(この記事は、第63号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、大人の生徒さんのお話です。
70代の生徒さんで、知り合いの方のご紹介でピアノに通われるようになりました。
小さい頃に少し習っていたそうですが、それから50年以上ものブランクの後、再開されたことになります。
私が小さい頃は、小学生女子の習い事で真っ先にピアノが挙げられるほど、お稽古ごとの定番でしたが、70代の方が小さい頃となりますと、状況はかなり異なります。
それこそ学校にピアノがあるかどうかという時代(足踏みオルガンの世代)ですので、その時代に、家にピアノがあって習っていた方は、ごく稀でしょう。
先生が厳しく、よく注意もされていたそうで、「嫌だなぁ」と思ったこともあるという話をされていました。でも、音楽は好きで、家では家族みんなで蓄音機を回して楽しんでいたそうです。
子育てや介護も一段落し、悠々自適の生活になってから、ピアノを再開されました。大人用の教材を1巻から進めていますが、もうすでに3巻目まで進んでいます。
色々なケースがあるので、一概には言えませんが、平均しますと1冊を終えるのに1年から1年半ほどかかる教材です。しかし、この生徒さんは、お教室に通われてまだ2年も経っていませんが、既に3巻の半分まで進んでおり、かなりのハイペースと言えます。
大人の方だけでなくお子様でも、新しい曲を初めてレッスンする時には、片手だけ練習をしてきたり、途中まで練習をしてくる生徒さんがいらっしゃるのですが、この生徒さんは、初めての曲でも、いつも両手で最後まで練習をされた状態でレッスンにいらっしゃるのです。
どんな曲でも、このような状態ですので、物凄く譜読みが速いのかと思っていましたが、家では時間をかけて、コツコツと練習をされているようです。そして、レッスンをしている曲以外に、次の曲も並行して練習をされているので、次の曲に移ったときには両手で弾けるようになっているのです。
最近では、さすがに曲が難しくなってきているので、レッスン時間を倍にしたいとの申し出があり、今はそのように進めています。年齢的な事もあり、長時間のレッスンがこなせるのか、少し心配していましたが、実際に始めてみますと、全く心配無用で、難なくこなしています。
レッスンでは、連続で何回も同じ曲を通して弾きますが、全く飽きる様子もなく、私の方が、「自分が、この生徒さんと同じ年齢になった時に、こんなにも熱心に出来るのだろうか」と感心しています。
ピアノ以外にも麻雀や、宝塚歌劇団の観劇など、楽しみがいくつもあるそうですし、スポーツ観戦も大好きなのだそうです。しかもラグビーや野球など、どのスポーツを見るのも楽しいそうです。
いつまでも若々しく元気でいる事は、誰もが理想とするところですが、このような方を実際に目の当たりにしますと、こちらも元気を頂いているような気がして、毎回楽しくレッスンをしています。
(この記事は、第61号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、小学校低学年の生徒さんのお話です。
レッスンに通い始めて3年ほどになるAちゃんは、体験レッスンの時からおばあ様が連れて来られていました。ご両親揃ってフルタイムでお仕事をされているご家庭が多くなっていますので、彼女のようなケースは、決して珍しいものではありません。
Aちゃんは、毎回ワーク(音楽ドリルのようなもの)をきっちりとやってくるのですが、ピアノの演奏の方は、曲の途中でよく止まってしまう傾向がありました。普段のレッスンはともかく、発表会など人前で演奏する時に止まってしまう事は、なるべく避けたいことなので、毎年発表会前の大きな課題として、止まらない練習をしてきたのです。
元々、あまり器用な方ではないようですし、性格もおとなしく、質問をしてもあまり答えられずに黙ってしまうところがありました。答えに確証がない状態では、発言しようとせず、「わからない」ということを言い出せない事も度々ありました。
決してムッとした表情でレッスンをしている訳ではないのですが、お家のことや学校であったことなども、あまり話さないので、レッスンをしている私としては、「果たしてAちゃんは本当にピアノを楽しくやっているのだろうか?」と不安に感じてしまう事もありました。
そんな折、いつものようにAちゃんと一緒におばあ様がいらっしゃいました。おばあ様は、いつもレッスンを見学しているのですが、「今日はちょっと用事があるので、後程迎えに来ます」とおっしゃるので、「はい、わかりました。それでは後程」とお返事をしたところ、おばあ様はおもむろにバックの中から1枚のパンフレットを取り出しました。
