いていて、その結果としてピアノを辞めてしまう事は、まだ理由が明白なので納得もできます。
しかし、そのような前触れもなく、突如辞めてしまわれる事が先日ありました。
思い当たる事が全く無かったので、本当にビックリしたのですが、少しお話を伺いますと見えてきました。
どうも、ご家族の理解が得られなかったようなのです。
音を出して楽しむことがピアノであり音楽なのですが、曲が完成するまでには、同じ所を何回も練習したり、それでもあまり進歩しなかったりと色々あるものです。
弾いている本人も辛い時期なのですが、それが聞こえてくるご家族も辛いという事なのでしょう。
大人の方ですと、お子様のように、ちょっと弾いたらコツが掴めたとか弾けてしまったということは少なく、習得に時間がかかることの方が多いと思います。
そのため、しばらくご家族との間でギクシャクしていたようです。
消音ピアノや電子ピアノなどを提案するタイミングもないまま、お別れになってしまったことは、とっても残念に思いました。
このようにご家族の理解が得られず、辞められた生徒さんもいれば、その一方で、ご家族が亡くなった悲しみを、ピアノを弾くことで乗り越えて行かれた生徒さんもいらっしゃいます。
音楽は、一人でも複数人でも楽しめ、色々な楽しみ方が出来て、とても心が潤い、癒され、活力が沸く素晴らしいものです。
しかし、生活を共にする家族の理解を得ながら音楽を楽しめるようなアイデアも必要なのだと、考えさせられました。
(この記事は、第160号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、先日行われた大人の生徒さんの発表会のお話です。
毎年このくらいの時期に行っていますが、今回は初の試みとして、お子様の発表会で使用するような大きなホールで開催しました。
これまでは小さめのサロンのような会場で開催していて、アットホームで比較的気軽に参加できる雰囲気がよかったのですが、コンサート専用の会場ではないため、どうしても音響的には少し残念な面がありました。
そこで、音響効果の高いコンサートホールで、スタインウェイの大きなグランドピアノを弾く体験を大人の方にしていただくのもよいのではと思い、今回は会場を替えてみました。
お子様の発表会の場合、出演される生徒さん1人に付き、ご両親や兄弟、祖父母の方が応援にいらっしゃるので、それなりに多くのお客さんの前で弾く雰囲気になります。
しかし、大人の発表会の場合、ご家族が応援に来る事も少なく、普段のレッスンのように、お一人でいらっしゃることも珍しくありません。そのため、場合によっては、空席が気になる事もあるのです。
今回は、大きなホールなので、空席だらけという印象になってしまったらどうしようと、少し心配をしていましたが、実際には思ったよりも空席が気にならず安堵しました。
今回参加されない生徒さんにも、事前にプログラムをお渡ししていたので、その方々もいらしてくださったようです。
演奏が始まり、出番直前の生徒さんが、舞台袖に続々と集まってきました。
お子様の発表会では、話すことも無く、比較的シーンとしてピリピリとした空気が流れるのですが、今回は神妙なお顔をされつつも、「いや~、もう緊張しちゃって・・・」と、生徒さん同士でお話をされていました。
「楽譜はどうされますか? 見て弾きますか?」という問いかけに、「あら、どうしたらいいでしょう? どうしたらいいと思います?」というお返事をしつつ、「でもね、置いていても、あまり見ていないのよね~。あっ、でも分からなくなっちゃった時には、いるかしら?」と逆に質問される場面もありました。
「そうですね、もしもの時の保険みたいに、ちょっと置いておくだけで少し安心という事もあるかもしれないですね」とお答えをして、その生徒さんは、お守り代わりのように、一応楽譜を見て弾くことになりました。
また、「短い曲なのに、緊張しちゃって・・・」とお話されている生徒さんに、「弾いて物足りなかったら、2回くらい弾いてもいいですよ~」とお話をして、「この曲だったら、何回もこの部分を弾けるから、エンドレスになっちゃうかも!?」と、笑いが出る場面もありました。
発表会は、予定よりも少し時間がかかりましたが、無事に終了しました。
状況をあまりよく理解できないうちに、勢いで本番を終えることも少なくないお子様と異なり、大人の生徒さんは、十分に状況を把握されています。
任意の参加なので、緊張して失敗するかもしれないから参加しないという選択肢もあります。
それでも、ご自分の意思で参加を決断し、練習を積んで本番を向えたこと自体がすごいことだと思います。
生徒さんの中には、大人になってからピアノをはじめた方や、70代の方、今回が初めての発表会という方もいらっしゃいました。
色々な状況の中で、無事に本番を終えられて、ほっとされていました。
次回は、参加者が増えて、さらに盛り上がることを期待しています。
(この記事は、第159号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、大人の生徒さんの発表会の練習風景です。
毎年、夏はお子様の発表会があり、秋には大人の方の発表会があります。
これまでは、11月の始めに行っていたのですが、今回は下旬に開催されることになり、本番まであと2週間となりました。
レッスンでは、本番に向けて、より実践的な練習を取り入れるようにしています。
大人の生徒さんによく見られる傾向として、間違えたり、間違えそうになった時に、止まってしまう方が多いのです。
新しい曲の練習を始めたばかりの頃は、音や指番号、リズムなどを正確に把握する事が一番大切です。そのため、間違えたり迷ったりしたら、演奏を中断して、楽譜を見て確認する必要があります。
しかし、この状態をずっと続けていますと、無意識でその動作を行ってしまうことがあります。ちょっとしたことでも止まってしまうことがクセになってしまうのです。
お子様と違って、大人の生徒さんは、少し違っただけでも気になる方が多く、「間違えても気にしないで、どんどん先を弾きましょう」とお話しても、頭では理解できても実際に行うことは難しいものです。
先日のレッスンでは、「まずは、最初に一曲通して弾きましょう。何があっても本番のように、頑張って最後まで弾いて下さい」とお話をしますと、「なんだか間違えそう」とおっしゃりつつ弾き始めました。
その結果はいかに。
始めの数小節で、早くもピタッと止まってしまいました。
その後、もう一度始めから弾き始め、今度は最後まで弾く事が出来ました。
この生徒さんは、これまで何回も発表会に出ているのですが、それでも、今回弾く曲は少し独特のリズムなので、最初からリズムに乗って弾く事が、少し難しかったようです。
しかし、1回弾くと調子が掴めた様で、その後はすらすらと問題なく弾いていました。
ピアノの発表会では、リハーサルがなかったり、リハーサルがあったとしても短時間だったり、本番まで時間が空いてしまう事がよくあります。
そのため、何回か弾いて、いつもの調子を掴んでから本番を迎えるという事ができません。
1回目で、すべての力を出し切る演奏をしなければならないのです。
そのためには、指の練習などをしないで、いきなり一曲通して弾くような、本番さながらの経験を数多く積んでおく事が、とても大切になってきます。
個人差が大きいので、かなり早い段階で出来る方もいれば、なかなか時間がかかる方もおられます。しかし、諦めずに練習を続けることで、どなたでも徐々にコツを掴む事が出来るようになります。
本番まであと2週間、でも、「まだ2週間」とも言えます。
貴重な時間を大切に、より効果的な練習を行って、本番に備えていただければと思っています。
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