(この記事は、第101号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、お子様のピアノ発表会に向けたステージマナーの練習風景です。
お子様のピアノ発表会まで2ヶ月を切りました。いよいよ本番に向けた練習にも、力が入ってきています。
今回初めて参加する生徒さんには、ピアノの演奏だけでなく、ステージマナーやその他の注意事項についても説明をしています。毎年、きっちりと説明や練習を念入りに行っているつもりなのですが、いざ本番を迎えますと色々と思わぬ事態が発生したり、後になって当日の模様を撮影したビデオを見て、「あら~」と気が付くこともありますので、油断はできません。
まずは、本番でピアノを弾く前後の動きの説明です。
出番の○番前になったら、舞台の袖に集まることや、アナウンスでこれから演奏する人の名前や曲目が紹介されたら、舞台に登場して、お辞儀のマークがある所まで歩いていきお辞儀をすることなど、傍から見ますと当たり前と思われることですが、しっかりと説明して、実際にその通りに動いて体でも動きに慣れてもらっています。
レッスン室があまり広くないので、舞台に登場して10歩も歩かないうちにお辞儀のマークに着いてしまうのですが、そこで実際にお辞儀をしてもらいますと、お子様は意外な行動に出ることがあります。横でアナウンスをしている私の方を向いてお辞儀をしてしまうお子様が何人もいるのです。
ある時は、お辞儀のマークの所まで歩いてきたお子様に止まってもらいクイズを出したことがあります。
「では、ここでクイズね。今本番の舞台の上にいて、これからお客様にお辞儀をします。お客様はどこにいて、どっちを向いているの?」
これまでに見事に正解を答えられたお子様は少なく、ほとんどの場合、違う答えになります。まさか、本番でお客様のいない方を向いてお辞儀をすることはないと思いますが、本番の状況がイメージ出来ていないようなのです。
「今は場所が狭いから、私はここにいるけれど、本番はこういう風に椅子が並んでいて、こういう風にお客様が見ているからね」と、本番と同じように椅子を並べて私が実際に座ってみせます。
小さなお子様の場合、説明と共になるべく実際の状況を再現して見せてあげることが大切なようです。
お辞儀をした後、次は椅子の高さを合わせる練習です。ピアノの教室によっては、また指導されている先生によっては、先生が椅子の高さを合わせてあげる事もあるようですが、私は自分で合わせられるように教えています。
お子様は、割と興味を持って覚えてくれるのですが、ある時ふと発表会本番のDVDを見た時に、登場してくる生徒さん方が次々とお辞儀をした後、真っ先に椅子の調整をしに目がけて行くことが、少しおかしな行動に見えてしまった事がありました。
そのため、椅子の調整の仕方を説明しつつ、「あなたの前の子が、物凄く背が高いという事はないから、椅子の高さを変えることはそんなに無いと思うので、さりげなく椅子の高さをチェックしてね。いつもと同じだったらすぐに座っていいからね」とお話をしています。
椅子に座ったら、後は自分の一番良いタイミングで演奏を始めれば良いのですが、ここにも意外な落とし穴があります。最初の音の用意に物凄く時間がかかったり、髪の毛や顔、スカートの裾をずっと触っていたり、本人は乱れたところが気になるので直そうとしているのかもしれませんが、その行動が長くなると、見ている側は本人以上に気になる行動となってしまいます。
また多いケースとして、ピアノに近づいて座り過ぎ、座ったまま椅子を後ろに押し下げる行動です。これは初めてピアノ発表会に参加する生徒さんだけでなく、何回も参加しているお子様にも、時々見られる行動です。
通常レッスンをしている会場では、床に絨毯(じゅうたん)が敷かれていることもあり、あまり問題となりませんが、本番のホールは木の床となるので、「ギ~~」と大きな音が出てしまうのです。
舞台の上ではスマートな立ち振る舞いをしたいので、そのような時には一回立って、椅子を持って後ろに下げるようにも説明しています。
