(この記事は、第192号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、以前お話した、お子様のコンクールの続きです。

前回、無事に予選を突破して、先日、本選会が行われました。

会場は、予選と同じホールです。予選でホールの雰囲気やピアノのタッチを体験しているので、練習の時にもイメージが湧きやすく、少しだけ条件が良かったと思います。

今回は、同じ部門に参加されるお子様が多く、控室へ入って見ると、中はぎゅうぎゅうの満員状態になっていました。

今回の本選会を突破できれば、全国大会へ行くことができる大事な一戦ですが、張りつめた緊張感というより、人の多さもあって、ざわざわと落ち着かない感じでした。

そんな中に、生徒さんとお母様が座っていました。生徒さんは、手袋をしてカイロも持っており、寒さ対策はバッチリです。前回の予選とは異なり、不安そうな感じではなく、緊張感のある引き締まったお顔をしていました。

しばし気持ちをほぐしながら注意点をお話し、その後、舞台袖に移動して、アナウンス後に舞台に上がりました。

生徒さんは、緊張はしていましたが、焦ることもなく演奏をしていました。

途中、少し音が弱すぎて鳴らない所や、後半に強弱が曖昧になってしまった所はありましたが、全体的には、なかなか健闘したと思います。

今回、出場しているコンクールでは、あらかじめ、予選、本選、全国大会で演奏する曲目を提出することになっていて、今回演奏した曲を、全国大会でも演奏する予定になっています。

演奏後、控室へ戻り、「もし、また演奏することになったら、ここは特に気を付けてね」と、楽譜を見ながら先程あまり上手に出来なかった所に書き込みを入れていきました。

そして、「あとは、結果が出るまでゆっくり休憩してね」と言って、一旦別れました。

私は、ホールに戻り、他のお子様の演奏を聴いていました。

自由曲で参加できるコンクールなので、バッハからベートーヴェン、ショパン、チャイコフスキー、バルトーク、日本人作曲家の曲目まで、色々な曲目が並んでいます。

その演奏を聴いていますと、演奏者によって驚くほど音色が変わる、ピアノという楽器の不思議さを改めて感じました。

お子様の場合、年齢が1歳異なるだけでも、相当な体格の差が生まれます。

体格がしっかりしたお子様は、音量をしっかり出せたり、「楽器が鳴る」「ピアノが鳴る」と言うように音の芯がしっかりとする場合が多くなります。これは、ピアノを弾く時に必要なものなので、評価にも繋がってくると思っています。

見方を変えれば、どちらかというと小柄で華奢(きゃしゃ)な場合、体格的に少々不利と言わざるを得ないかもしれません。そのような場合、パワフルさが必要な曲目を選んでしまうと、音がよく出せるお子様と同じ土俵で戦う事になり条件が悪くなってしまいます。

そのため、お子様の特徴を捉えて、コンクールで勝てるような作戦を練ることがとても重要になってきますし、指導者の力量が問われてきます。

さて、全ての演奏が終わり、審査結果の発表です。

掲示された用紙には、演奏番号と点数、合否の記号などが書かれていました。

参加された生徒さんはと言うと、無事に本選を突破しました。

しかし、まずまずの出来だったと思うのですが、その後頂いた講評を見ますと、思ったよりは厳しい内容と点数が書かれていました。

全国大会では、本選と同じ曲にしようと決めていましたが、1か月後の全国大会で最後の勝負をするには、かなり厳しい状況のように感じました。

予選と本選では、点数の付け方も異なるでしょうし、審査員の先生方も全て異なるので、一概に比較はできませんが、より良い条件で最後の勝負をするには、予選の曲の方が良さそうな気がしました。

また、生徒さんご本人も、予選の曲の方が気に入っているという事もあり、生徒さんやご家族と相談の上、予選の曲目で全国大会に出場することを決めました。

予選、本選とコンクールを見てきて感じる事は、演奏者の表現力と評価についてです。

例えば、一つひとつのフレーズに、それぞれ表情を付けていると、「よく気を配って弾けている」と感心し、表現の幅がある点は評価できると思います。

しかし、それをやり過ぎている場合や、有名な曲の場合、万人に曲のイメージが定着しているので、それと少しかけ離れているような場合に、評価がどのようになるのかは、なかなか難しい問題です。

この問題は、私自身が審査員をした時、他の先生方との意見交換会でも話題に挙がったことがありました。お子様がよく弾くような曲をしっかりと作り上げた演奏と、ショパンなどの大人が弾くような曲を、少々背伸びしているけど頑張って弾いている演奏を、どのように比較して合否を付けるのかという事です。

もちろん、演奏の完成度で比較するのですが、コンクールでも、とび抜けて上手な方というのはかなり限られ、ほとんどが同じくらいの実力なので、ちょっとの差で評価が分かれてしまいます。

私自身がコンクールを受けるときに、恩師が「点数で、あまり一喜一憂しない方がいいわよ」とおっしゃっていたことを思い出しました。

1か月後の全国大会で、長く続けてきたコンクールに向けた練習とレッスンが終わりを迎えます。

生徒さんが最後の本番で、実力をしっかりと発揮できて納得できる演奏ができるように、また1か月頑張りたいと思います。

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