(この記事は、2020年4月27日に配信しました第296号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回も、コロナウイルス関連のお話です。

今年のゴールデンウィークは、待ちに待った嬉しい期間とはならないようです。相変わらず猛威を振るうコロナウイルスの影響で、いろいろな施設が閉鎖され、公園も遊具が使用できなくなり、自宅にこもっている方も多いかもしれません。

少し前ですが、日本経済新聞の電子版に、目を引く記事がありました。

クラシック音楽などの公演を手掛けている、NPO 法人日本伝統文化交流協会が、声楽家やピアニスト、指揮者などの音楽家やダンサー、舞台スタッフなど 1000人以上にアンケート調査を行ったところ、6割以上の人が、3月だけで10万円以上の収入減になる見込みと回答したそうです。

3月の生活費について、貯金を切り崩し不足分を補うと答えた方が 65%、貯金の切り崩しだけでなく、借金をする予定の方も 16%いたそうです。

コンサートなどの公演中止や延期がこのまま続いた場合、3月までは生活を維持できると答えた人と、4月までは維持できると答えた人は、合わせて約6割になります。現在、もう4月下旬ですから、既に生活を維持できなくなっている音楽家が少なくないという事になります。

また、俳優の西田敏行さんが理事長を務める日本俳優連合が、4月中旬に俳優や声優 1020人にアンケートを実施したところによると、4月の収入について、無収入が27.6%、50% 以下が 34.4% だったそうです。回答者の4分の1が無収入で、まだわからないという人も 20.9% おり、無収入の方が更に増える可能性があります。

4月に入ってからの仕事依頼は、全く無い人が7割近くで、俳優によっては、スケジュールを抑えた段階でギャラが発生するそうですから、予定通りに撮影ができるかわからない状況では、依頼しにくいことも影響しているのでしょう。

いずれにしても、芸術関係の仕事をしている人々の厳しい状況が伝わってきます。

一方では、この状況を打破しようと、オンラインでレッスンを始めている方や、無観客ライブやストリーミング配信を行っている方々もいます。つい先日も、レディ・ガガが、バーチャル慈善コンサート「One World: Together At Home」を開催して大きな話題になりました。

8時間にも及ぶ大規模なコンサートで、普段なかなか見ることができない一流の演奏家が自宅で演奏しているなんて、大変貴重で贅沢なコンサートだと思います。最後には、レディ・ガガとセリーヌ・ディオン、ピアニストのラン・ランなど、異色コラボの演奏もありました。

日本では、星野源さんが、SNSで「おうちで踊ろう」という音楽に、様々なジャンルの方々が、リモートでコラボしていることが話題になりました。

他にも、新日本フィルハーモニー管弦楽団のメンバー 62人が、テレワークで「パプリカ」を演奏し、50万回以上再生されたそうです。

世界最大手のライブ配信アプリ「17 Live (イチナナライブ)」では、若手クラシック音楽家たちによるコンサートが配信されました。17 Live は、配信者と視聴者の双方が無料で利用でき、視聴者が演奏家に応援のポイントを贈ると、演奏家はその半分(1ポイントで 0.5円)の収入になるそうです。YouTube の広告収入とは異なる、新しいビジネスの誕生で、今後注目を集めそうです。

また、神奈川フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターが、期間限定でヴァイオリンのお悩み相談を始めたり、いろいろな方々がそれぞれ工夫してコロナと闘っています。

コロナの終息を願いつつ、今できることを行動に移す事が大切なのかもしれません。

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(この記事は、第293号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、「ひねりすぎた」曲のお話です。

先日、テレビ朝日の「題名のない音楽会」で「有名作曲家のひねりすぎた楽曲を楽しむ休日」と題した放送がありました。チャイコフスキーやモーツァルト、ハイドンなど、有名な作曲家が作曲した曲の中から、「ひねりすぎた」曲を紹介するものです。

まずは、バレエ音楽で有名なチャイコフスキーが作曲した「祝典序曲1812年」です。

楽譜に「大砲」と指示のある曲です。大砲を楽器として使うとは、何とも斬新ですね。

テレビでは、陸上自衛隊の音楽隊が基地内で演奏している映像が流れましたが、楽団の割と近い場所で、大砲が演奏に合わせて打たれていて、ドカンと打たれた時には、テレビの出演者がみんなで大笑いしていました。連発して打つようになっているところもあり、曲の最後には3台の大砲がピッタリ合わせて打たれていて、これは凄いと思いました。