演奏終了後は、お辞儀を忘れないことも重要ですが、「今回のホールは小さいから、すぐに客席に戻ることもできるけど、お辞儀をしたら舞台の袖にちゃんと戻ってきてね。ポーンと舞台から飛び降りて、お母様の所へ戻ったりしないでね」と話しますと、レッスンを見学されていたお母様が、「うわ~、うちの子ホントにやりそう。気をつけなくっちゃね」とお子様に言い聞かせていました。
ピアノの発表会では、演奏だけでなく舞台上での立ち振る舞い、いわゆるステージマナーもとても大切だと思いますので、本番までに身に付けて、自然に行えるように練習を続けて行こうと思います。
(この記事は、第100号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、お子様の生徒さんのお話です。
この生徒さんは、小学校入学と同時にピアノのレッスンに通い始め、もう数年が経っています。
3歳違いの弟さんがいて、いつも「○君がね、○君がね・・・」と弟さんのお話をしている仲の良い姉弟です。
教室に通い始めの頃は、誰でも多少なりとも緊張するものですが、しばらくするとレッスンを担当する講師との関係にも慣れて、段々と緊張がほぐれてきます。
そうしますと、レッスンの合間に、ピアノ以外の色々なお話をしてくれるようになります。この生徒さんも、初めは大人しい感じでしたが、慣れてきますとむしろお話好きな一面も覗かせていました。
学校生活もとても楽しく充実しているようで、毎回レッスンのたびに「今日ね、学校でね・・・」と話が始まります。
色々なことをお話してくれるのは、生徒さんとの関係も深まりますし、時にはちょっとしたアドヴァイスなども出来るので、とても良い事だと思います。
しかし、レッスンする曲目が多かったり、今の時期のように発表会やコンクールなどの本番前ともなりますと、1分でも長くレッスンをして、上手になってほしいと思うこともあり、内心葛藤している状況なのです。
そのため、少しかわいそうとは思いつつ、「じゃあ、先にこれを弾いて終わらせましょうよ。そのあとに、今のお話の続きを聞かせてね」と言ってレッスンを進めています。
昨年までは、お母様がレッスンに付き添って、お子様のレッスンの様子を熱心に見学されていました。お母様も少しピアノがお弾きになれるようで、自宅での練習も積極的にお手伝いされている様でした。
そのためか、ピアノのレッスンを始めた当初から、コンスタントに教材が進んでいて、着々と力を付けてきています。
ピアノが上手な生徒さんといいますと、元々とても器用だったり、要領がよく、すぐに新しいことを把握できるタイプの方ばかりと思われがちですが、実はそのような方はかなり少ないのではないかと思います。
この生徒さんも、どちらかと言うとコツコツと練習を続けることで、着実に力を付けてきているタイプです。同じようなタイプの生徒さんは、他にも結構います。
レッスンをするたびに、コツコツ努力をすることの大切さを改めて感じさせられます。
先日も、発表会の曲をレッスンしていましたが、同じフレーズが連続して何回も出てきて、しかも途中で音の高さが急に変わるという、ややこしい部分の練習をしました。
「このフレーズが5回出てきたら、音の高さが変わるから気を付けてね」とお話をして、一緒に練習をしたのですが、なかなか掴めない様子でした。
譜読みの段階では、同じフレーズが連続して出てくるのは、とても簡単で楽なのですが、曲に慣れてきますと、それがかえって紛らわしく暗譜しにくい状況になります。
正しく弾けたのかどうかという判断も、始めの頃はなかなかできなかったのですが、同じ個所を何回も何回も練習することで、正しく弾けるかは別としても、今弾いたものが正しいのかどうかという判断は出来るようになってきました。
ピアノだけでなく、練習は出来ない所を出来るようにするものなので、どうしても同じ箇所をしつこく反復する作業が必要不可欠になってきます。
大人でも辛い事ですから、お子様にとっても大変な事です。ムッとした不機嫌な顔をしたり、「はあ~」「もう~」と自分にイライラしながら練習することもあると思います。
