(この記事は、2021年4月26日に配信しました第321号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、ニュータイプの音楽家のお話です。

先日、「題名のない音楽会」というテレビ番組で、「ニュータイプの音楽家を知る休日」というテーマの放送がありました。「ニュータイプの音楽家」というフレーズ自体聞いたことがありませんし、「新しいタイプの音楽家」って何だろうと気になり見てみました。

最近注目されている二人の若手音楽家が、ゲストとして参加していました。ヴァイオリニストの廣津留すみれさんと、ピアニストの角野隼斗さんです。

以前からお二人のことは少し知っていましたので、ゲストの紹介を見て、「なるほど、だからニュータイプの音楽家なのか」とわかりました。

番組では、冒頭で「きらきら星変奏曲~世界の夜空」という有名なきらきら星変奏曲にお二人の即興的なセッションを交えた演奏が披露されました。

「世界の夜空」とありますが、日本風や南米風にアレンジされたきらきら星は、それぞれのお国柄がとてもよく音楽に反映されていました。日本風ですと「わび・さび」や幻想的な雰囲気を感じ、南米風ではどこまでも陽気でノリの良い雰囲気が音楽に投影されていて、まるで音楽の世界旅行をしているような気分が味わえました。

演奏後、司会者も出演者の古坂大魔王さんも、よく知られているきらきら星とのあまりに大きな違いにビックリされていましたが、角野さんが、「楽譜を作っていないので、すみれさんと一緒に考えあってセッションしました」とお話され、廣津留さんも、「めちゃくちゃ楽しかったです。初めての題名のない音楽会で、きらきら星を弾くことになるとは…」とにこやかにお話されていました。

この後、ヴァイオリニストの廣津留すみれさんの紹介がありました。

高校時代に、国際コンクールでグランプリを獲得し、副賞としてアメリカのコンサートツアーに参加。その時に見学したハーバード大学に感銘を受け、現役合格して首席で卒業。その後、世界的チェリストのヨーヨー・マと共演したことがきっかけで、ヴァイオリニストとしての道を志すようになり、ジュリアード音楽院に入学、こちらも主席卒業。現在は、バッハ・コレギウム・ジャパンで演奏しながら、英語教育団体を共同設立。著書に、「ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の超・独学術」「ハーバード・ジュリアードを主席卒業した私が見てきた新・世界の常識」「私がハーバードで学んだ世界最高の考える力」などがあり、テレビコメンテーターなど多方面で活躍されています。

この輝かしい経歴に、古坂大魔王さんが「サラッと言ってますけど、ハーバードとジュリアード、両方とも主席卒業なんて取れるんですか? 今のうち、嘘はやめておこう」と冗談で話しますと、出演者一同が大笑いしていました。

「目の前にあることを、淡々とやっていただけなんですけれど…」と廣津留さんが答えるや否や、「でた、天才の意見。これですよ」と、すかさず古坂大魔王さんが突っ込みを入れて、また笑いを誘っていました。

このやり取りで、大笑いしていたゲストでバッハ・コレギウム・ジャパン首席指揮者の鈴木優人さんが、廣津留さんのニュータイプぶりを解説されました。

廣津留さんは、コンサート付き講演会を開催していて、新たなファンを作っています。ハーバードなどでの経験を生かした講演会とコンサートという2部構成で、講演会が50~60分、10分の休憩中にドレスに着替えて、その後がコンサートです。クラシックの世界で、講演と演奏を同時に、定期的に行っている人はなかなかいないとのこと。

司会者が、お客様は、講演会とコンサートのどちらが主な目的なのか聞いていましたが、お客様によってそれぞれとのことです。廣津留さんとしては、音楽を聴きたい人にもセミナーを、セミナーを聞きたい人にも、生演奏を聴いていただきたいと思っているそうです。

「両方とも敷居が高いけれど、混ざった瞬間にちょっと参加しやすくなりますよね」という古坂大魔王さんのコメントに、一同うんうんと頷いていました。

「コンサートの新しい形を作り出そうと思っても、なかなかできないけど、このようなアイディアを聞いた時には本当に驚いたし、とても合点がいきましたね」と、指揮者の鈴木さんが解説していました。

