(この記事は、第205号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、ショパンに触れた旅行のお話です。

8月上旬にヨーロッパを旅行しました。ヨーロッパのどこかというと、ポーランドです。

ヨーロッパ旅行と言うと、フランスやイタリアなどが真っ先にイメージされ、行ってみたい国としても人気がありますが、ポーランドにピンと来た方は、なかなかのクラシック通と言えるかもしれません。

ポーランドは、アウシュヴィッツ強制収容施設やヴィエリチカ岩塩鉱などが有名で、近年では、ボレスワヴィエツ陶器も人気です。


(アウシュヴィッツ強制収容施設)


(ヴィエリチカ岩塩鉱)

ですが、忘れてはならないのが、ピアノと切っても切れない超有名人ショパンが生まれた国という事ですね。

羽田空港からドイツのミュンヘン経由で、合計13時間半をかけて、ワルシャワ・フレデリックショパン空港に到着しました。


(ワルシャワ・フレデリックショパン空港)

ショパンの名前が付いた空港ですが、至る所にショパンというわけではありませんでした。もっとも、夜着いて、すぐホテルへ向かったので、気が付かなかったのかもしれませんが。

ワルシャワでは、ショパンの心臓が埋め込まれている聖十字架教会や、ショパン博物館、ショパンがピアノを弾いたという三位一体プロテスタント教会などを巡りました。


(聖十字架教会)


(ショパン博物館)


(三位一体プロテスタント教会)

ショパンは、20歳でワルシャワを離れ、ウィーンへ行き、その後はパリに移動して音楽活動を行っていました。生前、ポーランドに帰ることをずっと望んでいましたが、叶うことなく生涯を終えました。そして、死後、ショパンが残した遺言どおり、心臓だけがポーランドへ戻り、聖十字架教会の柱に埋め込まれています。


(聖十字架教会 ショパンの心臓が埋め込まれている柱)

5年に1度行われるショパンコンクールは、ここワルシャワで、ショパンの命日である10月17日の前後3週間にわたって開催されますが、命日だけは、コンクールを中断して、出場者も審査員もこの聖十字架教会のミサに参加されるようです。


(聖十字架教会の内部)

ショパンの博物館は、ショパンの足跡を辿る展示物や楽譜、ショパンの音楽を楽しめるコーナー、ショパンのサロンを再現したブース等があり、とても充実していました。お弟子さん方のリストや、直筆譜、手紙、ショパンの手の石膏(パリのジョルジュ・サンドのサロンにもありました)や、デスマスクなどもありました。


(ショパン博物・ショパンの足跡を辿る展示)


(ショパン博物・ショパンの足跡を辿る展示)


(ショパン博物・ショパンの音楽を楽しめるコーナー)


(ショパン博物・ショパンのサロンの再現)


(ショパン博物・ショパンの手紙)


(ショパン博物・ショパンの手の石膏)


(ショパン博物・ショパンのデスマスク)

ショパンの音楽は、激しい部分もありますが、優雅で繊細、きめ細やか、そして儚さを感じる音楽ですね。

直筆譜や手紙を見ても、細くて丁寧で、きれいに書かれていて、まるで女性が書いたものかと思ってしまうほどの美しさでした。走り書きや、殴り書きの様な物は、全くありませんでした。


(ショパン博物・ショパンの直筆譜)

太く、がっちりと、たくましく書かれていたバッハの直筆譜などとは、全く異なるもので、「字は人を表す」という感じがしました。

その後は、ワルシャワの郊外にあるショパンの生家にも足を運んでみました。ワルシャワからバスで1時間くらいのところにあります。


(ショパンの生家・入り口)

ショパンの生家は、白くてかわいらしい、こじんまりとした平屋建ての建物で、ショパンの両親の肖像画などが飾られていました。


(ショパンの生家)


(ショパンの生家・内部)


(ショパンの生家・内部・コンサート用のピアノ)


(ショパンの生家・肖像画)

また、この生家の周辺は、公園として整備されています。色々な木々や植物が植えられていて、川も流れていました。まさに、ヨーロッパの絵画に出てくるような風景で、のんびりと散策している方も多く見かけました。


(ショパンの生家・公園)


(ショパンの生家・公園)


(ショパンの生家・公園)


(ショパンの生家・公園)

偶然にも訪れた日が、日曜日だったのですが、コンサートが行われる日でした。

生家のすぐ外に席が設けられていましたが、コンサートが行われるだいぶ前から満席となり、周りのベンチや花壇の淵などにも、次々と人々が座り、立ち見客も続出していました。


(ショパンの生家・コンサート)


(ショパンの生家・コンサート)

コンサートの開始を待っている方々を見ますと、日本のクラシックのコンサートとはだいぶ違う事に気が付きます。

日本でのクラシックのコンサートは、ある程度年齢を重ねた方が多く、後はもう少し若い女性客というイメージですが、ショパンの生家のコンサートは、そのような方々もいらっしゃいましたが、カップルやお子様連れの家族も思いの外多くおられました。

休日の野外コンサートで、しかも無料という事もあるのかもしれません。

驚く事に、10代の男性グループも来ていました。たまたま通りかかったというわけではなく、あらかじめコンサートを知っていて、それを聴く目的で来ている様子でした。日本では、まず見かけない客層なので、大変驚くと同時に、なんだか嬉しく感じました。しかも、彼らは演奏が始まると、とても熱心にじっと耳を傾けていました。

コンサートは、ショパンの生家の中に置かれている年代物のピアノを使用したもので、マイクで音を集めて、外のスピーカーに流すスタイルでした。直接目の前で演奏される訳ではないので、実は、それほど期待してはいなかったのですが、いざコンサートが始まってみますと、むしろこのスタイルの方が良いと思うくらいに、とても素晴らしいものでした。

目の前に広がる木々や草花、青空に、所々流れてくる雲を見ながら、木々が風になびく時の音や、時たま聴こえてくる鳥の鳴き声などの自然の音と、ショパンの音楽が見事に調和され、音楽も自然の一部であるという感覚を、初めて味わったような感じがしました。


(ショパンの生家・自然の中での音楽)


(ショパンの生家・自然の中での音楽)


(ショパンの生家・自然の中での音楽)

しかも、演奏も大変素晴らしく感動したのですが、演奏しているのは、なんと昨年行われたショパンコンクールに出場して、ファイナリストになったピアニストでした。聴き惚れると同時に、これほど上手でも、ショパンコンクールで賞が頂けないという厳しさを改めて感じました。

日本でも、このような広々とした自然に囲まれたところで、無料でクラシックコンサートが行われたらいいなあと思いました。

クラシック音楽のコンサートが、もっと身近に感じ、足を運ぶきっかけにもなるでしょうし、素晴らしい演奏をされるピアニストの方々にも、演奏する場が提供でき、双方に良い事のように思いました。

このポーランドの旅行記については、また「ヨーロッパ音楽紀行」のコーナーで詳しく書きたいと思います。

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