(この記事は、第54号のメールマガジンに掲載されたものです)

たのしい音楽小話、今回は、音楽とグルメのお話です。

私自身、料理やスイーツを作るのも食べるのも、とても興味があり好きなのですが、音楽が好きな方や職業とされている方でグルメ好きな方は結構多いように思います。

例えば、ピアニストであり音大の教授でもある横山幸雄さんは、自身でレストランを経営されています。音楽とグルメを結びつけたコンサートをなさっている方もいらっしゃいます。

また、音楽とグルメは切っても切れない関係という見方も出来ます。レストランに行きますと、必ずと言っていいほど音楽が BGMで流れていますし、オペラ鑑賞の後にレストランで、今見てきたオペラについて語り合う光景は、ヨーロッパではごく当たり前のようです。

最近では、牛などの動物にクラシック音楽を聴かせるとか、お酒やパンの発酵の時に音楽を聴かせたり、植物を育てるときにモーツァルトを聴かせる事も行っているそうです。音楽は、もはや人間だけではなく、あらゆる生物の生長や癒しに、欠かせないアイテムになっているのかもしれませんね。

以前、フランス料理の「牛肉のステーキ ロッシーニ風」とは、作曲家のロッシーニのことであるとお話をしました。彼は、イタリア生まれですが、途中でフランスのパリに移り住んでいます。その理由が「美味しいものを食べるため」とも言われています。それだけではなく、養豚場を始めたり、レストランを始めて色々なメニューを生みだしているのです。

また、グルメを題材にした音楽も次々と作曲しました。デザートを題材にしたり、食材を題材にしているのですが、その中で特に面白い題名の曲は「ロマンチックな挽き肉」という曲です。まだ、聴いたことがないのですが、どうも挽き肉にする機械の音を表している音楽のようです。

ロッシーニ以外でも、「主よ、人の望みの喜びよ」などで有名な J.S.バッハは、「コーヒーカンタータ」という曲を書いています。コーヒーにすっかりはまっている娘と、それをやめさせようとする父親がテーマの楽しい音楽です。バッハが活躍していたライプツィヒは、コーヒーが有名な土地なのだそうです。またコーヒーを飲めるコーヒーハウスでコンサートも行っていたそうで、そこで演奏するために、バッハは「コーヒーカンタータ」を作曲したと言われています。(ライプツィヒについては、ヨーロッパ音楽紀行・ライプツィヒもご参照ください)

音楽家は、貴族のお抱え音楽家だったり貴族のサロンで演奏していたので、貴族たちに美味しい食事をご馳走になりグルメな人が多かったのだそうです。

しかし、時にはそうでない作曲家もいます。

ベートーヴェンは、ロッシーニのように自ら料理をして友人達にふるまっていたそうですが、かなりイマイチな味だったそうです。イマイチどころか、その料理を食べた友人達が、お腹を壊したり食中毒にかかったこともあるそうです。でも、ベートーヴェンは「こんなに美味しいのに」と納得がいかなかったそうです。

音楽もグルメも美を追い求めていく部分がありますが、それはかなり個人差があるのかもしれませんね。

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(この記事は、第53号のメールマガジンに掲載されたものです)

前回まで、今年10月に行われるショパン国際ピアノコンクールについてお話をしてきました。

今回は、その特異なコンクールであるショパン国際ピアノコンクールに参加したピアニスト達とコンクールにまつわるエピソードについてお話をいたします。

世界には、ショパンコンクール以外にも色々なコンクールがありますが、これだけ話題性のあるコンクールはあまりないのではないでしょうか。コンクールに優勝しますと、一夜にして全世界に名前が知れ渡り、その後も世界一流のピアニストとして認知されます。

このコンクールに優勝した以下のようなピアニストの名前を聞いたことがある方も多いかと思います。勿論今でもコンサート活動などで大活躍されています。

ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ(ポーランド)
マウリツィオ・ポリーニ(イタリア)
マルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)
クリスティアン・ツィメルマン(ポーランド)
ダン・タイ・ソン(ヴェトナム)
スタニスラフ・ブーニン(ソヴィエト連邦)
ユンディ・リ(中国)

例えば、ブーニンが優勝した時には、日本でも大ブームとなりコンサートも大盛況だったようです。また、ポリーニが18歳で優勝した時には、満場一致の優勝で、審査委員長をしていたピアニストのルービンシュタインが「ここにいる我々(審査員たち)の中で、彼より上手く弾ける人がいるだろうか」と、大絶賛のコメントをしたという話も残っています。

日本人ピアニストに優勝者はまだ残念ながらいませんが、入賞した方は結構います。

内田光子(第2位)
横山幸雄(第3位)
中村紘子(第4位)
小山実稚恵(第4位)
関本昌平(第4位)
山本貴志(第4位)
高橋多佳子(第5位)
宮谷理香(第5位)
海老彰子(第5位)
佐藤美香(第6位)
遠藤郁子(第8位)

みなさん、ショパンコンクールの入賞をきっかけとして、ピアニストとして活動をされているようです。

その中で、中村紘子さん、内田光子さん、小山実稚恵さんに関しては、日本国内だけでなく世界を舞台に活躍をされています。

中村紘子さんや小山実稚恵さんは、ショパンコンクールの審査員としても活躍されていますし、内田光子さんは、シューマン・モーツァルト・シューベルトの演奏に関しては世界的に評価が高いピアニストで、日本国内でコンサートが行われる時には、チケットが即完売してしまうという、ものすごい人気ぶりです。

