(この記事は、第254号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、バレエとオーケストラのコンサートのお話です。

先日、「青島広志のバレエ音楽ってステキ!」というコンサートに行ってきました。

青島さんは、東京芸大・同大学院を主席卒業され、「題名のない音楽会」「世界一受けたい授業」「たけしの誰でもピカソ」など、数々のテレビ番組にも出演されている作曲家&演奏家で、マルチアーティストとも紹介されています。個性的な衣装と、少々早口で人柄の良さを感じさせる話し方は、印象が強く、お名前や顔をご存知の方も多いと思います。

今回のコンサートは、バレエ付きなのですが、バレエを披露されるのはKバレエカンパニーのダンサーです。

Kバレエカンパニーは、イギリスのロイヤルバレエ団のプリンシパルを務めていた熊川哲也さんによって創設されたバレエ団で、古典バレエを重点にしつつ、新作も毎年発表されています。

熊川さんは、若手バレエダンサーの登竜門といわれているローザンヌ国際バレエコンクールで、日本人初の金メダルを受賞し、東洋人として初めてイギリスのロイヤルバレエ団に入団、史上最年少でソリストを務め、その後プリンシパルに昇格しました。5年ほどプリンシパルを務められたのちに退団し、自らのバレエ団(Kバレエカンパニー)を創設し活躍され、紫綬褒章も受賞されています。多くのメディアにも出演されていますので、熊川さんをご存知の方も多いと思います。

青島さんの司会と指揮、10年以上もKバレエカンパニーと共演されているシアターオーケストラトーキョーのオーケストラ演奏、熊川さん監修による、Kバレエカンパニーのダンサーによるバレエと、なかなか豪華なメンバーのコンサートと思い行ってみました。

この日は大変な猛暑日でしたが、会場に着きますと、1300人ほど入れる大きな会場は空席が見当たらないほどの満員状態で、大変な熱気に包まれていました。夏休み中で、しかもお子様の観覧も可能なコンサートでしたので、1、2歳くらいの赤ちゃんなどお子様もたくさんいらしていました。

演奏された作品は、「眠れる森の美女」「白鳥の湖」「くるみ割り人形」という3大バレエと呼ばれるものの他、ヨハンシュトラウス2世のオペレッタ「こうもり」序曲、「ロミオとジュリエット」「タイスの瞑想曲」などが披露され、オーケストラの音楽のみで楽しんだり、バレエとの共演で楽しめるようになっていました。

その他、観客がその場で立ち上がり、オーケストラの演奏に合わせてステップを踏んだり、指揮者体験コーナーでは観客の中から選ばれたお子様3人が舞台に上がり、オーケストラの指揮を振る企画もありました。

司会は、青島さんとダンサーの宮尾俊太郎さんにより進められましたが、和気あいあいの二人のかけあいも楽しく、作曲者についての説明では、青島さん自ら描いたという人物画も披露されました。

演奏が始まる際には、青島さんは指揮者台へ移動し、宮尾さんは舞台袖に下がるのですが、宮尾さんの背筋の良さと美しい足さばきに「さすがバレエダンサーだなあ」と感心してしまいました。

ピアノのコンサートや発表会などを見学したり、私自身も舞台に立つことがありますが、人それぞれいろいろな癖があるものです。下を向いてとぼとぼ歩いていたり、左右の手の振りがアンバランスだったり、だいぶ速足になってしまうこともあります。バレエダンサーの体の動きは、ちょっとした場面でも美しく、引き付けられるもので、同じようにはできなくても、せめて背筋を伸ばして歩くことだけは意識してみようと再認識しました。

バレエ音楽は、知ってはいても、どうしてもピアノ曲と比べますと聴く機会が少なくなってしまい、かなり久しぶりに聴くことができました。演奏のみの時は、バレエが付いていなくて少し残念と思っていたのですが、演奏を聴きますと、音のみでバレエの世界が表現されていて十分楽しめ、やはりステキな音楽だなあと改めて感じました。

その後、バレエとの共演が始まりますと、イメージしていたバレエの世界が目に見える形で表現され、ダンサーの表現力、技術の高さ、音楽との一体感、照明や衣装も合わさって、見事に総合芸術になっていました。

バレエのことは、詳しくはないのですが、まさに指先から足先まで全てに意識が向けられていて、「すごい」という言葉しか思い浮かばず、惹きつけられてしまいました。

プログラムを見ますと、バレエの振り付けは、熊川さんの再振り付けと書かれていましたので、オリジナルの演技になっていたようですね。

オーケストラも、Kバレエカンパニーの他、ウィーン国立バレエ団やパリオペラ座バレエ団との共演もされているだけあって、バレエとぴったり合っていて、ずれてしまいそうな危うさが全くなく、さすが合わせ慣れていると思いました。

通常のコンサートは、2時間くらいかかるもので、オーケストラのみ、ピアノのみというパターンが多く、お子様だけでなく大人にとっても、なかなかハードルが高く感じるかもしれませんが、今回のコンサートは、バレエとの共演や楽しいトークもあり、また、ちょっとした体験コーナーもあったりで、飽きることなく、お子様も最後まで楽しめたのではと思います。

