(この記事は、第190号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、お子様のコンクールのお話しです。
先日、お子様のコンクールの予選があり、生徒さんが初参加されました。今回は未就学児のキッズの部から、大学生の部まで行われましたが、小学生の部での参加です。
前日の天気予報では、悪天候となっていましたが、当日は予報ほど悪くなく、ひと安心です。
生徒さんは、当日朝から教室に来て、最後の練習をされました。
コンクールの行われる会場まで、車で2時間以上かかりますが、直前に少しでも広い場所で、グランドピアノで練習をするのは、効果があると思います。
本番会場の舞台袖は、小さいお子様の部で足台を使う方ばかりでしたので、お母様が付き添いをされていました。ピアノの発表会では、足台のセットはスタッフが行うので、だいぶ異なる雰囲気です。
生徒さんと一緒に舞台に上がり、足台のセットをして、私は戻り、生徒さんの演奏が始まりました。
先程まで、「もう弾くの?」という表情で不安そうだった様子とは異なり、なかなか調子の良い出だしです。
どちらかというと手が小さいので、これまでの練習では、音がオクターブ飛ぶ所で、たまに音を外してしまったり、正しく弾く事に集中しすぎて音楽に表情を付ける事が後回しになることもありましたが、本番では上手に出来ていて、全体的にまずまずの演奏が出来ていました。
途中で、タッチが弱すぎて音が鳴らないミスがあったのですが、控室に戻ってから生徒さんにその部分を聞いてみました。
「○○ちゃん、ここの部分で、ちょっと音が鳴らなかったよね? 気が付いた?」
「うん」
「ここで、弾き直そうと思わなかった?」
「思ったんだけど、辞めといた」
色々な考えがあると思いますが、音楽は流れが大切なので、音が鳴らなかったからといって弾き直してしまうと、付け足したようになり、音楽の流れが止まってしまいますので避けたいことです。
この生徒さんは、普段から気になる所があると、ピタッと演奏を止めて、弾き直してしまう傾向が強いタイプです。
普段の練習では、その敏感さが細かい部分での練習に繋がるので良い事だと思います。しかし、本番で同じことをしてしまうと、かえってマイナスになってしまいます。弾き直したいという衝動に駆られながらも、瞬時に、次に進む選択をした生徒さんの成長を感じた瞬間でした。
そして、部門全部の演奏が終わり、いよいよ結果発表の時が来ました。
ある程度手ごたえを感じているような表情をしつつも、演奏前とは違う緊張感のある顔つきです。
審査結果の書かれた紙が、貼り出されました。
点数と共に、○印が書かれていて、見事予選通過です。
生徒さんもお母様も、とても嬉しそうでした。しかも、嬉しいことに、なかなかの高得点でした。
「おめでとう」と声をかけ、喜びを噛みしめ、でも次の本選まで1か月も残っていません。
しかも、今回とは異なる曲ですし、当然ながら厳しい戦いになることは必至です。
「今日まで、ちょっと厳しいレッスンだったと思うけれど、よく頑張ったね。でも、これからが大変よ。今日は、もう遅いからすぐに帰って、明日の朝から、とにかくたくさん練習をしてね。」
とお話をしますと、生徒さんの頷きと間髪入れずに、生徒さんのお母様が「はい、練習させます!」というお返事が返ってきました。
そして、次の曲の練習の注意点などをお話しておきました。
生徒さんをコンクールにお勧めする以上、最初の予選で敗退という事だけは、なんとしても避けたいと思っていたので、まずはほっとひと安心しました。
次の本選まで、さらにパワーアップして、生徒さんと一緒に頑張っていこうと思っています。
(この記事は、第189号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、お子様のコンクールに向けた練習のお話です。
お子様がピアノを習っていますと、定期的に発表会があります。発表会は、音楽教室によって、年に1回の場合もあれば、数年に1回の場合もあります。
広い会場で、聴衆を前にピアノの演奏をしますので、いつも以上に練習して準備しなければなりませんし、普段と違う環境で、いかに自分の力を発揮できるかという自分との戦いも克服しなければなりません。
発表会は、大きな経験となり、成長するための貴重な体験にもなりますが、発表会以外でも人前で弾く経験をすることが出来ます。
その1つが、コンクールです。
現在、レッスンにいらしている一人のお子様の生徒さんが、コンクールに向けた練習をしています。本番まで1か月を切り、刻々と本番が近付いています。
コンクールを受けるときは、生徒さんからお話が出てくるよりも、こちらから「コンクールにチャレンジしてみませんか」とお話することの方が多い気がします。今回チャレンジする生徒さんもそうでした。
コンクールは、演奏に合否や順位が付きますので、そう気軽に参加するものではないと思っています。
他の方と比較されるわけですし、自分が良いと思っても評価が異なる事もあります。(もちろん、その逆もありますが)
普段以上のプレッシャーもかかるので、メンタル的に耐えて克服することもなかなか大変ですし、練習もたくさんするので、特にお子様の場合、ご家族のサポートが重要になってきます。
そして、厳しい事に、その努力が報われるとは限らないのです。
そのような事を踏まえて、覚悟を決めてチャレンジすることが大切です。
この生徒さんは、レッスンの回数も、1回あたりのレッスン時間も増やして頑張っている様子でした。
しかし、最近、そこまで目立った成長がないので、少し疑問に思い、話をしながらその要因を探ってみました。