ピアニストの角野さんも、「ハーバードとジュリアードだなんて、そんな方がいらっしゃるなんて、聞いたことがないですよ」とコメントされていました。

鈴木さんも、「音楽業界のみならず、国を引っ張っていってほしい」とエールを送っていました。

「演奏活動を広げて、音楽を聴く層を増やしたり、音楽というツールを使って世界の問題にも関心を広めたい」と、廣津留さんが今後の夢を話していましたが、間髪入れずに「総理大臣でも全然構わないと思いますよ~」と古坂大魔王さんがコメントされ、出演者全員がまた大爆笑していました。

番組ではこの後、廣津留さんと鈴木さんの息の合った演奏があり、次にピアニストの角野さんの紹介に移りました。

角野さんは、中学校の男子御三家の一つである開成中学・高校を経て東大に入学。東京大学大学院にて、自動採譜や自動編曲について研究し、ピティナ・ピアノコンペティションの特級グランプリをきっかけにピアニストの道を志します。現在では、ソロ活動のほか、オーケストラや気鋭アーティストとの共演で話題になっています。

「芸大に行ってみたいと思ってはいたんですが、高校生当時はあまり向いていないかなと思って、結局東大に来ちゃったんですけれど…」と、ぼそぼそと話していると、「コンビニじゃないんだから、そんなサラッと入っちゃったって言って…」というコメントに一同また笑いが出ていました。

鈴木さんの解説では、角野さんはYouTubeの登録者数が70万人以上。クラシック音楽ではコンクールで賞を取ることがキャリアへの近道ですが、それを取りつつ、YouTubeを使ってダイレクトにより広い層にコンタクトしているところが、ニュータイプの音楽家とのことです。

古坂大魔王さんが、「これは相当すごいですよ。ピアノでこんな人はいないでしょ。見たことがない」と、実感のこもったコメントをされていました。

「かていん」という名でYouTube活動をしていて、「きらきら星変奏曲」の動画では、再生回数500万回以上を記録。曲が進むにつれて演奏レベルが上がるというゲーム感覚を取り入れているところが人気なのだそうです。

確かに、曲のアレンジやテクニックの難易度が上がると、画面に表示されているレベルの数字も上がっていくので、凄さが分かりやすく本当にゲーム感覚で面白く見ることができます。演奏の凄さだけではない創意工夫を感じました。

「ぱっと見ても面白いし、詳しく見てもいろいろな発見があって面白いと思ってもらえるように作っている」と、角野さんはコメントされていました。

「卓越したアレンジで、即興的な演奏だけど、ちゃんと構築されているところが絶妙なバランスで凄いし、音楽家としても羨ましいと思う」と、鈴木さんもコメントされていました。

YouTubeでは、左手でピアノ演奏をしながら、右手で鍵盤ハーモニカを同時に演奏したり、右手がトイピアノという一人セッションのような演奏動画もアップされています。

角野さんはユニークさと音楽の質の両立を追求していて、これらを実際のコンサートでもオーケストラの共演などで行っているのだそうです。これは、新しい演奏家ですね。

「グランドピアノが家に置けないから、トイピアノでしょ。それを、グランドピアノの横に置くなんて意味ないでしょ」と古坂大魔王さんが、突っ込みを入れますと、「そうですね~」と廣津留さんもコメントして、司会者も大爆笑していました。

角野さんは、「自分だからこそできること、他の人と違う事をやりたいと試行錯誤する中で、どんどん大きくなって今に繋がっている」「クラシックを聴かない方でも、音楽が好きな人は多いので、クラシックの魅力を伝える活動をしたい」と決意を話されていました。

お二人とも、高学歴演奏家という共通点はありますが、それだけではなく、それぞれ独自の強みを生かした演奏活動をされていて、とても良い刺激を受けました。また、音楽の幅広い可能性を改めて感じる番組でした。

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