しかし、この生徒さんはそのような表情や態度を一切せず、黙々と練習を行い、レッスン時間内にある程度掴めてきました。
なかなか大変な練習をした後なのに、レッスン後に満面の笑顔で「どんどん上手になるから、練習って楽しい」と無邪気に話していたのが、とても印象に残りました。
努力は辛いもの、それを克服することで上達すると思っていましたが、この生徒さんのように、努力自体が楽しい事と思うことができたら・・・と、身に染みて考えさせられた瞬間でもありました。
(この記事は、第98号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、お子様のピアノ発表会の曲選びについてお話いたします。
夏に開催されるお子様のピアノ発表会まで、あと3か月になりました。
まだ年齢が小さい生徒さんや、ピアノ教室に通われて日が浅い生徒さんは、新しいことをどんどん吸収している最中ですので、発表会の準備には入っていませんが、その他の生徒さんとは、発表会で弾く曲についてお話をしています。
中高生は、いつも発表会で弾きたい曲がある方が殆どですので、候補の曲の中から1曲に絞るアドバイスをするくらいなのですが、小学生や保育園・幼稚園生となりますと、なかなかご自身で弾きたい曲を具体的に挙げることは難しく、私の方でいくつか曲をご紹介しながら一緒に決めていく事が多くなります。
発表会は、ピアノ教室にとって一番大きく大切なイベントですが、当日よりもそれまでの過程の方が大変なのです。それは、出演される生徒さんも、同じだと思いますが。
曲を仕上げるための日々のレッスンだけではなく、その前段階である曲目選びには、実はかなりのパワーを使います。
所有している楽譜を眺めたり、実際に弾いてみて新しい曲を探すだけではなく、毎年同じような曲にならないように、1年中常に新しい曲を探す必要があります。例えば、他のクラスの発表会のプログラムを見たり、コンクールやオーディションのプログラムを見てチェックしたり、時間があるときには楽譜売り場に足を運びます。
こうして集めた曲を、それぞれの生徒さんが、これまでに発表会で弾いた曲目と照らし合わせて、同じ作曲家や似たような雰囲気の曲にならないようにご紹介していきます。
これは中高生にも共通することなのですが、好きな作曲家や好きな雰囲気の曲だけを重視して曲を選んでしまいますと、曲目がかなり偏ってしまう事があります。
「ショパンが好きなので、ショパンを弾きたい」というのも、もちろん1つの選び方ではありますが、お子様の場合は特に、色々な作曲家の色々なスタイルの曲を弾く事で、幅広く音楽を知り、色々なテクニックを学ぶことにも繋がります。
これまで弾いたことがなかった作曲家の作品を弾くことで、良い意味で好みが変化していく事もありますし、想像以上に生徒さんの持ち味が表現できる事もあるのです。
そのようなことを考えながら、一人一人の生徒さんに発表会の曲をご紹介しています。
発表会の曲選びの時期には、毎日何冊も教材を抱えて教室へ行き、弾きながら曲をご紹介しています。
最近は即決せずに、お家へ持ち帰り、ご家族と相談するケースも増えてきています。
そのため CD などをお貸しすることもありますが、YouTube などインターネットを利用してご家族で聴くという方も増えてきました。インターネットでは、音質が多少劣る場合もありますが、同じ曲を様々な方が弾いていますので、参考になることも多いようです。
また、これまでお母様に相談して曲を決めるという事はありましたが、最近はお母様だけではなく、お父様も積極的にお子様の曲選びに関わっているようです。
先日も、レッスンに同席していたお母様が、「ここで決めても、後で主人がなんと言うかわからないので、1回持ち帰って相談してから決めたい」とお話されていました。
お子様にとっても、発表会は大きなイベントですので、ご家族全員が曲目選びから関われるのは、レッスンを担当する身としても嬉しい事です。
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