(この記事は、第201号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、夏の発表会に向けた連弾の練習風景です。
いよいよ、お子様の発表会まで2週間を切りました。レッスンも次回が最後のレッスンとなります。
生徒さん方も、熱心に練習をされているようで、1週間で驚くほど上達されています。
今回の発表会では、初の連弾に挑む生徒さんがいます。
連弾は、1台のピアノを2人で演奏します。
ピアノを弾くという意味では、1人で弾く時と、それほど変わらないように思えますが、実際にやってみますと、かなり違います。
たとえば、座る位置も、1人で弾く場合は、椅子を鍵盤の真ん中に置いて座りますが、連弾の場合、当然ながら椅子は2つ置きますので、座った時に、目の前にある鍵盤の位置が変わります。目の前の光景が変わるので、慣れないとかなりの違和感を感じます。
楽譜の見え方も当然異なり、高い音の方に座った場合(高音部を弾くプリモと言います)には左寄りに、低い音の方に座った場合(低音部を弾くセカンドと言います)には、右寄りに楽譜が見えることになります。
少し進んでいる生徒さんですと、ペダルを使用するため右足は常にペダルにかけている状態になりますが、これも連弾になりますと違ってきます。
高い音の方に座るプリモの方は、ペダルを使用しませんので、常に両足を床に付けていますが、低音部を弾くセカンドの方は、右足を、右斜め前に伸ばして、ペダルを踏む状態になります。普段よりも、かなり踏みにくい体勢になりますね。
もちろん、演奏も1人で弾く時とは、かなり変わってきます。
その中でも、「合わせる事」と「音楽全体のバランス」を整える事は、大きな難問となります。
「合わせる事」とは、演奏の出だしやフレーズの終わり方などの間の取り方、だんだんゆっくりにするところなどの速度が挙げられます。
ちょっとした間や速度を変化させる場合、弾く方それぞれに間の取り方やスピード感がありますから、気を付けて合わせないとバラバラになります。
目に見えるものではないので、お互いに「この位」という感覚を掴んで、あとは練習で慣れていくことになります。
出だしについては、どちらかが拍子をとったり、「せーの」というちょっとした合図を送って、弾き始めることになります。
「音楽全体のバランス」は、もっと難しい問題かもしれません。
自分で弾いた音以外に、相手の弾いた音もよく聴いていないとバランスがとれません。
2人で弾いた音の中で、メロディーが最もよく聴こえる様にして、伴奏はやや控えめに、けれどもベースは少し出した方が安定感が出るなど、音量のバランスは、演奏中ずっと気を付けることになります。
しかも、高音部のプリモが常にメロディーとも限りませんので、ますます難しくなります。
そして、譜めくりの問題もあります。
数ページという長さの曲を弾く場合、楽譜をコピーして繋げて、譜面台に広げて見ながら弾く事が多いかと思いますが、連弾の場合は同じようにできません。
見開き状態で、高い音域を弾くプリモの方は、常に楽譜の右ページだけを見て弾き、低音部を弾くセカンドの方は、常に左ページの楽譜を見ながら弾く事になります。
ページをめくっても、ずっと同じ状況になりますので、1人で弾く時のように、楽譜をコピーして広げてしまうと、どこを見て弾くのか分かりにくくなってしまいます。
そのため、連弾の場合、弾きながらページをめくるか、他の方に譜めくりをお願いすることになります。
今回の場合、その譜めくりを、生徒さんの妹さんにやってもらうことになりました。
もちろん、連弾の譜めくりは初めてなので、レッスンの時に練習するために来てもらいました。
まずは、少しゆっくりと弾いて、楽譜のどこを弾いているのか追いかけられるようにします。そして、譜めくりをしてもらいましたが、やはり遅れてしまい、うまくめくれません。
自分がピアノを弾いている時のことを思い出してもらい、弾いている場所よりも少し先の楽譜を見ている事を理解してもらいました。そして具体的に、この小節を弾く時に立って譜めくりの準備をして、最後の小節を弾く時に、めくり始める様にしました。
何回か部分練習を兼ねて、譜めくりをしてもらいますと、慣れたようで、自信をもってやれるようになりました。
単に2人でピアノを弾くように見えますが、細かく見てみますと、1人で弾く時とは相当違っています。
大変な事ばかり挙げてしまいましたが、もちろん1人で弾く時とは異なる楽しみもあります。
共同作業での音楽作りで、演奏の迫力も出てきますし、呼吸がぴったりと合った時の喜びや達成感は何とも言えません。
機会があればチャレンジしていただければと思いますし、連弾の演奏を聴くきっかけになればと思います。
(この記事は、第200号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、夏の発表会に向けた、生徒さんの様子です。
梅雨に入り湿気が多い季節ですが、最近はぐっと気温が上がり、初夏の様な陽気も感じられます。
夏が近づくと、ピアノ教室では、お子様の発表会が近づくという事になります。
今年は例年より少し早い開催となり、プログラムのチェックも既に終わり、記念品選びも終わりました。
お子様の発表会では、参加された生徒さんに記念品をお渡ししていますが、事前に、いくつかの選択肢の中から生徒さん本人に欲しいものを選んでもらっています。
生徒さんによって、記念品の好みが違ったり、描かれているキャラクターの好き嫌いもあるので、他の先生方でも生徒さん本人に選ばせている方が多いようです。
昔は、口頭で説明して、イメージを膨らませながら選んでもらっていましたが、最近は、スマホで写真を撮り、それを見てもらって選んでいます。生徒さんも、よりわかりやすく、好みのものが選べるようになったと思います。
