(この記事は、第197号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016 のお話です。
ラ・フォル・ジュルネは、フランスで1995年から毎年開催されている音楽祭ですが、2005年から日本でもゴールデンウィーク期間に開催されるようになりました。
日本での開催も今年で12回目なので、だいぶ認知度が上がり、足を運ばれている方も多いかと思います。会場の東京国際フォーラムは、いつものように多くの方で賑わっていました。
最初の頃は、毎年1人の作曲家をテーマとして取り上げていましたが、その後は、地域や時代などがテーマとなり、現在は、もっと普遍的な大きなテーマへと進化しています。そして、今年のテーマは、「ナチュール(自然と音楽)」です。
ポスターも、緑あふれる森の中に蝶が舞い、花が咲き、中央に楽器が置かれ、上から光が差し込んでいるという、とても素敵な絵でした。
会場のグッズ売り場には、この絵を使用したTシャツや絵葉書などが販売されていました。
このグッズ売り場は、ラ・フォル・ジュルネのお楽しみの1つです。音楽好きにはたまらない様々な音楽グッズが揃えられています。
鉛筆やメモ帳、付箋、楽譜を入れるクリアファイル、クリップなどの文房具から、バックやTシャツ、音楽家のぬいぐるみ、オルゴールやミニチュア楽器の置物など、なかなか普段これだけまとめて音楽関連グッズを見る機会はないので、興味深く見て回りました。
クリアファイルも、ショパンなどの楽譜が前面にプリントされたデザインで、大人の方が使用しても素敵なのではないかと思います。
今回は、個人的に2つのものが目を引きました。
一つは、音符柄、楽譜柄、ポスターの絵の3種類のマスキングテープです。
少し長い曲を練習する際、ページをめくるたびに演奏が止まらないように、コピーして楽譜を繋げて使用する時に重宝しそうです。
セロハンテープでは、意外にすぐ取れてしまいますし、裏面を止めるときに、このような柄のテープを使用すると、遊び心もあり楽しく練習が出来そうです。
もう一つは、クリアファイルなのですが、なんと、音楽用語が両面にプリントされています。
強弱記号から、楽語がびっしり書かれているので、練習している時やレッスンの時に、ちょっと調べたり確認するのにとても便利と思いました。
グッズ売り場以外にも、いろいろなコーナーやブースがあり、コンサートの前後に見て回りました。
ローランドのブースでは、最新のデジタルグランドピアノを使用したミニコンサートが行われ、ショパンコンクールでディプロマ賞を受賞した岩崎洵奈さんのコンサートが行われていました。
また、松尾弦楽器のコーナーでは、10分の1 サイズからヴァイオリンが揃えられていて、試奏できるようになっていました。
身長100センチくらいのお子様が使用する、一番小さい 16分の1 サイズはありませんでしたが、10分の1 サイズのヴァイオリンは、とても小さく可愛らしく見えます。しかし、もちろん本物の楽器なので、きちんと音が出ます。
モーツァルトも、かなりの幼少期からヴァイオリンを弾いていましたので、このサイズも使用していたことでしょう。
テクニクス(Technics。パナソニック株式会社のオーディオ製品のブランド名)のブースでは、アナログレコードを鑑賞する事が出来ました。
SL-1200GAEという希望小売価格33万円もする、限定生産(国内300台)のアナログレコードプレイヤーを使用した試聴会で、とても大きなスピーカーから、まるで生のコンサートを鑑賞しているような、また昔のレコードのノイズを感じさせない良い音を聴くことができました。
コンサートについては、普遍的なテーマという事もあり、色々な演奏家が色々な曲を演奏するプログラムになっています。
事前にチケットを購入しましたが、どのプログラムを聴こうか、かなり悩みました。
ヴィヴァルディの「四季」を再作曲した音楽を、世界的なヴァイオリニストの庄司紗矢香さんが、指揮もしながらヴァイオリンで弾くプログラム(庄司さんが指揮もされるのは、初めてかもしれません)や、本場フランスのナントで大熱狂となったアフリカの太鼓集団ドラマーズ・オブ・ブルンジ、2015年のショパン国際ピアノコンクールで、日本人で唯一ファイナルに進出した小林愛実さんが弾く、モーツァルトのピアノ協奏曲、今回のテーマである「ナチュール(自然と音楽)」にピッタリな、ハイドンの「天地創造」などなど。
そして最終的に、カンマーアカデミーポツダムが演奏する、ヘンデル作曲の「水上の音楽」第1組曲、第2組曲にしました。
ヘンデルは、バッハと並びバロック期を代表する音楽家で、同じドイツ出身です。しかし、一生涯をドイツで活躍したバッハと異なり、ヘンデルは、イタリアでオペラを学び、人生の3分の2はイギリスで活躍しました。最終的に、イギリスに帰化しています。晩年は、完全に失明しましたが、それでも演奏活動を続け、74歳で生涯を終えました。
ヘンデルの作品と言うと、ハレルヤコーラスで有名な「オラトリオ」が真っ先に挙げられますが、「水上の音楽」もそれと並ぶ程有名です。
1717年のイギリス王室ジョージ1世の舟遊びの際に BGM として使用された音楽で、明るく華やかで豪華絢爛という言葉がピッタリな音楽です。
弦楽器だけではなく、チェンバロ、ホルン、オーボエ、ファゴット、昔のトランペットのような楽器が使用され、総勢25人ほどの編成で演奏されました。時代的な事を考えますと、なかなかの大編成と言えるかと思います。
第2曲の方で、トランペットのような楽器の演奏者が2人登場しましたが、トランペットよりも長く、パッと見た感じではトロンボーンかと思ってしまう楽器でした。しかし、楽器の管が伸ばせる訳ではなく、演奏のスタイルはトランペットそのものでした。
ちなみに音は、現在のトランペットの方が、音に迫力があり、より遠くまで一直線に飛ぶ感じですが、貴族の前で演奏する音楽であることを考えますと、今回の楽器の方が、より雰囲気が出ていると思います。
25人ほどの編成で演奏されましたが、指揮者はおらず、コンサートミストレス(コンサートマスターが女性の場合に使用される呼び方)が、やや大きなアクションで演奏しながらメンバーをリードし、いろいろな楽器奏者とアイコンタクトをしながら取りまとめていました。
第1曲は9つ、第2曲は6つの組曲から作られていますが、それぞれ短い音楽で雰囲気が異なるので、飽きる事が無く、とても楽しく聴く事が出来ました。
短いフレーズを、次々と異なる楽器で演奏するなど、わかりやすい音楽なので、バロック音楽をあまり聴いたことがない方にもオススメできると思います。
とても息の合った素晴らしい演奏で、演奏後は拍手が鳴りやまず、演奏者も少し戸惑っているような様子でした。
ゴールデンウィークは、帰省した方や旅行に行かれた方も多いと思いますが、来年は一日予定を空けて、足を運んでみてはいかがでしょうか。
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