音楽界の神童たち


2017年11月27日


(この記事は、第234号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、音楽界の神童のお話です。

先日、テレビの「題名のない音楽会」という番組で、「神童たちの音楽会2017」と題した内容が放送されました。音楽の世界で幼くして才能を開花させた「神童」たちを紹介するものです。今回は、2人の小さな演奏家と神童からステップアップした1人の若い演奏家を取り上げていました。

最初は、ヴァイオリンの大久保瑠名さん、11歳の小学校6年生です。

大久保瑠名さんは、小学校4年生の時に、全日本学生音楽コンクール小学校の部で第3位に入賞しました。全日本学生音楽コンクールは、日本のジュニア・クラシック音楽コンクールでは最高峰で、小学校5・6年生も参加できる部門で第3位に入ったとはすごいですね。

この全日本学生音楽コンクールは、大変歴史のあるコンクールで、今年で71回目になります。

これまでに、ピアノ部門では、左手のピアニストとして有名な舘野泉さん、日本人で唯一ショパンコンクールとチャイコフスキーコンクールで入賞した小山実稚恵さん、先日逝去された世界的ピアニストの中村紘子さん、ショパンのピアノソロ曲全166曲コンサートを行い、ギネス世界記録に認定された横山幸雄さん、「のだめカンタービレ」の吹き替え演奏で一躍注目された清塚信也さん、前回のショパンコンクールで日本人唯一のファイナリストである小林愛実さんなど、そうそうたるメンバーが、このコンクールで優勝しています。

ヴァイオリン部門では、長年 NHK交響楽団でコンサートマスターを務めていた徳永二男さん、東京芸術大学学長の沢和彦さん、千住3兄弟の千住真理子さん、チャイコフスキーコンクールで優勝した諏訪内晶子さん、パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールに同コンクール史上最年少で、しかも日本人として初めて優勝した庄司紗矢香さんなどが優勝されていて、ピアノもヴァイオリンも大変豪華で、現在第一線で活躍されている演奏家ばかりです。

番組の話に戻りますと、大久保瑠名さんは、演奏曲に合わせて、カルメンを思い出させるような赤と黒の華やかなドレス姿で登場しました。とても小柄で華奢に見えますが、演奏は、とても音楽的で堂々としたものでした。まだ楽器も大人のサイズではなく、少し小さいものでしたが、音がしっかりと鳴っていて、オーケストラに負けないくらいでした。

ヴァイオリニストの徳永二男さんも、「表現力が素晴らしく、音楽に自主性があり、世界に羽ばたけるヴァイオリニスト」と絶賛されていました。

元テニス選手である松岡修造さんの日めくりカレンダーの名言がお気に入りだそうで、特に、「緊張感、万歳」のページがお気に入りという話も紹介されていました。その言葉もあってなのか、演奏時も緊張している様子があまりなく、楽しく演奏が出来たと感想を話していました。

松岡さんの日めくりカレンダーは、松岡さんらしいユニークな熱いメッセージが、発売当時とても話題になりましたね。「緊張感、万歳」という言葉は、「緊張しているという事は、それだけ本気になっている証拠であり、本気で努力してきたからこそ、失敗したくないと思っている。緊張して力が発揮できないのはもったいない。緊張を心から喜び、力に変えよう」という意味なのだそうです。

長年、世界トップクラスのテニス大会で多くの緊張する場面を経験してきたからこそ生まれた言葉なのかもしれません。これからピアノの発表会やコンクール、また学校のテストや受験など、いろいろな本番を迎える方々には、心強いエールですね。

そして、番組で紹介されたもう一人の小さな演奏家は、チェロの北村陽さん13歳です。

北村陽さんは、指揮者の佐渡裕さんが率いるスーパーキッズ・オーケストラに8歳の最年少で入団し、今年6月に開催された「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」で優勝しました。17歳まで参加できる最高峰のジュニアコンクールで、13歳での優勝は、すごいとしか言えません。

3歳でチェロに魅せられ、ご両親と段ボールでチェロを作って遊んでいた逸話も写真付きで紹介されていました。

人懐っこい雰囲気ですが、演奏が始まりましてもニコニコと笑顔で演奏していて、本当に心から楽しんでいる様子が大変印象的でした。司会者も話していましたが、段ボールで作ったチェロを演奏(?!)していた時の楽しそうな顔つきと、全く変わらないのです。

演奏も大人顔負けの大きなスケールで、とても有名な難曲をひょうひょうと弾きこなしているので、こういう人が世界を舞台に活躍していくのかなあと思いました。

お二人の名前と演奏をしっかりと覚えつつ、これからのさらなる成長と活躍を心から応援したいと思います。

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(この記事は、第233号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、大人の生徒さんの発表会の様子です。