また、コンクールには色々なエピソ-ドも残されています。

例えば、マルタ・アルゲリッチは優勝の後、今度はショパンコンクールの審査員になりますが、その時に参加していたイーヴォ・ポゴレリチというピアニストが本選に進めなかった事に異議を唱え、「彼は天才」と言って審査員を辞退しました。しかし別の審査員は、彼が1次予選を通過したことに抗議して審査員を辞任しています。このピアニストは、今でも個性的な演奏で人気のあるピアニストです。

同じように、アシュケナージが第2位という結果に猛抗議した審査員のミケランジェリは、審査結果のサインを拒否し、それ以降のショパンコンクールの審査員を拒否しました。

また、日本人として初出場した原智恵子さんが入賞しなかった事に聴衆が激怒して、警官が出動する程の騒ぎとなったこともあるようです。勿論、審査結果を取り消すことは無かったのですが、特別に賞を送って事態が鎮静したという話もあります。

このようなエピソードを聞きますと、世界一流のピアニストや教授陣達の間でも、音楽については意見が分かれますので、いかに音楽がある意味個人の好みによるものなのかがわかりますね。

今年のショパンコンクールでは、どんなエピソードが生まれるのでしょうか。

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(この記事は、第52号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、「ショパン国際ピアノコンクール」の第3話です。前回は、第2次予選までお話をしました。

第2次予選を通過しますと、次の日には第3次予選が始まります。セミファイナルなので、ここを通過しますといよいよ本選へ出場することができます。

きっとここまで進んだ方全員が、「ここまで来たんだから最後まで進みたい」と思うのでしょう。第3次予選では、マズルカとソナタが課題曲になります。

マズルカもソナタも、ショパンの作品の中で、最も難しいとされている曲です。

マズルカは、ただ単に弾くだけなら、テクニック的には小学生でも弾ける位なのですが、ポーランドの民族音楽を取り入れていますので、そこをどれだけ表現できるのかという点が非常に難しいとされています。

ソナタは、技術的にも音楽の内容的にも大変難しいとされていて、ピアニストのリサイタルでも最後に演奏する曲として選ばれます。「いかにショパンの音楽の真髄を深く理解して、表現するのか」を競うショパンコンクールのセミファイナルの課題曲として、ふさわしいとも言えます。

前回は12人中、半分の6人が、この第3次予選を通過しました。

第3次予選が終わりますと、10月17日はショパンの命日です。この日はコンクールもお休みとなり、コンクールの参加者や審査員などが、ショパンの心臓が埋め込まれている聖十字架教会で行われるショパンのミサに参列します。

そして次の日から、いよいよ本選となります。

本選は、オーケストラとのコンチェルト(協奏曲)が課題曲です。これは、ショパンコンクールだけではなく、他の大きなコンクールでもよくある課題曲です。

ピアニストとしてコンサートを行う場合、一人でリサイタルを行うことが多いのですが、それだけではなく、他の楽器やオーケストラとの共演もよくあります。オーケストラの演奏会にゲストとして呼ばれるということです。

そのため、オーケストラや指揮者と一緒に、一つの音楽を作り上げる事も、ピアニストとしての重要な能力と言えます。しかし、なかなか普通はオーケストラと演奏できるチャンスが無いので、コンクールの本選で初めてオーケストラと演奏するという事も多いようです。

そうなりますと「練習の時には、どうするのか?」「どうやって練習するのか?」という疑問が湧いてくるかと思います。

実は協奏曲には、2台のピアノで演奏できるように編曲された楽譜があるのです。そして、オーケストラの部分をピアノで弾けるようになっています。(ピアノのパートは、もちろん編曲されておらず、オリジナルのままです)

オーケストラの部分を誰かに弾いてもらって練習をしたり、先生に弾いてもらって合せながら練習をします。

コンクールでは、リハーサルがありますが、オーケストラとの練習は時間が決まっているので、そうたくさんは一緒に練習が出来ません。限られた時間で、自分が表現したい音楽を指揮者やオーケストラに伝えつつ、指揮者やオーケストラが感じる音楽を理解して、織り交ぜて一つにまとめていくことになります。これは、想像するだけでも大変なことですね。

他のコンクールでは、ベートーヴェンのコンチェルトやラフマニノフのコンチェルトなど、さまざまなコンチェルトが弾かれるのですが、ショパンコンクールでは、当然ショパンの作品だけを弾くので、ショパンのコンチェルトだけが弾かれます。

しかし、ショパンはコンチェルトを2曲しか作っていません。以前、このコーナーでも触れましたが、他にオーケストラと一緒に演奏する作品もありますが、それも数曲しかなく、またそれほど有名ではないので、おのずと一番有名なコンチェルト第1番を弾く人が多くなります。

マズルカやポロネーズ、練習曲などは割と曲数が多いですし、一度に色々な曲を弾きますので、他の人と少し曲が重なるくらいで済むかもしれませんが、コンチェルトはこのような状況なので、最後の本選になって「すぐ前の人が同じ曲を弾く」とか「次の人も同じ曲を弾く」ということが起こりうるのです。

とてもリアルに比較されそうですし、プレッシャーも相当なものでしょうね。

こうして、ようやくショパンコンクールの優勝者やその他の順位、入賞者が決まります。今年はどんなピアニストが優勝するのか、楽しみですね。

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