(この記事は、2021年10月25日に配信しました第333号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、前回に引き続き、ショパン国際ピアノコンクールについてのお話です。

6年ぶりに開催されたショパンコンクールが、先日終わりました。反田恭平さんが第2位、小林愛実さんが第4位、日本人ピアニストが複数人入賞したことも久しぶりという事で話題になりました。

反田さんの第2位に至っては、内田光子さん以来の最高位ということで、「51年ぶりの快挙」としてテレビのニュースでも多く取り上げられました。1次予選の時から素晴らしい演奏をされていて、ひょっとしたら日本人初の優勝も夢ではないという見方さえあったくらいです。

反田さんと言えば、なかなかコンサートのチケットが取れない程の人気ピアニストで、「情熱大陸」というテレビ番組で取り上げられたことも大きな話題となりました。それを機に、知った方も多いかもしれません。

相当凄い実力を持ったピアニストで、奨学金を授与され桐朋学園女子高等学校音楽科(音楽科は男女共学)に入学し、在学中に日本国内のピアノコンクールの最高峰である日本音楽コンクールに史上最年少で優勝、特待生として桐朋学園に入学し、モスクワ音楽院も首席入学、他にもいろいろなコンクールでことごとく優勝されています。

今回、第4位に入賞された小林愛実さんは、前回のショパンコンクールでは唯一ファイナルに進んだ日本人ピアニストですが、その時は入賞を逃していました。6年経って、見事にリベンジを果たされたという事になります。

小林さんは、3歳でピアノを始め、7歳でオーケストラと共演、9歳で国際デビューを果たし、ニューヨークのカーネギーホールなどでも演奏されたという天才少女ピアニストです。ご存知の方も多いと思います。モーツァルトなどクラシック音楽家と同じような経歴で驚きですね。

反田さんとは、桐朋学園付属の音楽教室でご一緒、その後、高校の音楽科もご一緒の幼馴染なのだそうです。そんなお二人が、揃ってショパンコンクールに入賞されたのですから、喜びも格別でしょう。

今回のショパンコンクールは、第1次予選から YouTube でライブ配信されていて、ファイナル(本選)の結果発表までもがリアルタイムで見ることができました。

ファイナルでは、最後の演奏者が終わると、そのまま審査会議となりました。ポーランドでは、真夜中の時間帯、日本時間では早朝です。私も、パソコンの画面の前で、今か今かと結果発表を待ちました。予定時刻を回っても発表されず、YouTube のコメントには、「仕事の出社前には、結果発表してほしい」という、切実な日本のファンからの書き込みもありました。

結果が発表されたのは、予定時刻から数時間後のことでした。

今回の優勝者は、ブルース(シャオユー)リウさんで、ダン・タイ・ソンさんのお弟子さんになります。ちなみに、第6位となった17歳のジェイ・ジェイ・ジュン・リ・ブイさんも、ダン・タイ・ソンさんの門下生です。前回も、ダン・タイ・ソンさんの門下生が複数名入賞しましたが、今回は、入賞だけでなく、優勝者までも出したという凄い結果になりました。

結果発表までにかなりの時間を要したことについて、様々な理由があると思いますが、審査の手順や方法が影響しているのではないかと思います。

ファイナルでは、まず演奏を聴いて採点しますが、これまでの25点満点で付ける予選と異なり、10点満点で全てのステージの内容を考慮して採点するそうです。そして、平均点順に並べられて受賞のプランが提示され、審査員の3分の2以上の賛成で決定されます。しかし否決されますと、上位から1人ずつ、このピアニストを○位にして良いか投票し、過半数の賛成を得たら決定となります。しかし、否決された場合は、その次の順位のピアニストを繰り上げて○位にして良いか投票し、これも否決されると、そもそも○位のピアニストを出すのかどうかを投票で決めるのだそうです。大変細かい作業をしているのですね。

今回は、第2位が2人、第4位が2人という事で入賞者が多く、審査の過程も増えたため、結果発表が遅くなったのではないかと思います。

今回のショパンコンクールでは、日本人ピアニストの快挙や、ダン・タイ・ソンさんの門下生の活躍と並んで、もう一つ大きな注目点があります。それは、優勝者が、ファツィオーリ社のピアノを使用していたことです。

ショパンコンクールでは、5台の公式ピアノから1台を選んで演奏します。15分間で選定しなければならないので、全部のピアノを弾いてみると、1台あたり3分しか弾けません。選定時間としては、かなり短いですね。やはり、スタインウェイ社のピアノ(モデルの異なるピアノ2台)を選んだ方が多く、ヤマハ、ファツィオーリ、カワイという順になっていました。

以前、チャイコフスキーコンクールで、上原彩子さんが日本人初の優勝となったとき、使用していたピアノがヤマハで、そのモデルは、その後大変有名になりました。ピアノメーカーにとって、自社のピアノを弾いて優勝してもらう事は、大変大きな宣伝効果になります。

1978年にイタリアで創業したファツィオーリ社は、他のメーカーと比べますと、まだまだ歴史が浅い会社ですが、以前から公式ピアノに採用されていました。そして今回、ファツィオーリ社のピアノを使用したピアニストが優勝したのです。

ファツィオーリ社のピアノは、ピアノの命である響板に、ヴァイオリンで有名なストラディバリにも使われている素材が使用されています。他のメーカーが単純化する部分もハンドメイドで作られていて、1つの作業に関わる職人は1人だけという徹底したこだわりです。そのため、ピアノ1台を製作するのに、800時間もかかり、年間100台以下の生産数となっています。

ピアノという楽器に興味をお持ちの方々の間では、有名なピアノですが、まだまだ一般の知名度は低いと言えます。今回のショパンコンクールを機に、一気に名前が浸透するのではないかと思っています。私たちが気軽に弾けるようになる日も、そう遠くはないかもしれませんね。

ショパンコンクールは終わってしまいましたが、早くも来月には日本で優勝者リサイタルが開かれますし、コロナが落ち着いてきた事もあるのか、歴代のショパンコンクール優勝者のピアノリサイタルも、いろいろと開催されるようです。まだまだ、ショパンコンクールの熱気は冷めないようですね。

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