さて、発表会に向けたレッスンの方は、6月に入った頃から、既にカウントダウン状態になっています。
いつも、私の方から「本番まで、あと○回しかレッスンが無いからね!」と、あえて少しプレッシャーをかけ、ラストスパートに向かうように話をしてきましたが、今年は、既に何回も発表会を経験した生徒さんばかりなので、自ら「あとレッスン何回?」と聞かれるようになりました。
それでも、私が残りの回数を答えますと、「ああ~っ・・・」と、思ったよりも回数が少ないことを実感する表情を浮かべたり、「うわ~、もうそんなに回数がないのか・・・、その前に期末テストもあるし」と、少し浮足立った様子を見せる生徒さんもいました。
しかし、今年は、生徒さんそれぞれが、これまでより、あまり背伸びをしない曲を選んだので、練習は順調に進んでおり、本番に間に合わないという事はなさそうです。
発表会の曲選びは、もう何十回も経験していますが、それでも悩みは尽きません。おそらく、他の先生方も同じだと思います。
発表会では、曲を「ある程度」きっちりと仕上げて、本番に臨むわけですが、その「ある程度」をどのレベルに設定するのかは、曲選びと直結しています。
生徒さんの中には、難しい曲にチャレンジしたい方もいて、私個人としては、その願いをなるべく叶えてあげたいと思っていますが、その場合には、少し完成度が緩めになる事もあります。事前に、その旨を了承して頂いてから、練習に入ることになります。
今回は、全員が結構しっかりと仕上げて、本番に臨めそうですが、今の段階で生徒さん自身が大丈夫そうだと思ってしまうと、成長が止まったり、既に完成していると誤解する可能性もあるので、あくまでも私の中だけに留めています。
本番1ヶ月前は、最もレッスンの集中度が高まり、自宅での練習も積極的になり、伸びる時期なので、この時期を有効に活用しなければなりません。
小さな生徒さんにとっては、ご家族の協力も大切なので、ご家族にもレッスンの様子や自宅での練習についてお話をして、ご協力を頂いています。
残り少なくなったレッスンを、毎回濃密なものにして、来月の本番では、生徒さんそれぞれが、思ったような演奏ができる様に願っています。
(この記事は、第199号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、色々な顔を持つピアニスト、パデレフスキのお話です。
ピアニストは、コンサートホールなどで演奏活動をするわけですが、それだけではなく、他の事もしているピアニストは少なくありません。
その中で一番多いのが、お弟子さんをとって指導することだと思います。個人的に指導したり、音楽大学や音楽セミナー、講習会などで指導することもあります。また、コンクールの審査員などを務めて、講評することもあるでしょう。
また、ピアノとは別の音楽活動をされる方もいます。例えば現代ですと、バレンボイムやアシュケナージ等は、ピアニストでありながら指揮者としても大活躍しています。
これらは、本来の演奏活動に直結した仕事なので、イメージしやすいと思いますが、ピアニストは昔も今もたくさんいるので、もっと他のジャンルで活躍している方もいます。
その中でも、特に異色の存在と言えるのが、パデレフスキです。
パデレフスキは、ピアノの詩人と呼ばれたショパンの没後11年の1860年に、同じポーランドで生まれました(現在はウクライナ領となる村が生地)。
ワルシャワ音楽院の前身で学び、卒業後は母校で教鞭をとりました。
その後、ベルリンやウィーンに留学し、パリのデビュー・リサイタルを成功させ、フランスやドイツ、ロンドンやニューヨークでもコンサート活動を行いました。それと共に、作曲活動も行いますが、多忙のせいかスランプに陥ってしまいます。
スランプは辛いものですが、ちょうどその頃、政治に興味を持ち始めます。ヨーロッパは、第一次世界大戦の激動の時代でした。
パデレフスキは、とても演説が上手だったようで、第一次世界大戦後、ポーランド共和国となった際には、ポーランドの首相と外務大臣を務めました。
約1年、首相を務めた後は、現在でも大変有名なアメリカのカーネギーホールで復活コンサートを行い、演奏活動を再開させ、後進の指導も再開させます。
そして、ショパン全集であるパデレフスキ版の校訂を始めます。
ショパンの曲には、多くの種類の楽譜があり、かなりの違いがあります。ある楽譜には、小さいスラーがたくさん書いてあり、アクセントもたくさん書いてありますが、他の楽譜では、小さいスラーが無く、アクセントもだいぶ少なく書かれている事があります。装飾音符やペダルの指示も変わっている事が少なくありません。
どちらも同じショパンの作品でありながら、楽譜がかなり違うというのは不思議ですよね。
このような違いは、ショパンの楽譜が色々な国で出版されたことや、校正がショパン自身だけでなく、弟子や弟子以外の人でなされた事も要因となります。
ショパンについては、たくさんの資料があるため、むしろ色々な解釈があり、色々な楽譜が生まれるという事なのかもしれません。
ショパンの曲は、弾く人によってかなり表現に差がありますが、このような楽譜による影響も少なくないと思います。
ちなみに、パデレフスキ版は、ショパンの直筆譜と初版に基づいて作られた楽譜なので、ショパンの意図するものが読み取りやすい楽譜かもしれません。
ショパンの曲を弾いたり聴いたりする時に、同じポーランドのピアニストというだけでなく、ポーランドの独立のために活躍したパデレフスキを思い出してみましょう。
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