この曲は、ナポレオンが大軍を率いて首都モスクワに攻め込みましたが、ロシア軍に敗退した物語を描いた曲です。チャイコフスキーは、依頼されて作曲しましたが、はじめは気が乗らなかったそうです。しかし、評判がよくなり、段々と気に入るようになったとのことです。

ちなみに、当時この曲を演奏する時に、実際に楽譜の指示通りに大砲を使ったかどうかは定かではなく、もしかしたら、チャイコフスキーが現代の演奏を聴いたら驚くかもしれません。

次に登場したのは、1928年生まれのシュトックハウゼンが作曲した「ヘリコプター弦楽四重奏」です。

ヘリコプターに演奏者が乗る夢を見た事から作曲されたそうで、なんと、実際にヘリコプターに乗って演奏する楽曲です。機体が揺れる中、また何よりも音が響かない中で演奏する曲というのは、新しすぎるとしか言いようがありません。

ローマで実際に演奏している映像が流れていましたが、お客さんはホールに集まり、ホールのスクリーンには、4人の演奏者が4機のヘリコプターに、それぞれ乗っている映像が映し出されていました。ヘッドホンをして演奏しますが、ヘッドホンにはカウント音が流れ、それに合わせて演奏するのだそうです。

元々現代音楽の作曲家で、ちょっと難しい音楽のため、テレビの出演者も「これは音楽なのか?」とか「この曲の意図は、何でしょうね?」というコメントをしていました。上昇したり下降するヘリコプターのプロペラの音を、弦楽器で演奏して表現しているのだそうです。

この曲は、オペラ「リヒト(光)」の中の曲で、オペラ自体は、なんと全部の演奏に1週間かかる大作なのだそうです。

次は、1931年生まれの作曲家カーゲルが作曲をした「フィナーレ」です。

指揮者が、演奏中に倒れ込んでしまうという楽曲です。テレビの出演者も、「指揮者が倒れたら、演奏が止まるのではないか?」とか「その指示は、楽譜に書いてあるという事なの?」と、疑問を口にしていました。

楽譜の一部がテレビに映し出されましたが、指揮者がどう動くのか細かい指示が書き込まれていて、「具合悪そうに左手で胸を撫でている!」「指揮者は譜面台を握りしめ・・・」、「頭を客席に向け後ろ向きに床に倒れる」などと書かれています。演奏者には、「立ち上がる」という指示があります。

この一連の動きは音楽に必要なのか、少々疑問に思ってしまいますが、エンターテイメント的な面白さはありますね。

テレビで演奏会の映像が流れていましたが、本当に楽譜の指示通りの動きをしていて、倒れた指揮者を、演奏者が立ち上がって心配そうな様子で見ており、指揮者を担架に乗せて運びだし、コンサートマスターが指揮者を務めて、演奏を続けていました。

演奏を聴くというよりも、「うわ、本当にやってる」と笑いしか出てきませんでした。番組のゲストに、ピアニストの反田恭平さんが出ていましたが、「この曲は知りませんでしたね。僕もやりたいですね」と話していて、さらに笑ってしまいました。

次に登場したのは、モーツァルト作曲の「音楽のサイコロ遊び」という曲です。演奏する順番を、サイコロで決めます。

176小節からなる曲の全ての小節に番号が書かれていますが、小節番号とは異なります。例えば、148番の次は22番、10番、13番、99番、37番、110番…といった感じです。それらを組み合わせて、16小節のオリジナル曲が出来上がるという遊びの曲です。

2つのサイコロの合計を、専用のチャート表で見て演奏しますが、約4京6千兆通りの組み合わせがあり、誰でも作曲家になれるというものです。テレビでは、出演者で実際に楽譜を作り、反田さんが演奏していましたが、思ったよりもいい曲だったと感想が出ていました。

次は、ハイドン作曲の「ピアノソナタ」です。なんと、逆再生しても同じメロディーになる曲です。回文という、上から読んでも下から読んでも同じ文章になる言葉遊びがありますが、同じテクニックですね。

番組では、反田さんに楽譜通りに演奏してもらってから、逆再生してみましたが、ちゃんと同じ音楽になっていて、すごい曲だと感心しました。

最後は、ラッヘルマン作曲の「ギロ ピアノのために」という曲です。特殊奏法で、ピアノを自由自在に操る楽曲です。

五線を使用しない見たことも無い楽譜で、ピアノの鍵盤など指でこすって演奏します。作曲者自らが演奏している?!映像を見ましたが、面白過ぎて見入ってしまいました。反田さんも、見様見真似で演奏?!していましたが、番組の出演者が笑いを必死で堪えている顔が映し出されていました。