先日、大人の生徒さんの発表会が行われました。台風が日本列島に近づいていて、その日の深夜には東京に最接近するという予報でしたので、発表会の開催自体を心配していましたが、予定通りに行われました。

前日、初めて発表会に参加される70代の生徒さんから、「先生とお話がしたい」と事務所に電話があったと連絡をもらいました。

この生徒さんは、数日前の最後のレッスンの時に、発表会が近づいてきた実感が湧いてきたのか、妙に緊張した面持ちでレッスンに来られ、弾いてみても、これまでスムーズに弾けていたところで何か所もミスをしていました。

これまでのレッスンでは、着実に曲をまとめてきていましたので、本来の力が発揮できれば何の問題もなく、あとはお気持ちを強く持っていただければと思い、「十分弾けていますから、大丈夫ですよ」と励ましました。

その事を思い出し、今でも緊張が続いているのかと心配して電話をいたしました。

お話を聞いてみますと、数日前から突如持病が再発して、腰が痛いとの事でした。悪化してくると、腰が曲がってしまい、まっすぐにならないらしいのです。

腰痛の時に使用するベルトを付けているようですが、一向に良くならず、台風が近づいているので、益々酷くなるかもと心配されていました。

「一生懸命練習をして、幾分か良くなってきたというのに・・・」と、ご本人も非常に残念がっていましたが、今回は不参加という事になってしまいました。

さて、発表会当日ですが、台風が近づいているという事で安全の為、前半が終わるとすぐに前半演奏した方の集合写真を撮り、前半の方が解散してから、後半を行うという進行になりました。

生徒さん方は、予定通り会場に到着していましたが、それほど緊張した感じでもなく、落ち着いた様子でした。

開演前は、生徒さん方にお声がけをしたり、舞台近くで記念写真を撮ったり、1年ぶりに再会した他のピアノの先生と近況報告をして過ごしました。

発表会は、スムーズに進行しました。

前日の連絡で持病のため不参加を決めた生徒さんが、本来は1番の演奏順でしたが、2番目の生徒さんから演奏が始まることになります。

この2番目の生徒さんには、「明日の発表会で、1番目の方が欠席になりましたので、最初に演奏することになりますので、ご承知おきください」とメールで連絡をしていたのですが、ご覧にならなかったそうで、出番前に知って、少し動揺されていました。

実際の演奏では、思わぬところでミスが出てしまい、最後の方は良かったものの、少し惜しい演奏になってしまいました。

他の難しい名曲にチャレンジした生徒さんは、レッスンで毎回録音をされていて、ご自宅でもかなり練習をされていたようで、発表会1か月半前くらいから、急にめきめきと上達をされていました。本番でもかなり健闘されていて安心しました。

今回、初めて大人の発表会に参加された大学生の生徒さんは、この日のためにインターネットでドレスを購入したのですが、サイズが合わず、ご実家から以前着ていたドレスを送ってもらったものの、そちらもサイズが合わず、急いで他のお店でドレスを購入されたとの事でした。

普段着る洋服でも、サイズをチェックしているのに、いざ着てみると合わないという事があります。

ドレスの場合、生地の伸縮性や、どのくらい裾が広がるか、肩や脇の開き具合など、実際に着てみますと、インターネットの写真のイメージとは異なる事が意外と多いものです。

この生徒さんは、ドレスのハプニングも影響せず、かなり普段通りに弾けていましたが、後のレッスンで聞いてみますと、お辞儀をして椅子に座った途端に、急に「ぶわ~っと」緊張してビックリしたと話していました。

また、靴のヒールが思ったよりも高く、気になって弾きにくかったとも話していました。

ドレスや出番のハプニングに見舞われた生徒さんがいらっしゃいましたが、なんとか発表会は無事に終えることが出来ました。

今回、不参加になってしまった生徒さんは、本当に残念でしたが、来年はハプニングもなく、みなさん全員が揃って満足感をもって発表会が行えることを願っています。

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(この記事は、第232号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、ピアニスト清塚信也さんのお話です。

最近、テレビで清塚さんのドキュメンタリー番組が放送されました。

清塚さんの名前をご存知ない方もおられると思いますが、そのような方でも、清塚さんの演奏を聴いたことがある方は結構多いのではないでしょうか。

というのも、一大ブームとなり、クラシック音楽界が注目されるきっかけとなったドラマ「のだめカンタービレ」で、主人公の「のだめ」が憧れる天才指揮者 千秋先輩のピアノ演奏の吹き替えを担当したのが、清塚さんなのです。

その他にも、映画「神童」の吹き替え演奏や「エヴァンゲリヲン」のサウンドトラック演奏、ゲームの演奏提供や作曲などもされていて、幅広いジャンルで演奏をされています。

また、今月から始まったドラマ「コウノトリ」の音楽監督もされていて、重厚なクラシック音楽もさることながら、軽快なポップスまで弾きこなす、エンターテイメント性のあるピアニストです。

