(この記事は、第270号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、横山幸雄さんと千住真理子さんのコンサートのお話です。

いよいよ、春本番です。今年は、桜の開花宣言の後に真冬並みの寒さになったり、そうかと思えば初夏を思わせるような温かさになったりと、少し天候が不安定ですが、そのおかげもあってなのか、桜の開花期間が長くなり、お花見ができた方も多かったのではないでしょうか。

先日、ピアニスト横山幸雄さんとヴァイオリニスト千住真理子さんお二人のコンサートへ行ってきました。

それぞれ単独のコンサートには、行ったことがありますが、共演されるコンサートは初めてです。

今回のプログラムは、前半がソロ演奏、後半はデュオ演奏になっていました。

前半の千住真理子さんのヴァイオリン演奏では、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番の第1楽章「アルマンド」と第5楽章「シャコンヌ」、横山幸雄さんのピアノ演奏では、バッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」とショパンのバラード第1番が披露されました。

「シャコンヌ」は、バッハの作品の中でも大変有名な曲で、原曲はヴァイオリンのための音楽です。コンサートでは、千住さんによる原曲の演奏と、後の時代に活躍した作曲家でピアニストでもあったブゾーニが編曲したピアノアレンジを、横山さんの演奏で聴く流れになっていました。

千住さんが使用しているヴァイオリンは、以前にもお話しましたが、ストラディヴァリウスという名器です。世界最高峰のヴァイオリンと言われており、昔のものなので当然数も限られ、大変貴重な楽器です。

千住さんは、春の若葉を思わせるような黄緑色のドレス姿で、さっそうと舞台に現れ、笑顔でお辞儀をされた後、すぐに演奏が始まりました。

さらっと始まった演奏ですが、曲の冒頭部分から惹きつけられました。なによりも中音域から低音域の音色がとても深く、ヴァイオリンの音というよりも、ヴィオラやチェロが奏でているような感じがして、とても美しく魅力的でした。

続いて、横山さんのピアノ演奏で「シャコンヌ」を聴きました。実は、私も現在練習している曲なので、今回のコンサートで一番楽しみにしていたプログラムです。

練習していますと、苦労する部分や、なんだかしっくりこない部分が出てきますが、そのような時に、プロのピアニストの演奏を聴くと、なるほどと思うことも多いものです。

横山さんは、普段と変わらないような、ごくごく普通の様子で舞台に現れました。良い意味で、緊張していない感じでした。そして、千住さんと同じように、椅子に座るとすぐにシャコンヌの演奏を始めました。

シャコンヌは、同じメロディーが次々と変奏されていく音楽で、変奏によって曲の雰囲気がガラッと変わっていきます。それぞれの曲想を弾き分けていくのですが、ついつい目先の変化にだけ集中しまい、曲全体の一貫性を欠いた演奏になりがちです。

横山さんの演奏は、さすがにこのバランスがしっかりと保たれていて、曲の最後まで一本の背骨が通っているような演奏でした。15分はかかる長い曲なのですが、あっという間に終わってしまった感じがしました。

自分の演奏と比較して、見習いたいところが多々あり、演奏を楽しめたと同時に、とても勉強になりました。

後半は、千住さんと横山さんの共演で、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」、エルガーの「愛の挨拶」、メンデルスゾーンの「春の歌」、ベートーヴェンの「クロイツェル」の演奏がありました。

前半もそうでしたが、演奏の合間には、お二人のトークも入ります。これまでに、もう何回も共演されているというお話や、今後の録音の予定、コンサートの話など、お人柄やお二人の仲の良さを垣間見ることができました。

演奏を聴いても、お二人の息がぴったりと合っていて、調和された音楽が素敵だなあと感じました。

ベートーヴェンの「クロイツェル」以外の曲は、短い曲なので、コンサートではアンコールで演奏されることも多いものです。趣味でピアノやヴァイオリンを弾いている方でも、よく弾かれる曲なので、今後の参考になったのではないでしょうか。

クロイツェルは、ヴァイオリンソナタの中では大変有名な曲ですが、30分くらいかかる大曲で、とても難しい曲です。それでも、集中力が途切れることなく、また飽きさせることもなく、圧倒される演奏で素晴らしかったです。

演奏が終わっても、拍手が鳴りやまず、アンコールを数曲披露してくれました。

アンコール演奏の後、舞台上で、お二人が何か話をしていて、上の方を向いていましたので、何かなあと思い、私も振り返ってみますと、天井に近い3階席までびっしりとお客さんが座っていて、1000人以上入るホールが満席状態でした。

オーケストラとの共演がないピアノやヴァイオリンのコンサートは、通常小ホールなどで行われることが多いので、もしかしたらお二人共、この大きなホールと、びっしり入ったお客さんに、驚かれたのかもしれません。

大変楽しいコンサートでした。

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