「親バカみたいな感じですけど、先生にお見せしたくて。これは、(Aちゃんの)学校で今度行われる音楽会のプログラムなんですけど、ここに彼女の絵が載っているんです!!」
そこには、グランドピアノの絵が描かれ、Aちゃんの名前も書かれていました。
「私、もうホントに嬉しくて・・・。これも本当に先生のおかげです。ありがとうございます」とおばあ様は、満面の笑みでお話されました。
「Aちゃん、スゴイじゃない!上手に描けているわね~。鍵盤の所がとっても細かく描けていて上手ね。Aちゃん、選ばれて描いたのかな?」
「学校の先生がね、楽器とか歌っているところの絵を描いてって言ったから描いたの。」
「そうなの、それでグランドピアノの絵を描いたのね」
音楽をテーマにした絵でグランドピアノを題材に選んでくれたことで、私もAちゃんが、彼女なりにピアノを楽しく弾いているように思え、とても嬉しく感じました。またその絵が、コンサートなどの聴衆から見たピアノではなく、弾いている自分の目線から見たピアノの絵であることが、尚のこと嬉しく思えました。
(この記事は、第60号のメールマガジンに掲載されたものです)
前回のピアノ教室の出来事では、月に2回レッスンの大人の生徒さんを対象としたピアノ発表会の準備について書きましたが、この発表会が開催され、無事に終了いたしました。
出演された生徒さんは、ホッとされていると思いますが、レッスンを指導している立場としても、無事に終わって安堵しています。
ピアノ教室で発表会と言いますと、次々とピアノソロの演奏が行われるイメージですが、ピアノだけでなく他の楽器の生徒さんと合同で行われることも多々あります。
ヴァイオリンやフルート、声楽のような割とメジャーな楽器だけでなく、ちょっと面白い楽器のときもあり、普段あまり馴染みのない楽器の演奏を、じっくりと聴けるのも、大人の発表会ならではです。
演奏の前に、レッスンを担当している講師が書いた生徒さんへのコメントが読み上げられ、普段のレッスンの様子や、演奏する曲目を選んだ背景、生徒さんの人柄などがわかるようになっています。このコメントで、演奏される生徒さんへの興味が更に増し、少しアットホームな雰囲気にもなり、場が和みます。
今回の発表会では、毎年参加されている常連の生徒さんと共に、初めての方も参加しました。
初めての生徒さんは、レッスンでは殆どの曲を暗譜して弾いていますが、発表会では念のため楽譜を置くようにし、私も譜めくりの為に舞台に上がりました。
大人の方は、緊張で手が震えたり、足がガクガクしてしまう方が、ちらほらいらっしゃるのですが、この生徒さんはそのようにはならず、見た目は普段のレッスンとあまり変わらない印象でした。
いざ弾き始めますと、一番の課題だった最初の1ページの安定感が増していて、止まったり、詰まってしまう事もなく、順調に演奏をしていました。
その後も、テンポが暴走することもなく、少し止まってしまう部分はありましたが、全体的には、とても初めてとは思えないほどの出来栄えで、とても驚きました。
「○○さん、よかったですね。特に前半の1ページが、レッスンの時よりずっと良くなっていましたね。とても初めてとは思えないですよ。」と声をかけますと、「そうですね。レッスンの時より結構上手くいきましたよね」と笑顔で満足そうにお話されていました。
また、これまでに何回も発表会に出演されている生徒さんの1人は、今回はかなりの大曲にチャレンジしました。これまでに弾いたことがない作曲家で、物凄く幅広い音域を使うので、鍵盤の端から端まで使うような曲です。それでいて、かなりパワフルさも要求されるので、アレンジされている曲とはいえ、なかなかの難曲といえます。
月2回のレッスンですが、発表会前はレッスンを増やして、毎週のようにレッスンに通われたり、2コマ続けてレッスンを行ったりしていました。
大人の発表会では、どちらかというと、きれいな感じや繊細な感じの曲を弾く方が多いので、このようなパワフルな曲は、発表会にとても映えていました。本番のピアノはレッスン室のピアノよりも大型なので、低音の弦も長くなりますから、尚更パワフルさが伝わります。会場全体が演奏に惹きつけられているような感じでした。
少々のアクシデントも、すっと乗り越えて行くあたりも、さすが発表会の常連で場馴れしています。
全体的に大成功の演奏で、「○○さん、良かったですね。こういうパワフルな曲も合いますね。レッスン室で聴くよりも、弦が鳴っていて華やかでしたよ。」と声をかけますと、「あっ、そうでした?(鳴っていました?) いや~、それなら良かった」と、こちらも満面の笑顔が印象的でした。
今回は、みなさん大成功でしたので、本当にホッとしました。これを機に、生徒さんが更に自信を持って、色々な曲にチャレンジしていければと思っています。
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