当の御本人は「マルチピアニスト」と思っていらっしゃるそうですが・・・

清塚さんは、1996年に全日本学生音楽コンクール中学生の部で優勝して注目を浴び、その後も、ショパン国際ピアノコンクール・イン・アジアで優勝、イタリア・ピアノコンコルソ金賞という輝かしい実績を残しているピアニストで、桐朋学園大学付属高校を首席で卒業し、モスクワ音楽院に留学した経験もあります。

5歳の時に、お母様の徹底した英才教育を受けて、言われるがままにレッスンに通っていたそうです。お母様自身が音楽の道に進めなかったので、子供に夢を託したのですね。

負けることを許さず、ピアノ以外の事をやる事も許さないお母様の厳しい教育方針で、学校から帰るとお母様と一緒にレッスンに通い、帰宅後も練習ずくめで、友人と遊ぶこともなかったのだそうです。

中学生の時から、世界的なピアニストだった 故・中村紘子さんのレッスンを受けていて、演奏だけでなく礼儀作法なども叩き込まれました。

レッスンの時に、清塚さんがショパン作曲の舟歌を弾くと、演奏が終わっても中村さんが腕を組んだまま暫く黙り込み、その後、「大したもんよ。あなたは、もうこれひとつ(ショパン作曲の舟歌)を持って、世界中で演奏できるように頑張りなさい」と言ってくれて、舞い上がった思い出を話していました。

中村さんの指導を受けた門下生同士のお食事会で、この話をされていたのですが、その場に同席されていたみなさんは、歓声を上げて大いに驚かれていました。世界的なピアニストに、このような事を言われたら、誰でも飛び上がるくらい嬉しいものですね。

また、中村さんから「上手い、下手みたいなところで収まるな」とよく言われ、それが本当に勉強になったとも話していました。「人を感動させることだけが、ピアニストの正義」と話していた中村紘子さんのピアニストとしての哲学を感じていたのですね。

番組では、清塚さんがレッスンで使用していた楽譜が映され、そこには中村さん直々の書き込みがされていました。

ベートーヴェンのピアノソナタ「熱情」の第1楽章の冒頭部分には、「両手の音の深さや奥行きを意識するように」、「もっと低音(左手)に関心を込めて」、「リズムをもっと厳格に」などと書かれていました。第2楽章には、「全体に重々しく」、「風格ある大きな骨格をイメージして」と書き込みがあり、ある個所には丸印と共に「リズムが甘い」という厳しい注意書きもありました。

この曲を練習している方にとっては、とても貴重な演奏のヒントになりそうですね。

中村さんとのレッスンでのエピソードも、お話されていました。

ある曲の箇所について、清塚さんはどうしてもゆっくり静かに弾きたかったので、中村さんに相談をしたら「それだけ心が入って弾きたいというアイデンティティがあるんだったら、もう全部無視しちゃいなさい。弾きたいものを弾きなさい。それがピアニストよ」と言ってくれたので、自信を持って弾く事が出来ていると話していました。

中村さんのピアニストとしての信念が伺えると同時に、それを受け継いでいるピアニストがいることも、なんだか少し嬉しいような気持ちになりました。

現在放送されている、産婦人科医を主人公としたテレビドラマ「コウノトリ」のテーマ曲を依頼されたときの話もありました。

清塚さんは、作曲のヒントを見つけるために、実際に新生児病棟を見学に行き、その見学のお礼に演奏をプレゼントされていました。病気を抱えた赤ちゃんとそのお母さん、病院スタッフが清塚さんの演奏を聴いていましたが、赤ちゃんを抱いたまま、涙を流されていたお母さんの姿が印象的でした。

清塚さんは、ファンの間では「貴公子」と呼ばれ、順風満帆にピアニストとして活躍されているように見えますが、実は5年前に全くピアノが弾けなくなったことがありました。スポーツ選手に多く発症するイップスと呼ばれる原因不明の運動障害です。リハビリをして、驚異的な回復をされていますが、後遺症が今も続いていて、常に手が震えてしまうそうです。

ピアニストにとって、手は命と同じくらい大切なものですから、発症した時は絶望的に感じたでしょうし、リハビリも相当大変だったと思います。そして、今でも後遺症と闘いながら活躍をされているわけですから、凄いと思わずにはいられません。

「ピアニストになれなかったら、生きていかなくていい」とまでお母様に言われ、寂しかった清塚さんですが、その厳しさが糧になったのか、今ではピアノを中心に人々と触れ合う事が出来て、それがなによりも幸せだと笑顔で話していました。

清塚さんの今後のマルチな活躍が、ますます楽しみに感じると同時に、まずはドラマのテーマ曲をしっかりと聴いてみたいと思いました。

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