バレエも、有名な作品をいろいろ楽しめましたので、今度は1つの作品を全編見てみたいと思いました。

自宅や電車の中で気軽に音楽を楽しめるご時世ですが、やはり生の音楽に触れる事でしか得られない感動もあり、それが、ご自身の演奏にもきっと繋がると思います。

9月になり芸術の秋になりますので、コンサートに足を運んでみてはいかがでしょうか。

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(この記事は、第253号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、百田尚樹さんのクラシック名曲エッセイ集のお話です。

百田さんは、「永遠の0」や「カエルの楽園」「海賊とよばれた男」などの本がいずれも大ヒットしている人気作家で、今では執筆活動以外にも多方面でご活躍されています。

インターネットのニュース番組などにコメンテーターとして出演されている百田さんをご存知の方も多いかもしれませんが、私は初めて見たとき、やたらと早口で関西弁を話す毒舌キャラの面白いおじさんという感じで、以前「カエルの楽園」を読んだ時には、そのような雰囲気は感じられなかったので、まるで別人のようで、興味深い作家だなあと思っていました。

そんな百田さんは、40年以上のクラシック音楽ファンでもあります。ご自宅には、執筆の仕事場を兼ねた防音のリスニングルームがあり、一日中クラシック音楽を聴いていることもあるそうです。

クラシック音楽の本も書かれていて、「至高の音楽 クラシック 永遠の名曲」「この名曲が凄すぎる」が出版されていますが、その完結編として今年6月に出版された「クラシック 天才たちの到達点」を読んでみました。

「クラシック 天才たちの到達点」は2部構成になっていて、第1部では、作曲家の青年期・壮年期の作品14曲、第2部では作曲家の晩年の作品11曲が紹介されています。

モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第5番 皇帝」、ドヴォルジャークの「新世界より」、スメタナの「モルダウ」など、いずれも名曲ぞろいです。第1部、第2部共に取り上げられている作曲家もいるので、作曲家の足跡をたどることもできます。

1曲ずつ曲目解説はもちろん、作曲家の生きた時代背景や人柄、考え方、作曲スタイル、曲にまつわる百田さんのエピソードなど様々な話が紹介されています。やさしくわかりやすい語り口調と、1曲につき見開き4ページという長さが、とても手頃で読みやすいと思います。

そして、何と言ってもこの本の特徴は、百田ワールドでのクラシック音楽の解説です。最初の見開き1ページこそ、良い意味でごく普通に読んでいましたが、ページをめくると百田さんの世界が表れてきます。

最初は、ショパンの作品を取り上げているのですが、「実は、私はショパンの熱烈なファンではない」「好きな曲もあるけれど、すべてがお気に入りというわけではない」「ワルツ、マズルカ、ノクターン、バラード等は、好きな曲の方が少ないくらいだ」と、バッサリと切り捨てたような言葉が飛び出し、まあそこまで言わなくても…という感じです。

その他にも、ドヴォルジャークの作品を、「親しみやすいポピュラーな名曲と思われているが、少しもそんな風に見ていない。むしろ謎に満ちた不気味な曲」、「マーラーの交響曲はあまり惹かれない。『復活』以外は、どれも退屈な曲」など、取り上げている作品に自由な意見が書かれていて、始めはかなり戸惑いましたが、読み進めていきますと、称賛ばかりではないところに、むしろ好感が持てました。

細かいところでは、「イタリア・オペラは苦手で、やたらと大仰に愛を叫ぶのが、いまひとつぴんとこない」とか、「この部分を聴くといつもぞっとする」とか、「この部分になぜ1回だけシンバルを、しかも弱い音で入れるのか、私にはわからない」とか、「恐怖映画のオープニングのようで、怪物か何かがやってくるような旋律」、「喜怒哀楽の様々な感情がでたらめにぶち込まれているように感じる。全体的には、野蛮な雰囲気に支配されているように聴こえる」など、毒舌キャラが止まりませんが、そのくらい音楽は自由に捉えていいのだと改めて感じました。

もちろん批判的な内容だけでなく、シュトラウスの音楽について「軽い音楽として、一段下げた見方をされるが、そうは思わない。とても一筋縄ではいかず、芸術的・哲学的な内容を持っている」、フォーレの「レクイエム」について、「死をテーマにした音楽というよりも、天国の楽園か何かを描いているような音楽に聞こえる」というように、率直に独自の見解を書かれているところも多くありました。

クラシックの作曲家の解説本やエッセイ集などは、本当にたくさん出版されていますが、解説本はその分野の研究者が書きますし、エッセイ集も演奏家などクラシックの専門家が書いているものが多くなります。

