(この記事は、第59号のメールマガジンに掲載されたものです)
たのしい音楽小話、今回は、先日まで熱戦が繰り広げられていたショパンコンクールのお話です。
ショパンコンクールは約3週間かけて、ショパンの生まれ故郷であるポーランドのワルシャワで行われました。今年はショパン生誕200年ということもあり、これまで以上に関心を持って見られた方も多かったのではないでしょうか。
このメールマガジンでも、これまでに何度か取り上げてきました。ブログでも過去の記事を読むことができます。
ショパンコンクールは5年に一度開催され、このコンクールで優勝しますと、一気に世界中に名が知られるようになります。入賞者でも、その後世界を舞台にピアニストとして活躍されている方が、とても多い事でも有名です。
「今活躍しているピアニストの殆どがショパンコンクール出身者」と、ご自身もショパンコンクール入賞をきっかけに世界で活躍をされている中村紘子さんは話します。
日本人も毎回多数参加し、ここ何回かは連続して入賞者が出ています。しかし、いまだかつて優勝者は出ていません。内田光子さんの第2位が過去最高位です。そのような意味でも、今回の日本人の成績を関心を持って見ていました。
しかし、2次予選で日本人全員が敗退という予想外の展開には驚きました。
3次予選を勝ち抜いた10人が、今月18日から行われたファイナル(本選)に進みました。
今回は、過半数の5人をロシア勢が占め、フランス、ポーランド、オーストリア、ブルガリアのピアニストという顔ぶれになりました。こう見ますと、クラシック音楽の歴史があり、チャイコフスキーコンクールという大変有名な国際コンクールを開いたり、モスクワ音楽院を始めとする世界最高峰の音楽アカデミーがあるロシアのピアニストの層の厚さを感じます。
ショパンコンクールを始めとするピアノコンクールは、ファイナルでオーケストラとの協奏曲が課題曲になっています。通常は、ベートーヴェンの協奏曲、ラフマニノフの協奏曲など色々な作曲家の協奏曲が並ぶのですが、ショパンコンクールでは、予選からショパンの作品のみが課題曲になっています。
これは以前にも書きましたが、ショパンは「ピアノの詩人」と呼ばれる通り、作られた作品のほとんどがピアノソロ曲で、協奏曲は2曲しか作曲していません。そのうちピアノ協奏曲第1番がとても有名で人気のある曲なので、今回のファイナルでも10人中8人がこの第1番を選んでいました。
いよいよコンクールの最後という時に、自分の前の人も後ろの人も同じ曲を弾くという事になりますので、そのプレッシャーは相当なものがあったのではないかと思います。
今回のショパンコンクールの優勝者は、ロシアのユリアナ・アウディエヴァさんでした。久しぶりの女性ピアニストの優勝です。
ファイナルの演奏では、特に1楽章で音の硬さやミスタッチが目立ち、徐々に取り戻してきたものの、よほど緊張していたのか、全体を通して硬さが取りきれない印象でした。しかし、それまでの予選では素晴らしい演奏が多々あり、男性顔負けのパワフルさを持ちながら、とても繊細な表現もあり、ユリアナさんの強い個性が光りました。
第2位のルーカス・ジェヌーシャスさん(ロシア・リトアニア)と、インゴルフ・ヴンダーさん(オーストリア)、第3位のダニール・トルフォノフさん(ロシア)など、聴き比べますと、それぞれに持ち味がありとても楽しめます。
ファイナルまで進みますと、誰が上手かというよりも、どのピアニストの演奏が好きかという好みの問題になるのかもしれません。
ちなみに、今回参加した全てのピアニストの演奏を、公式ホームページで聴くことができます(日本語はなく英語になります)。音だけではなく動画付きですので、演奏者の表情や、会場の雰囲気なども楽しむことができます。是非聴いてみてください。
Fryderyk Chopin – Information Centre (外部サイト)
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