(この記事は、第272号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、ラ・フォル・ジュルネのお話です。

今年は、新天皇陛下のご即位があり、ゴールデンウィークがいつもより長く10連休になりました。行楽を楽しまれた方も、多かったのではないでしょうか。

毎年ゴールデンウィーク中に開催されるラ・フォル・ジュルネに、今年も足を運びました。日本では、2005年から開催されている音楽祭で、今年で15回目を迎えます。以前は、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭」というネーミングでしたが、昨年から「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」となっています。

0歳から聴くことができ、コンサートとしては短い1公演45分という長さと、国内外の一流の演奏家のコンサートを1,500円から聴けるという低価格が人気を呼んでいます。

東京国際フォーラムとその周辺の会場では、朝9時半から夜の11時まで、3日間で、320以上の公演が行われました。

毎年異なったテーマが掲げられ、それにちなんだプログラムが用意されますが、今年のテーマは、「ボヤージュ 旅から生まれた音楽(ものがたり)」で、音楽家たちの旅の軌跡が多彩なプログラムで紹介されました。

思えば、モーツァルトが人生の3分の1を旅に費やし、ヨーロッパ各地を回って演奏旅行していたことは有名な話ですし、他の多くの音楽家も、実際に旅行をして、いろいろな国や地域の文化からインスピレーションを得て作曲活動をしています。

今回のプログラムを見ましても、ドヴォルザークがアメリカ滞在中に書いた「弦楽四重奏曲」や、チャイコフスキーがローマ滞在中に書いた「ピアノ三重奏曲 偉大な音楽家の思い出に」、タンスマンが船による世界一周旅行の思い出から作曲した「ミニチュア版 世界一周」など、改めて音楽家と旅の切っても切れない深い関係に気づかされます。

4月にホームページが公開されてから、たくさんのプログラムに圧倒され、どのコンサートを聴こうか大変悩みつつ、それでもワクワクしながら当日を迎えました。

お昼過ぎに東京国際フォーラムの入り口に着きますと、多くの人々で賑わっていましたが、会場の建物に入りますと、混んではいますが激込みではなく、天井などの装飾がこれまでよりも簡素化されていて、ラ・フォル・ジュルネが、ここ数年で少しづつ変化してきている印象を受けました。

ちょうど通りかかった地下のステージでは、オーケストラとヴァイオリンによるコンサートが開催されていて、迫力ある演奏に、つい足を止めて聴き入ってしまいました。他にも立ち見している人が多く、周りのテーブルで食事中の方たちも、私と同じように聴き入ってしまっているという感じでした。

今回、有料のプログラムでは、それほど聴く機会がない、サン=サーンスの作品を聴きました。

サン=サーンスはフランスの作曲家で、モーツァルトに匹敵するほどの神童だったと言われています。「動物の謝肉祭」や「アレグロ・アパッショナート」などが有名ですね。フォーレなどを指導し、作曲だけでなく、ピアニストやオルガニストとしても活躍しました。数々の勲章も授与され、葬儀は国葬で行われています。

サン=サーンスは、生涯に27ヵ国も旅し、ヨーロッパ各地だけでなく、北アフリカやアメリカも訪れています。晩年も定住することなく、旅をする生活を送っていたそうです。旅のエキスパートといったところでしょうか。

今回のプログラムでは、特に好んで何回も訪れたと言われている北アフリカのアルジェリアにちなんだ「アルジェリア組曲」と、エジプト滞在中に書かれ、「エジプト風」と呼ばれるピアノ協奏曲第5番を聴いてみました。

アルジェリア組曲は、アルジェの街の風景や、踊りの音楽、オアシスのヤシの木の下で耳にする愛の歌など4曲から構成されています。

ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」は、エジプトのルクソール滞在中に作曲され、サン=サーンスがピアニストとして活躍した50周年を記念して初演された作品です。第2楽章が異国風なことから、「エジプト風」と呼ばれています。

指揮者は、ロストポーヴィチのアシスタントも務めていたスラドコフスキー、オーケストラは、タタンスタン国立交響楽団、ピアニストは、10歳でオーケストラと共演してピアノの巨匠アラウから絶賛され、エリザベート王妃国際コンクールで優勝した経歴を持つアブデル・ラーマン・エル=バシャでした。

5,000人以上収容できる大きなホールで、大編成のオーケストラを相手に、指揮者はとても楽しそうに、体全体を大きく使ってダイナミックな指揮をしていたのが印象的でした。

ピアニストは、とても紳士的な雰囲気で、大変柔らかい音色で美しい音楽を演奏していました。「エジプト風」というだけあって、とてもエキゾチックな音楽で、旅行気分を味わえたような感覚にさえなりました。ちなみに、終楽章は、「6つの練習曲 第6番 第5協奏曲によるトッカータ」として、ピアノソロでも弾けるようになっています。

演奏後は拍手が鳴りやまず、何回もカーテンコールがあり、大盛況でした。

今回のプログラムは、オーケストラの演奏と、オーケストラとピアノの共演でしたが、ラ・フォル・ジュルネの公演は、もちろんそれだけではなく、ピアノソロや2台ピアノ、2台8手(ピアノ2台ピアニスト4人)、チェンバロ、ヴァイオリン、チェロ、ハープ、打楽器、室内楽、太鼓などの和楽器、ブラスバンドなど実に多彩な音楽を聴けるようになっています。

通常、コンサートは平日の夜に開かれることが多いわけですが、休日の昼間に気軽に聴けるコンサートがたくさん用意されているのは、とてもいいですね。

お気に入りの演奏家の演奏を楽しむのも良し、コンサート初体験にも良し、一日どっぷりとコンサートに浸るも良し、お出かけがてらにちょっと立ち寄るも良しと、様々な楽しみ方ができると思います。

一度、体験されてみても良いかもしれません。

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