解説本は、かなり詳しい話が書かれているのが魅力ですが、真面目で難しい内容のものも多く、学校の教科書のような感じで、気軽に読めるような感じではありません。エッセイ集は、気軽さはありますが、演奏家は基本的に全ての作曲家に敬意を持っていますから、なんとなく表面的にきれいに整ってしまっていて、本当はどうなんだろうか?と思ってしまうことも少なくありません。

その点、この本は、実にズバズバと思った事をストレートに書いていますので、なるほどと面白さを感じるところもあれば、なかなか個性が強いなあと思うところもあり、読む人によって賛否両論ありそうですが、いずれにしてもこれまでになかった新しいクラシック音楽の本と言えるのではないでしょうか。

取り上げられた音楽については、百田さんのおすすめCDがたくさん紹介されていますし、お試しサンプルまで付いていますので、「何を聴いたらよいのだろう?」「どの演奏家のものを聴いたらよいのだろう?」と迷う方には、一つの参考になると思います。

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(この記事は、第252号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、ピアノ教室のオーディションのお話です。

ピアノ教室では、夏はお子様の発表会があると共に、オーディションが行われる季節です。

このオーディションは、教室に通っている大学生までを対象としたもので、発表会だけでなく、お客様の前で演奏を披露できる場を作ってあげる事が目的となっています。ずば抜けた才能の持ち主を発掘する一般的なコンクールやオーディションとは、少し異なるものです。

本番という舞台を数多く経験することは、ピアノや音楽を上達させるために、とても重要で貴重なのですが、意外にそのような機会は少ないものです。

発表会は、年に1回行っている教室が多いと思いますが、その他に本番となるとグレード試験くらいになり、それも年に1回のペースで受験することになりますから、本番を多く体験することは実は容易ではありません。

一般的なコンクールやオーディションは、昔に比べて随分増えており、難易度の幅も広がってきてはいるのですが、それでもすごく上手な方々が受験するイメージが根強く、実際にそのようなコンクールが多いので、心理的なハードルは高く、気軽に参加して本番を体験しようという感じにはなりません。

ピアノ教室のオーディションは、気軽に参加できて、ちょっと頑張れば手が届く難易度という事も大切に考えています。各学年ごとに細かく部門を分けていて、自由曲1曲のみで参加できるようになっています。通常のコンクールやオーディションは、課題曲、自由曲というように複数の曲を用意しなければならないので、その点でも参加しやすいわけで、年々参加する生徒さんが増えています。

そのオーディションで、先日審査員をしてきました。

今回は、小学校4年生を担当しました。このくらいの年代になりますと、お子様がよく弾く曲を選ぶ人もいれば、ショパンなど大人が弾くような曲を選ぶ人もいて、曲の難易度にかなりの差が出てきます。今回も、やはりショパンやモーツァルトのソナタを選んでいる方もいれば、ギロックなどのお子様向けの作品を選んでいる方もいました。

少し易しい曲を手堅く弾きこなすのか、曲の仕上がりが少々粗くても難易度の高い曲を弾くのか?という選択肢です。

曲選びは重要ですが、当然ながら、それ以上に曲の完成度や表現力、様々なテクニックがどのくらい身についているかなどが最重要ポイントとなり、それを踏まえて審査をしました。

3グループに分かれて審査を始めますと、調子よく弾いていたのに、突然暗譜が抜けてしまったり、思わぬミスをしてしまった方々も少なからずいて、惜しいと思ったり、しっかりとまとめ上げて、小学生ながら自分の演奏を披露しているような方もいて、将来が楽しみと思いながら聴きました。

全員の演奏を聴いた後に投票するのですが、今回は揉めることなく、すんなりと一発合格の方と、2次審査に回す方が決まりました。

その後、同じ小学校4年生の他の2グループと、合同審査を行いました。(敗者復活戦のようなものです)

他の2グループは、合否のボーダーライン上の参加者が多かったようで、合同審査は少し時間がかかりましたが、再度投票をしてみますと、すんなりと合格者を決めることができました。

同じピアノ教室のオーディションなので、全ての参加者が生徒さんであることを考えますと、演奏に合否をつけることはとても複雑な心境で、もう何回も行っていますが慣れることはありません。

それでも、すべての演奏に対してコメントを書いて渡すことができますので、素晴らしかったところを褒め称えることができますし、今後の課題になりそうなところは、いろいろなアドバイスを伝えることができるので、本番を体験して今後の上達に繋がるよい機会になると思っています。

指導者という立場から見ますと、いろいろな生徒さんの演奏を聴くことができますので、曲選びから曲の解釈や表現力など、なるほどと思うところもあり、今後のレッスンの参考になることも多々ありました。

残念な結果になってしまった方は、本当にがっかりして落ち込んでしまうこともあると思いますが、ピアノが嫌いにならないように、しっかりとフォローしたいと思いますし、次に向けて頑張ろうと、たくましく進んでもらいたいと思います。

合格した方は、大きなホールでの合格者お披露目コンサートもありますし、公開レッスンも控えています。さらに演奏に磨きをかけて、進化した演奏ができるように頑張ってもらいたいと思います。

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