すると、単純に練習時間が少ないのです。そして、驚いたことに、学校が休みの週末は、更に練習時間が減っている事もわかりました。
しかし、それ以上に改善が必要と思ったことは、生徒さんが話している時の様子で、普段と変わりなく、かわいらしい笑顔で話していて、危機感がなく、事の重大さに気付いていないことでした。
そこで、他者との比較はあまり好ましくないのですが、「コンクールに出る人は、上手な人が多くて、みんな、ものすごく練習してとっても頑張っているのよ」と、少しメンタル的にプレッシャーをかけてみました。
また、練習を始める時間や長さなどを具体的に決めて、紙に書いてくることを宿題にしました。
元々、コツコツと物事を進めるタイプなので、その後は計画通りきちんと実行しているようで、お正月明けのレッスンでは、「休みの間どうしてた?」と聞くと、「練習しました!」と元気よく話していました。
以前は、演奏について聞いてみても、「わからない」という答えがとても多かったのですが、「できた」「できなかった」という答えが即答できるまでになり、自分の演奏を客観的に聴いて、判別して、自分の言葉で発言できるようになってきました。
曲想などについても、これまでは「???」という表情をしていましたが、イメージを膨らませて、具体的に言えるようになってました。
これは大きな成長で、嬉しい驚きでした。
この生徒さんの次の時間にレッスンしている大人の生徒さんも、ドア越しから聴こえてくる音を聴いて、「劇的にうまくなってるよね~」と話されていました。
本番までの時間を有意義に、さらにパワーアップして、自信を持って本番に臨めるように、残りのレッスンを行っていきたいと思っています。
(この記事は、第185号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、大人の生徒さんの発表会のお話です。
先日、大人の生徒さんの発表会が開催されました。お子様の発表会と同様に毎年開催していますが、今回はピアノの他に、フルートや女声コーラスの生徒さんなどとご一緒の発表会になりました。
私の生徒さんは、月2回のレッスンなのですが、本番1か月前からは毎週レッスンにいらしていて、本番に向けてラストスパートをされていました。
元々、今年の発表会では、新しい曲を1曲決めて練習していましたが、曲が少し短いので、もう一曲追加する話になり、昨年の発表会で思うような演奏が出来なかった事を気にされていたので、「もう一度リベンジとして、同じ曲を弾いてみてはいかがですか?」とお話をしました。
そうしますと、間髪入れずに、「そんなこと出来るんですか? 是非、もう一回弾きたいです!」とのお返事でした。
毎回の発表会では、新しい曲を弾く事が多いわけですが、一度弾いた曲や、以前から練習していて、しかし、まだ本番で弾いたことがない曲を弾く事も問題ありません。
むしろ、そのような曲を弾くからこそ、学べることも多いものです。
弾き慣れた曲で、以前発表会の本番で弾いたことがある曲は、その時の経験がありますので、それを踏まえて対策を講じることができます。
例えば、テンポがだんだん速くなってしまったのであれば、どの辺りからそうなってしまったのかチェックし、心がけることもできます。
また、ミスをしてしまったのであれば、「緊張すると、この曲ではこの部分が危ない」とわかるので、もっと重点的に練習しておくことも出来ます。
更にレベルアップした演奏を目指すことになるので、曲をより深く考えて理解して弾く事も出来ますし、「一度弾いたことがあるから大丈夫」という精神的な安心感も持てます。
そして、発表会の当日を迎えました。
当日は、事前にホール近くのレッスン室を開放して、本番直前に少し指慣らしをすることができます。
生徒さんも早く会場入りして、弾いていました。いつものレッスンと違い、朝早い時間帯での本番ですが、なかなかの良い仕上がりで調子が良さそうでした。
そして、本番ですが、1曲目の新しく練習した曲は、直前の指慣らしでの良いイメージのまま弾く事が出来ました。
2曲目の昨年弾いた曲は、気を付けていたテンポ設定もよく、とても良い感じでしたが、途中でまさかのミスが少し出てしまいました。
終わった後、ご本人も、思わぬところでのミスに驚かれ、悔しがっていました。
それでも全体的には、昨年よりも断然素敵な演奏になりました。
ミスのない演奏というのは、本当に難しいものですし、そのためにも練習を積んで弾き込むことが重要になります。
しかし、間違えない事を意識しすぎると、保守的な演奏になったり、機械的な演奏になってしまうという弊害も起こりかねません。このような演奏では、表情豊かな音楽的に素晴らしい演奏とはかけ離れてしまいます。
また、「ミスの仕方」にも、段階があります。
初めの頃は、頭が真っ白になってしまい、ご自分でも何を弾いているのかわからなくなったり、ピタッと止まってしまい、途中から弾き直すことも出来ず、曲の最初から弾き直すことになります。
しかし、本番をたくさん経験してきますと、そのような大きなミスが徐々に少なくなり、小さなミスになってきます。
ミスがあっても、途中から弾き直すことが出来るようになり、また、ミスを気にせず演奏を止めることなく続行することが出来るようになります。そして、ミスの後も、調子を崩すことが少なくなってきます。
ミスの有無よりも、むしろ、ミスの内容とその対処を見て、生徒さんの成長ぶりを感じるものです。
生徒さん自身は、とても悔しそうでしたが、聴いていた私として、生徒さんの確かな進化を確認することが出来ました。
もう、すでに来年の発表会の具体的な曲名まで挙がっていて、生徒さんの向上心にも感激しました。
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