私も知らない曲がいろいろあり、音楽の幅広さを再認識させられました。

リサイタルやコンサートでも、このような曲が1曲でも取り入れられたら、もっと気軽に足を運べるのではないかと思いますし、お子様にも楽しんでもらえるのではないかと思いました。

ご興味のある方は、ぜひ聴いてみてください。

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(この記事は、第291号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、音楽系のマンガのお話です。

近年では、インターネットで本を買ったり、電子書籍で購入することが普通になってきましたが、それでも、時々本屋さんに足を運ぶと、たまたま目に留まった本との出会いがあったりして嬉しいものです。今回、ご紹介するマンガも、このような出会いで読むことになった本です。

マンガで教養 はじめてのクラシック」という本なのですが、「マンガで教養」という、なんとなく矛盾しているような気がしなくもない言葉と、サブタイトルにある「一生モノの基礎知識」という言葉に惹かれて購入してしまいました。

小さい頃に少しピアノを習っていましたが、クラッシック音楽にあまり良いイメージを持っていない主人公の女性が、偶然コンサートに行くことになり、それをきっかけに、クラシック音楽の魅力を知るというお話がマンガで書かれています。

10ページくらいのマンガの後には、いろいろな音楽知識をたくさんの図や写真を使用して、わかりやすく解説しています。

「まず知っておきたい クラシック作曲家20人」というコーナーでは、半ページまたは4分の1のスペースで、似顔絵のイラスト付きで作曲家の生涯が書かれ、どんなジャンルの曲を作ったかという項目では、後世に与えた影響を考慮して3段階の星の数で評価が書かれています。

「クラシックのジャンル」では、交響曲や管弦楽、協奏曲、室内楽曲などの解説が書かれていて、「交響曲」と「交響詩」の違いなど、実はわかっていなかったようなものについても確認が出来ます。

オーケストラの配置について、おおよそはわかっていても、例えば木管楽器については、配置以前に個々の楽器の区別がつかないという事も多いかもしれません。フルートは、金属で作られていますが、金管楽器ではなく木管楽器の仲間ですし、クラリネットとオーボエなどはとてもよく似ていますから、区別がつかないかもしれません。

本の中では、写真を使用して一般的なオーケストラの配置について解説されていたり、個々の楽器についても、写真だけでなく部品の名前やサイズ、役割なども書かれています。これは大変わかりやすいです。

「世界の音楽コンクール」というコーナーでは、コンクールの流れから主要なコンクールの紹介、ショパンコンクールとチャイコフスキーコンクールの比較などもありました。今年は、秋にショパンコンクールが開催されますので、是非とも押さえておきたいところですね。

その他にも、国別のオペラの特徴やオペラハウスの構造、代表的なオペラの解説やバレエ音楽、年末に日本各地で演奏されるベートーヴェンの第9交響曲についてや、規模別のコンサートホールの解説、実際にコンサートへ行くときのチケットの買い方や座席の選び方、服装やマナーについても丁寧に書かれていました。

チケットを買うときは、値段や何となく前の方というように選びがちですが、それぞれの席の楽しみ方もありますので、参考になると思います。

「名曲ガイド」では、たくさんのクラシック音楽の中から、ジャンルごとにかなり厳選された曲の紹介が載っています。曲の紹介だけでなく、聴きどころの説明や、曲想や曲の長さなどを項目ごとに4段階で評価しています。曲の解説も短めなのでとても読みやすく、聴きたくなってしまうかもしれません。

本の最後の方には、世界や日本のオーケストラの紹介、日本のホールの地図なども載っていて、まさに至れり尽くせりの一冊です。そこそこの厚さの本ですが、堅苦しさは全くなく、とても分かりやすい内容ですので、一気に読み終わってしまいました。

これからクラシックを学ぼうという方はもちろん、ピアノのことはわかっていても、他の楽器のことはよくわからないという方や、既にいろいろとご存知の方も、改めて知ることが意外に多いかもしれません。大人の生徒さんだけでなく、中学生くらいの生徒さんにも、ご紹介してみようと思っています。

ちなみに、この本はシリーズものになっていて、ワインや落語、歌舞伎、仏像を扱っている本も出版されているそうです。

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